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都市伝説・・・奇憚・・・blog

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ー鬼になる理由<美耶>ー <オオ○キ教授シリーズ>

2018.01.29 (Mon) Category : 創作作品

796:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/12/12(金)00:12:30ID:vNpQddCw0
鬼になる理由<美耶> 1/4

ハルさんから入ったお兄ちゃんヘの電話は、とても奇妙な内容だった。
ハルさんの会社の先輩に当たる人が、その日の明け方に家出をした、というもの。
少し前から言動がおかしかったこともあって、会社では『精神的な病理による一時的な失踪』と受け止められてしまったみたい。
でも、ハルさんは、もっと深刻に考えてる。
「オレ、急には会社を休めないから、その間だけでも笹川さん探しを頼めませんか?」
ハルさんの依頼に、お兄ちゃんは二つ返事で引き受けた。

で、今、私を迎えに来てる(汗)。

「なんで私も一緒なの?」
お兄ちゃんの車の助手席で、不満たらたらの私。
だって、馬鹿兄貴ときたら、
「鬼が出るらしいから、お前が必要」
とかって理不尽なこと言うんだもん。
鬼…ねえ…。
そんなもの、現実にはいないと思うんだけどな。



797:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/12/12(金)00:12:55ID:vNpQddCw0
鬼になる理由<美耶> 2/4

お兄ちゃんは、以前から、たびたび、その失踪した笹川さんのことを聞いていたよう。
「I村ってわかる?そこが元凶みたいだから、いま向かってる」
って県境の村名を上げる。
場所はなんとなくわかるし、すごい田舎なのもわかる。行ったことないけど。
「私たちが行って探すっていっても、笹川さんの顔はわかるの?」
と聞くと、
「パジャマで飛び出したから、それを目印にする」
だって…。
アバウトな兄貴だ(溜息)。

それにしても、変な話。
笹川さんは、夜中に突然、
「子どもがいない。鬼が連れて行った」
って騒いで飛び出したらしいけど、赤ちゃんはちゃんとその部屋で寝てた。

以前、ハルさんがうちに遊びに来たときに、ハルさんの後方に禍々しい角の生えた『黒い影』を見たことがある。
追い払えそうだったから玄関の外に締め出したけど、あの日、ハルさんは笹川さんとI村に仕事しに行ったんだよね。
笹川さんは、あの『影』に憑かれちゃったのかな?
追い払えずに今まで来ちゃったのかな?



798:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/12/12(金)00:13:45ID:vNpQddCw0
鬼になる理由<美耶> 3/4

「幽霊なら、角なんか生えないよね?」
道すがら、助手席でただ座っているのもなんなので、いろいろ考えてみた。
教授にくっついて旅をしていたとき、私はいろんな幻覚を見た。その中には、ただの妄想とは思えないほど現実と合致しているモノもあった。
でも、鬼は見ていない。鬼っていうか…人間から大きく外れた生き物を見たことは…ない…。
『黒い影』には、捻くれた大きな角が2本、はっきりと頭にあった。アレを見たとき、私は、人間の怨霊ではなくて動物の霊かと思ったんだ。牛みたいな不恰好なシルエットだったし。

「牛鬼(ぎゅうき)って妖怪の伝承は実際にあるぞ」
お兄ちゃんは、煙草を口の端に乗せながら答えた。
「鬼の頭に牛の体を持っていたり、頭と体の形が逆だったり、他の動物が混ざったりと、よくわからない動物だけどな。キメラであることは間違いないらしい」
「キメラ?」
聞き覚えのない言葉に、私は首を捻る。
「キメラってのは、2種類以上の生物が合体している生き物のことだ。元はギリシャ神話だったかな。ライオンとヤギと蛇の一部分ずつを持つキマイラってのが出てくるんだ」
なんとなく記憶にある。ライオンの頭に尻尾が蛇のイラスト。
「じゃあ、鬼っていうのは、実際にいるの?」
と聞くと、お兄ちゃんは苦笑する。
「んなの、知らねーよ。全国に似たような妖怪話が残っていても、写真でも残ってなけりゃ、それが事実とは言えないだろ」
うん。『伝承』だけじゃ証拠にはならない、よね。



799:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/12/12(金)00:14:30ID:vNpQddCw0
鬼になる理由<美耶> 4/4

「牛鬼ってのは、未知の海洋生物のことじゃないかな」
他に話題もなかったので、お兄ちゃんは続けた。
「『牛』なんて名前がついているわりには、伝承が残っているのは水辺ばかりなんだ。海や湖に生息していた大型魚類が、ごく稀に姿を現した現象がそれなんじゃないかと思う」
「その魚に角があったの?」
私が聞くと、お兄ちゃんは頭を掻きながら、
「あ、そっか。魚に角はおかしいよな」
と笑う。
でもすぐに異説を持ち出した。
「実在の『魚類』に角はなくても、後々、その魚を食べた人間が、寄生虫か何かから重病を発症すれば、それは『疫神』となるだろ。その後の口伝で『病気を撒き散らす鬼』と同一視されても無理はないと思わないか?」
…ありえる話には聞こえる。

「それじゃあ、『笹川さん』に幻覚を見せたのは、やっぱり、鬼じゃなくて動物霊か何かの仕業なのかなあ」
『鬼』なんてものがいないとなれば、ハルさんにくっついてきた『黒い影』は、そうとしか説明できない。
お兄ちゃんは、
「いーや」
と、ほんっっっとに楽しそうに、言った。
「俺は『妖怪』ってのはいると思うね。死んだ人間の思念や神仏なんかじゃなくて、『異形の生き物』が存在することを信じてる」
…一応、反論しといた。
「私が持衰(じさい=古代の神降ろしの能力を持った巫女)の生まれ変わりだったとしても、そんなモノを感知する力なんてないんだからね(汗)」

お兄ちゃんは、
「期待してるよ」
と無責任に言った。
…馬鹿。



引用元:【霊感持ちの】シリーズ物総合スレ6【友人・知人】
https://anchorage.5ch.net/test/read.cgi/occult/1223829762/796-799









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ー虐殺ー <オオ○キ教授シリーズ>

2018.01.23 (Tue) Category : 創作作品

742:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/12/07(日)00:42:11ID:H8wRhXRO0
虐殺 1/8

7月に入ったころ、仕事仲間から嫌な話を聞いた。
人里離れた山中の一軒家の周囲に、犬や猫の死骸が大量に散乱しているという。
一軒家に住む家族の仕業らしいが、仕事仲間も、
「興味はあるんだけど、腐敗臭がすごくて、家に近寄ることができないんだ。たぶん、家の中には、もっとたくさんの動物が死んでるぜ」
と、直接確かめることはしなかったらしい。
近くでの営業周りの仕事をゲットした俺は、この日、その家に足を運んでみることにした。

麓の村は、商店もある活気づいた田舎町だった。
大きな国道が走っていて、車通りが激しいせいか、閉鎖的な雰囲気はまったくない。
それでも、家々を回っているときに、時折、妙な臭いが鼻をつくことがあった。
「気持ちの悪い臭いですね」
と持ちかけると、村の人間は一様に顔をしかめて、
「あれは加藤のとこだわ。飼えなくなったペットを山に放す輩が後を絶たんもんだから、加藤が次々と始末してるんだわ」
と言った。



743:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/12/07(日)00:42:34ID:H8wRhXRO0
虐殺 2/8

なんだ…。俺は拍子抜けした。
動物虐待かと思ったら、野犬や野良猫の駆逐だったのか。
「加藤さんっていうのは、そういうのを請け負う業者か何かですか?」
と聞くと、村人は、
「そうじゃない。いつのまにか住み着いた余所者で、虐殺が好きな一家だわな」
と答えた。

…虐殺…。
俺の脳裏にI村での光景がよぎった。
子どもの首を容赦なく刎ねた鬼。
弱い者への慈悲などまったくない生き物の行為だった。

自分の子どもでさえ平気で凍死させる母親のいる世の中だ。
動物『ごとき』を喜んで殺す人間がいても、不思議はないのかもしれない。

俺は仕事を適当に切り上げて、山に向かった。
『鬼のような』人間を見てみたかった。



744:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/12/07(日)00:42:58ID:H8wRhXRO0
虐殺 3/8

仕事仲間の話では、かなり奥深く入り込まないと辿り着けないということだったが、俺はすんなりと『加藤』邸に着いた。
途中に散乱していたという犬猫の死骸にもお目にかかってない。
仕事仲間から情報を得たのは半月ほど前だったから、片づけたのかもしれない。

なんとなく大月に電話してみた。
仕事ではすでに別行動を取っていた大月は、ちょうど遅い昼食に入っている時間だったらしく、
「また妙なことに興味を持って」
と笑いながらしばらく付き合ってくれた。
が、最後には、
「気をつけて近づいてくださいよ」
と、改まった声で忠告をしてきた。

俺自身、なぜこんなことに関わろうとするのか、自分の行為が説明できない。
ただ、『見たい』。
鬼のような人間の姿を。
本物の鬼ではなく、ただのエゴの固まりである人間の姿を。



745:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/12/07(日)00:43:27ID:H8wRhXRO0
虐殺 4/8

人気のない加藤邸の玄関先を迂回し、右側に開けている庭を回った。
臭いがきつい。動物の臭いじゃない。腐乱した死体の臭いだ。
柵などはなかったが、手を入れてあるらしい敷地は、かなりの面積を持っていた。
3分ほどかけてゆっくりと裏口に回ると、そこには。
痩せ衰えた茶毛のレトリバーに餌を与える初老の男がいた。

男はかがんで、餌箱を犬の鼻先に押しつけている。
一見、普通の飼い主とペットの光景に見えた。
が、レトリバーは餌を拒んでいた。
犬に詳しくない俺が見ても明らかに栄養失調なのに、餌箱に口をつけようとしなかった。
初老の男は、しばらくして諦めたように、餌箱を取り上げた。

俺は声をかけた。
「その犬、餌を食べないんですか?」
老人は少し警戒したようだったが、俺が名刺を差し出すと、
「ああ。訪問販売か」
と、若干、修正してほしい認識で受け入れてくれた。



746:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/12/07(日)00:43:50ID:H8wRhXRO0
虐殺 5/8

「今日はこの地区を回らせてもらっているんですが、麓の人たちから加藤さんのことをお聞きしまして」
俺は警戒を解くべく、情報源を明らかにする。
老人は憎々しげな表情を浮かべたあと、
「ロクな事は言っとらんだろう」
と、麓の住人に対する敵意を顕わにした。

…たしかに彼らは、この『加藤』氏のことを快く評価はしていなかったが、それにしても温度差があるな…。

双方に角が立たないようにフォローする。
「野犬の駆除をしてくれるからありがたいと言ってましたよ。でも、本当は駆除じゃなくて、飼ってみえるみたいですね」
老人の持つ餌箱の中身は、ちゃんとしたドッグフードに見えたからだ。
老人は、足元の痩せた犬を一瞥し。
酷薄な笑いを浮かべて言った。
「これには農薬が混ぜてある。食えば速攻で死ぬ」
それから、怯えた表情のレトリバーに向かって、付け足した。
「じっくり餓死するのが望みのようだがな」
俺は言葉に詰まって、立ち尽くした。



747:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/12/07(日)00:44:20ID:H8wRhXRO0
虐殺 6/8

老人に首輪を掴まれた痩せ犬は、引きずられるように家の裏口に消えていった。
あの犬…これから徐々に衰弱して死んでいくのか…。
やりきれなくなって、大月に解決策を求めた。
大月は、
「ちょっと待ってくださいよ」
と電話口でしばらく沈黙したあと、
「そのレベルの虐待なら警察が動くと思います。けど、犬は保健所で薬殺されるでしょうね。だから、先にここに連絡してください」
と、ある施設の電話番号を提示してきた。
『アニマルシェルター』。野生化した犬や猫を保護して、新しい飼い主を探す施設なのだという。
「彼らなら悪質な飼い主に対抗する手段も持っています。笹川さんが動くより、的確に処置してくれますよ」

大月の説明に、かなりの精神的安定を得て、俺はいったん山を下りることにした。
加藤邸のテリトリーの中では、妙な動きを控えたほうがよさそうだと思ったから。
来たときとは逆に、左回りに庭先を戻ると、家の中から、突然、犬の断末魔が聞こえた。
あえて思考をシャットアウトして、玄関まで戻る。

玄関のすぐ外に、さっきのレトリバーの惨殺体が置かれてあった。



748:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/12/07(日)00:44:55ID:H8wRhXRO0
虐殺 7/8

窓から、強い憎悪を浮かべた太った老婦の顔が覗いている。
その横に、30代ぐらいの痴呆じみた男が、返り血で濡れた服を着たまま立っていた。

なぜ、こんなことができるんだ?

俺は血走った瞳で睨んでいる犬の死体を無視して帰途に着いた。
『お前が来なければ、もっと生きられた』
犬の恨みが聞こえるような気がしたから、無視せずにはいられなかった。

帰り道には、累々と積もる動物の遺骸。
来るときはなかったはずだ。
仕事仲間の話を思い出した。
「その死体のひとつひとつが、助けてくれって言ってるような気がして、頭がおかしくなりそうだった」
俺は口笛を吹きながら帰った。
お前たちはもう死んでいるんだ。俺にはどうすることもできないんだ。だから無視するよ。

麓につき、営業車の運転席に身を沈めてから、アニマルシェルターに連絡をした。
シェルターの職員は、
「動物も人間と一緒だったでしょう?死ぬときには強い想いを残します。だから、我々は自費を投じて救助活動をしてしまうんですよ」
と言った。



749:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/12/07(日)00:45:34ID:H8wRhXRO0
虐殺 8/8

その夜。
仕事を終えた俺は、大月を強引に飲みに誘った。
運転は暴走気味なくせに、飲酒運転は絶対にしない大月は、この日も一滴も飲まなかったが。
俺は、I村の件からずっと疑問に思っていたことを大月にぶつけた。
「俺はなぜ、こんな厄介ごとばかりに首を突っ込むようになったんだろう?以前はうまく避けていたのに」
大月は首をかしげながら、
「さあ?」
と言うばかりだ。
「本物の鬼が見たいんだよ」
俺は益体もないことを言って、さらに大月を困らせる。

「今日の一家も、やってることは鬼に匹敵するが、角はなかった。ただのサディスティックな人間だ」
「I村で見た鬼は、角も牙もあって、硬そうな筋肉と震え上がるような大声を出していた。あれは俺の幻覚なのか?それとも本物だったのか?」
「本物の鬼には、どこに行けば会えるんだ?」
大月は、
「なぜそんなものが気にかかるんです?」
と、ノンアルコールを呷りながら聞く。
俺は答えた。
「もし俺が鬼に呪われたのなら、俺のかみさんや子どもにも影響が及ぶかもしれないだろ。俺はあいつらだけは守りたい」

大月は笑って、そして呆れた。
「親ってのは、みんなそんな発想をするんだな」
そして、俺のグラスを取り上げると、
「その辺にしましょう。明日はもっと大酒のみの住職のとこに連れて行ってあげますから」
と言った。



引用元:【霊感持ちの】シリーズ物総合スレ6【友人・知人】
https://anchorage.5ch.net/test/read.cgi/occult/1223829762/742-749








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ー鬼子母神ー <オオ○キ教授シリーズ>

2018.01.22 (Mon) Category : 創作作品

567:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/11/23(日)00:13:34ID:wm1+rES80
鬼子母神 1/9

大月を伴っての営業活動も、1ヶ月を超えた。
そろそろ単独行動に出る時期に来ていることを上司に告げ、俺と大月は、最後の共同仕事に入った。

そこは中規模の公営団地で、俺は以前にも営業回りをしたことがある。
外国人やシングルマザーが多く、経済的に恵まれていない地区なので、実入りは著しく悪かった。
大月ならあるいは…、なんて、甘い考えを持ったのだが、大月は、特に色目を使う年増女性は苦手のようだった。
結果。本日の成果は伸びていない。

「お前にも苦手な分野はあるんだな」
と大月をからかうと、
「オレは仕事をしたいだけなんで、他の期待をされても困る」
と返答してきやがった。

…まあ、こいつなら、女が放っておかないだろう、と思う。
それを自覚してるところが嫌味っぽいが(笑)。



568:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/11/23(日)00:14:13ID:wm1+rES80
鬼子母神 2/9

6棟ある団地を半分まで回り終えたころ、空が赤くなり始めた。
陽が長くなってきたなあ…。
「そろそろ帰るか」
と提案すると、いつもはあっさりと、
「はい」
と言う大月が、珍しく、
「あの棟だけ回りましょうか」
と粘った。
6棟の中で東北の角になる建物だった。
侘しい西陽からさえ取り残された暗い場所だ。

「なんでこの棟なんだ?」
順番でいってもイレギュラーな訪問に、俺は、仕事以外の興味を持った。
大月は、ときどきこういう行動を起こすことがある。
不自然に運転を迂回したら本来の道で事故が起こっていた、というような。
「子どもが泣きやまなかったんですよ」
大月は苦笑いをしながら、問題の4棟の入り口に忍び入る。
「向かい側の1棟を回っている間、ずっと、こっちのほうから幼児の泣く声が聞こえてたんです。それだけなんだけど、妙に気になって」



569:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/11/23(日)00:14:36ID:wm1+rES80
鬼子母神 3/9

おいおい…。
俺は足を止めた。
幼児虐待の現場なんかに居合わせたくないぞ…。

大月は躊躇うことなく階段を上っていく。
耳を澄ますが、窓や換気扇から伝わってくる夕食の支度の音しか聞こえてこない。
かなりほっとして、大月に、
「たまたま子どもの機嫌が悪かっただけだよ、きっと。もう落ち着いたんじゃないか」
と伝えるが、大月は、
「最後まで見て回らせてくれませんか?」
と聞かない。

最上階の4階に辿りつくと。
長い共用通路の真ん中辺りに、なぜか。
…花が供えてあった…。



570:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/11/23(日)00:15:00ID:wm1+rES80
鬼子母神 4/9

ざっと見て200世帯はあろうかという団地だ。
敷地内で突発的な不幸があっても不思議じゃあ、ない。
でも…普通、こんなところに供養の跡を残すだろうか。
丁寧に花瓶に生けられた菊の花に近寄ってみると、405号室のドアの真ん前にあることがわかった。
ざわざわと鳥肌が立った。
大月は、どのあたりで子どもの声を聞いたんだ?

大月も同じことを考えたらしく、しばらく、花の前で立ち尽くしていた。
そして、いきなり反転すると、405号室のインターホンを押した。
………信じらんね~。
ややあって、ドアが開いた。
30代ぐらいの若い母親と、その後ろには、5歳ぐらいの女の子がついて出てきた。



571:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/11/23(日)00:15:50ID:wm1+rES80
鬼子母神 5/9

大月の本気の営業活動というのを、俺は、このとき初めて見た。
ふだんは『契約は取れても取れなくてもいいや』的な態度が功を奏している感があったが、目の前の母親に対するトークは、警戒心を0にしようという目論見が執拗に見て取れたからだ。
最初は険を顕わにしていた彼女は、すぐに俺たちを玄関まで入れてくれた。
そして、5分も経たないうちに、家庭の内情を教えてくれるまでになった。

「うちの子どもは手がかからないから、そういう商品は要らないわ」
玄関先で座り込んで話をしていた母親は、女の子を膝に招き入れて頭を撫でた。
目線を同じくするべく、大月も腰を下して母親の話に相槌を打つ。
「そうみたいですね。普通、このぐらいのお子さんだと、あちこちに擦り傷なんかを作ってるのをよく見ますから」
傷のない綺麗な顔の幼女に大月が笑いかけると、母親は、特に喜んだようだった。
「子どもといっても、いろいろいますから。手のかかる子は本当に大変」
過去に苦労した覚えがあるかのような含みを語ると、母親は、ますます愛しそうに愛娘の頭を抱きしめた。

…俺もついこないだ親になったが、この母親の溺愛ぶりは、少し不気味だ…。

大月は調子を合わせて目を細めながら、
「おもての花は娘さんの遊びですか?女の子らしいなって、さっきから思ってたんですが」
とすっとぼけた。
母親は、怒ることはなかったが、表情を曇らせて言った。
「あれは近所の人たちの嫌がらせなんです。…私、上の子どもを病気で亡くしたの。それを、私の管理不足だって責める人たちが団地内にはたくさんいて、いまでもああいうことをしているの」



572:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/11/23(日)00:16:23ID:wm1+rES80
鬼子母神 6/9

大月はクロージングをかけなかった。
「またお邪魔させてもらっていいですか」
と、次につないで、俺たちは405号室を出た。

「…どうせこの団地は再訪するんだから、いいんだけどさ」
1階まで下りたとき、俺は、やっと本音を大月に伝えることができた。
「あの家にはもう行きたくないね」
大月は困った顔で頭を下げて、
「すみません。契約を取っていいのか、関わらないほうがいいのか、即座に判断できなかったもので」
と謝った。
大月もいい印象は持たなかったらしい。

「あの母親、取り繕ってはいたが、本当は虐待で子どもを殺したんじゃないのか?」
俺は、消えない疑念を大月にぶつけて、続けた。
「お前が聞いたっていう幼児の泣き声…。それって、死んだ子どもの声じゃ…」
「違いますよ」
大月は苦笑して遮った。
「泣き声は、あの女の子の声です、きっと。表情が硬かったので、あの子も正常には育ってない」

………。
それで大月は、
「また来ます」
って言ったのか。その間だけでも、虐待が止むように。



573:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/11/23(日)00:16:45ID:wm1+rES80
鬼子母神 7/9

1棟の外れに営業車を停めていた俺たちは、帰るべく1棟まで戻ってきた。
1棟の共用廊下には人影があった。70を越えていそうな老婆だ。
大月は俺に、
「ちょっとすみません」
と言って、車ではなく、老婆に近づいていった。俺も同行した。
大月が丁寧に尋ねると、老婆も親切に答えてくれた。

4棟の405号室には、去年の年末まで小学2年生の女の子がいたらしい。
近くの公園で、夜の8時を過ぎるまで独りで遊んでいたこともあったので、団地の住人は気にかけていた。
女の子は、学校が冬休みに入った頃から、外に姿を見せなくなった。
正月明け、始業式を目前に控えた日に、彼女は、自宅のすぐ真ん前で凍死していた。



574:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/11/23(日)00:17:11ID:wm1+rES80
鬼子母神 8/9

「母親が追い出したんだろうねえ…」
老婆は涙さえ浮かべていた。
「子どもだもんねえ。隣の家に上げてもらうこともしないで、ずっと、家の中に入れてもらえるのを待ってたんだよ」
俺は、405号室に怒鳴り込んでやりたくなった。

老婆は続ける。
「ケイちゃんが成仏するまで、みんなであそこに花を供えてやってるんだわ。まだ、夜になると泣き声が聞こえるからねえ」
大月が、老婆に、穏やかに聞いた。
「下の娘さんには虐待の兆しはないですか?」
老婆は頷いた。
「アヤちゃんは大事にされとる。でも、ときどき、家の前で『お姉ちゃん、ごめんね』って謝っとるらしいわ。ケイちゃんが見えるんだろうね」

俺は大月に、
「契約を取れ」
と小声で言った。
「あの親子とつながりを持っておこう」
と。



575:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/11/23(日)00:17:47ID:wm1+rES80
鬼子母神 9/9

帰りの車の中で大月が言った。
「鬼子母神って知ってます?」
俺は、うろ覚えの昔話を引っ張り出す。
「たしか…子どもを食う鬼女の話だったと…」
本当はこんな物語らしい。

鬼子母神には1000人の子どもがいて、実子たちをとても可愛がっていた。
だが、その反面、他人の子どもを食べるという業を背負っていた。
釈迦が、彼女に悪行を悟らせるため、鬼子母神の末子を連れ出して隠してしまう。
そこでやっと、鬼子母神は子を亡くした母親の苦しみを悟り、釈迦に帰依して神となる。

「いまでは子どもの守り神として信仰されている鬼子母神だけど、オレ、この話を聞くたびに、疑問に思うんですよね」
大月は、いつもの暴走も控えるほど沈んだ声で言った。
「改心しました、で、人殺しの罪が消えるんでしょうか?」

あの母親は、『アヤちゃん』をこれからも大事にするだろう。
そして、それが『ケイちゃん』の供養に繋がると思っているんだろう。
でも、あの団地の誰も、母親を許さないだろう。のうのうと生きている限り。

「神様の世界じゃ許されるかもしれないが」
俺は答えた。
「人間同士はもっと厳しいんだぜ。慈悲なんてないからな」
大月は少し笑って、
「そのほうがいい」
と言った。



引用元:【霊感持ちの】シリーズ物総合スレ6【友人・知人】
https://anchorage.5ch.net/test/read.cgi/occult/1223829762/567-575









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