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都市伝説・・・奇憚・・・blog

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ー虐殺ー <オオ○キ教授シリーズ>

2018.01.23 (Tue) Category : 創作作品

742:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/12/07(日)00:42:11ID:H8wRhXRO0
虐殺 1/8

7月に入ったころ、仕事仲間から嫌な話を聞いた。
人里離れた山中の一軒家の周囲に、犬や猫の死骸が大量に散乱しているという。
一軒家に住む家族の仕業らしいが、仕事仲間も、
「興味はあるんだけど、腐敗臭がすごくて、家に近寄ることができないんだ。たぶん、家の中には、もっとたくさんの動物が死んでるぜ」
と、直接確かめることはしなかったらしい。
近くでの営業周りの仕事をゲットした俺は、この日、その家に足を運んでみることにした。

麓の村は、商店もある活気づいた田舎町だった。
大きな国道が走っていて、車通りが激しいせいか、閉鎖的な雰囲気はまったくない。
それでも、家々を回っているときに、時折、妙な臭いが鼻をつくことがあった。
「気持ちの悪い臭いですね」
と持ちかけると、村の人間は一様に顔をしかめて、
「あれは加藤のとこだわ。飼えなくなったペットを山に放す輩が後を絶たんもんだから、加藤が次々と始末してるんだわ」
と言った。



743:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/12/07(日)00:42:34ID:H8wRhXRO0
虐殺 2/8

なんだ…。俺は拍子抜けした。
動物虐待かと思ったら、野犬や野良猫の駆逐だったのか。
「加藤さんっていうのは、そういうのを請け負う業者か何かですか?」
と聞くと、村人は、
「そうじゃない。いつのまにか住み着いた余所者で、虐殺が好きな一家だわな」
と答えた。

…虐殺…。
俺の脳裏にI村での光景がよぎった。
子どもの首を容赦なく刎ねた鬼。
弱い者への慈悲などまったくない生き物の行為だった。

自分の子どもでさえ平気で凍死させる母親のいる世の中だ。
動物『ごとき』を喜んで殺す人間がいても、不思議はないのかもしれない。

俺は仕事を適当に切り上げて、山に向かった。
『鬼のような』人間を見てみたかった。



744:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/12/07(日)00:42:58ID:H8wRhXRO0
虐殺 3/8

仕事仲間の話では、かなり奥深く入り込まないと辿り着けないということだったが、俺はすんなりと『加藤』邸に着いた。
途中に散乱していたという犬猫の死骸にもお目にかかってない。
仕事仲間から情報を得たのは半月ほど前だったから、片づけたのかもしれない。

なんとなく大月に電話してみた。
仕事ではすでに別行動を取っていた大月は、ちょうど遅い昼食に入っている時間だったらしく、
「また妙なことに興味を持って」
と笑いながらしばらく付き合ってくれた。
が、最後には、
「気をつけて近づいてくださいよ」
と、改まった声で忠告をしてきた。

俺自身、なぜこんなことに関わろうとするのか、自分の行為が説明できない。
ただ、『見たい』。
鬼のような人間の姿を。
本物の鬼ではなく、ただのエゴの固まりである人間の姿を。



745:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/12/07(日)00:43:27ID:H8wRhXRO0
虐殺 4/8

人気のない加藤邸の玄関先を迂回し、右側に開けている庭を回った。
臭いがきつい。動物の臭いじゃない。腐乱した死体の臭いだ。
柵などはなかったが、手を入れてあるらしい敷地は、かなりの面積を持っていた。
3分ほどかけてゆっくりと裏口に回ると、そこには。
痩せ衰えた茶毛のレトリバーに餌を与える初老の男がいた。

男はかがんで、餌箱を犬の鼻先に押しつけている。
一見、普通の飼い主とペットの光景に見えた。
が、レトリバーは餌を拒んでいた。
犬に詳しくない俺が見ても明らかに栄養失調なのに、餌箱に口をつけようとしなかった。
初老の男は、しばらくして諦めたように、餌箱を取り上げた。

俺は声をかけた。
「その犬、餌を食べないんですか?」
老人は少し警戒したようだったが、俺が名刺を差し出すと、
「ああ。訪問販売か」
と、若干、修正してほしい認識で受け入れてくれた。



746:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/12/07(日)00:43:50ID:H8wRhXRO0
虐殺 5/8

「今日はこの地区を回らせてもらっているんですが、麓の人たちから加藤さんのことをお聞きしまして」
俺は警戒を解くべく、情報源を明らかにする。
老人は憎々しげな表情を浮かべたあと、
「ロクな事は言っとらんだろう」
と、麓の住人に対する敵意を顕わにした。

…たしかに彼らは、この『加藤』氏のことを快く評価はしていなかったが、それにしても温度差があるな…。

双方に角が立たないようにフォローする。
「野犬の駆除をしてくれるからありがたいと言ってましたよ。でも、本当は駆除じゃなくて、飼ってみえるみたいですね」
老人の持つ餌箱の中身は、ちゃんとしたドッグフードに見えたからだ。
老人は、足元の痩せた犬を一瞥し。
酷薄な笑いを浮かべて言った。
「これには農薬が混ぜてある。食えば速攻で死ぬ」
それから、怯えた表情のレトリバーに向かって、付け足した。
「じっくり餓死するのが望みのようだがな」
俺は言葉に詰まって、立ち尽くした。



747:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/12/07(日)00:44:20ID:H8wRhXRO0
虐殺 6/8

老人に首輪を掴まれた痩せ犬は、引きずられるように家の裏口に消えていった。
あの犬…これから徐々に衰弱して死んでいくのか…。
やりきれなくなって、大月に解決策を求めた。
大月は、
「ちょっと待ってくださいよ」
と電話口でしばらく沈黙したあと、
「そのレベルの虐待なら警察が動くと思います。けど、犬は保健所で薬殺されるでしょうね。だから、先にここに連絡してください」
と、ある施設の電話番号を提示してきた。
『アニマルシェルター』。野生化した犬や猫を保護して、新しい飼い主を探す施設なのだという。
「彼らなら悪質な飼い主に対抗する手段も持っています。笹川さんが動くより、的確に処置してくれますよ」

大月の説明に、かなりの精神的安定を得て、俺はいったん山を下りることにした。
加藤邸のテリトリーの中では、妙な動きを控えたほうがよさそうだと思ったから。
来たときとは逆に、左回りに庭先を戻ると、家の中から、突然、犬の断末魔が聞こえた。
あえて思考をシャットアウトして、玄関まで戻る。

玄関のすぐ外に、さっきのレトリバーの惨殺体が置かれてあった。



748:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/12/07(日)00:44:55ID:H8wRhXRO0
虐殺 7/8

窓から、強い憎悪を浮かべた太った老婦の顔が覗いている。
その横に、30代ぐらいの痴呆じみた男が、返り血で濡れた服を着たまま立っていた。

なぜ、こんなことができるんだ?

俺は血走った瞳で睨んでいる犬の死体を無視して帰途に着いた。
『お前が来なければ、もっと生きられた』
犬の恨みが聞こえるような気がしたから、無視せずにはいられなかった。

帰り道には、累々と積もる動物の遺骸。
来るときはなかったはずだ。
仕事仲間の話を思い出した。
「その死体のひとつひとつが、助けてくれって言ってるような気がして、頭がおかしくなりそうだった」
俺は口笛を吹きながら帰った。
お前たちはもう死んでいるんだ。俺にはどうすることもできないんだ。だから無視するよ。

麓につき、営業車の運転席に身を沈めてから、アニマルシェルターに連絡をした。
シェルターの職員は、
「動物も人間と一緒だったでしょう?死ぬときには強い想いを残します。だから、我々は自費を投じて救助活動をしてしまうんですよ」
と言った。



749:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/12/07(日)00:45:34ID:H8wRhXRO0
虐殺 8/8

その夜。
仕事を終えた俺は、大月を強引に飲みに誘った。
運転は暴走気味なくせに、飲酒運転は絶対にしない大月は、この日も一滴も飲まなかったが。
俺は、I村の件からずっと疑問に思っていたことを大月にぶつけた。
「俺はなぜ、こんな厄介ごとばかりに首を突っ込むようになったんだろう?以前はうまく避けていたのに」
大月は首をかしげながら、
「さあ?」
と言うばかりだ。
「本物の鬼が見たいんだよ」
俺は益体もないことを言って、さらに大月を困らせる。

「今日の一家も、やってることは鬼に匹敵するが、角はなかった。ただのサディスティックな人間だ」
「I村で見た鬼は、角も牙もあって、硬そうな筋肉と震え上がるような大声を出していた。あれは俺の幻覚なのか?それとも本物だったのか?」
「本物の鬼には、どこに行けば会えるんだ?」
大月は、
「なぜそんなものが気にかかるんです?」
と、ノンアルコールを呷りながら聞く。
俺は答えた。
「もし俺が鬼に呪われたのなら、俺のかみさんや子どもにも影響が及ぶかもしれないだろ。俺はあいつらだけは守りたい」

大月は笑って、そして呆れた。
「親ってのは、みんなそんな発想をするんだな」
そして、俺のグラスを取り上げると、
「その辺にしましょう。明日はもっと大酒のみの住職のとこに連れて行ってあげますから」
と言った。



引用元:【霊感持ちの】シリーズ物総合スレ6【友人・知人】
https://anchorage.5ch.net/test/read.cgi/occult/1223829762/742-749








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ー鬼子母神ー <オオ○キ教授シリーズ>

2018.01.22 (Mon) Category : 創作作品

567:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/11/23(日)00:13:34ID:wm1+rES80
鬼子母神 1/9

大月を伴っての営業活動も、1ヶ月を超えた。
そろそろ単独行動に出る時期に来ていることを上司に告げ、俺と大月は、最後の共同仕事に入った。

そこは中規模の公営団地で、俺は以前にも営業回りをしたことがある。
外国人やシングルマザーが多く、経済的に恵まれていない地区なので、実入りは著しく悪かった。
大月ならあるいは…、なんて、甘い考えを持ったのだが、大月は、特に色目を使う年増女性は苦手のようだった。
結果。本日の成果は伸びていない。

「お前にも苦手な分野はあるんだな」
と大月をからかうと、
「オレは仕事をしたいだけなんで、他の期待をされても困る」
と返答してきやがった。

…まあ、こいつなら、女が放っておかないだろう、と思う。
それを自覚してるところが嫌味っぽいが(笑)。



568:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/11/23(日)00:14:13ID:wm1+rES80
鬼子母神 2/9

6棟ある団地を半分まで回り終えたころ、空が赤くなり始めた。
陽が長くなってきたなあ…。
「そろそろ帰るか」
と提案すると、いつもはあっさりと、
「はい」
と言う大月が、珍しく、
「あの棟だけ回りましょうか」
と粘った。
6棟の中で東北の角になる建物だった。
侘しい西陽からさえ取り残された暗い場所だ。

「なんでこの棟なんだ?」
順番でいってもイレギュラーな訪問に、俺は、仕事以外の興味を持った。
大月は、ときどきこういう行動を起こすことがある。
不自然に運転を迂回したら本来の道で事故が起こっていた、というような。
「子どもが泣きやまなかったんですよ」
大月は苦笑いをしながら、問題の4棟の入り口に忍び入る。
「向かい側の1棟を回っている間、ずっと、こっちのほうから幼児の泣く声が聞こえてたんです。それだけなんだけど、妙に気になって」



569:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/11/23(日)00:14:36ID:wm1+rES80
鬼子母神 3/9

おいおい…。
俺は足を止めた。
幼児虐待の現場なんかに居合わせたくないぞ…。

大月は躊躇うことなく階段を上っていく。
耳を澄ますが、窓や換気扇から伝わってくる夕食の支度の音しか聞こえてこない。
かなりほっとして、大月に、
「たまたま子どもの機嫌が悪かっただけだよ、きっと。もう落ち着いたんじゃないか」
と伝えるが、大月は、
「最後まで見て回らせてくれませんか?」
と聞かない。

最上階の4階に辿りつくと。
長い共用通路の真ん中辺りに、なぜか。
…花が供えてあった…。



570:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/11/23(日)00:15:00ID:wm1+rES80
鬼子母神 4/9

ざっと見て200世帯はあろうかという団地だ。
敷地内で突発的な不幸があっても不思議じゃあ、ない。
でも…普通、こんなところに供養の跡を残すだろうか。
丁寧に花瓶に生けられた菊の花に近寄ってみると、405号室のドアの真ん前にあることがわかった。
ざわざわと鳥肌が立った。
大月は、どのあたりで子どもの声を聞いたんだ?

大月も同じことを考えたらしく、しばらく、花の前で立ち尽くしていた。
そして、いきなり反転すると、405号室のインターホンを押した。
………信じらんね~。
ややあって、ドアが開いた。
30代ぐらいの若い母親と、その後ろには、5歳ぐらいの女の子がついて出てきた。



571:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/11/23(日)00:15:50ID:wm1+rES80
鬼子母神 5/9

大月の本気の営業活動というのを、俺は、このとき初めて見た。
ふだんは『契約は取れても取れなくてもいいや』的な態度が功を奏している感があったが、目の前の母親に対するトークは、警戒心を0にしようという目論見が執拗に見て取れたからだ。
最初は険を顕わにしていた彼女は、すぐに俺たちを玄関まで入れてくれた。
そして、5分も経たないうちに、家庭の内情を教えてくれるまでになった。

「うちの子どもは手がかからないから、そういう商品は要らないわ」
玄関先で座り込んで話をしていた母親は、女の子を膝に招き入れて頭を撫でた。
目線を同じくするべく、大月も腰を下して母親の話に相槌を打つ。
「そうみたいですね。普通、このぐらいのお子さんだと、あちこちに擦り傷なんかを作ってるのをよく見ますから」
傷のない綺麗な顔の幼女に大月が笑いかけると、母親は、特に喜んだようだった。
「子どもといっても、いろいろいますから。手のかかる子は本当に大変」
過去に苦労した覚えがあるかのような含みを語ると、母親は、ますます愛しそうに愛娘の頭を抱きしめた。

…俺もついこないだ親になったが、この母親の溺愛ぶりは、少し不気味だ…。

大月は調子を合わせて目を細めながら、
「おもての花は娘さんの遊びですか?女の子らしいなって、さっきから思ってたんですが」
とすっとぼけた。
母親は、怒ることはなかったが、表情を曇らせて言った。
「あれは近所の人たちの嫌がらせなんです。…私、上の子どもを病気で亡くしたの。それを、私の管理不足だって責める人たちが団地内にはたくさんいて、いまでもああいうことをしているの」



572:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/11/23(日)00:16:23ID:wm1+rES80
鬼子母神 6/9

大月はクロージングをかけなかった。
「またお邪魔させてもらっていいですか」
と、次につないで、俺たちは405号室を出た。

「…どうせこの団地は再訪するんだから、いいんだけどさ」
1階まで下りたとき、俺は、やっと本音を大月に伝えることができた。
「あの家にはもう行きたくないね」
大月は困った顔で頭を下げて、
「すみません。契約を取っていいのか、関わらないほうがいいのか、即座に判断できなかったもので」
と謝った。
大月もいい印象は持たなかったらしい。

「あの母親、取り繕ってはいたが、本当は虐待で子どもを殺したんじゃないのか?」
俺は、消えない疑念を大月にぶつけて、続けた。
「お前が聞いたっていう幼児の泣き声…。それって、死んだ子どもの声じゃ…」
「違いますよ」
大月は苦笑して遮った。
「泣き声は、あの女の子の声です、きっと。表情が硬かったので、あの子も正常には育ってない」

………。
それで大月は、
「また来ます」
って言ったのか。その間だけでも、虐待が止むように。



573:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/11/23(日)00:16:45ID:wm1+rES80
鬼子母神 7/9

1棟の外れに営業車を停めていた俺たちは、帰るべく1棟まで戻ってきた。
1棟の共用廊下には人影があった。70を越えていそうな老婆だ。
大月は俺に、
「ちょっとすみません」
と言って、車ではなく、老婆に近づいていった。俺も同行した。
大月が丁寧に尋ねると、老婆も親切に答えてくれた。

4棟の405号室には、去年の年末まで小学2年生の女の子がいたらしい。
近くの公園で、夜の8時を過ぎるまで独りで遊んでいたこともあったので、団地の住人は気にかけていた。
女の子は、学校が冬休みに入った頃から、外に姿を見せなくなった。
正月明け、始業式を目前に控えた日に、彼女は、自宅のすぐ真ん前で凍死していた。



574:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/11/23(日)00:17:11ID:wm1+rES80
鬼子母神 8/9

「母親が追い出したんだろうねえ…」
老婆は涙さえ浮かべていた。
「子どもだもんねえ。隣の家に上げてもらうこともしないで、ずっと、家の中に入れてもらえるのを待ってたんだよ」
俺は、405号室に怒鳴り込んでやりたくなった。

老婆は続ける。
「ケイちゃんが成仏するまで、みんなであそこに花を供えてやってるんだわ。まだ、夜になると泣き声が聞こえるからねえ」
大月が、老婆に、穏やかに聞いた。
「下の娘さんには虐待の兆しはないですか?」
老婆は頷いた。
「アヤちゃんは大事にされとる。でも、ときどき、家の前で『お姉ちゃん、ごめんね』って謝っとるらしいわ。ケイちゃんが見えるんだろうね」

俺は大月に、
「契約を取れ」
と小声で言った。
「あの親子とつながりを持っておこう」
と。



575:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/11/23(日)00:17:47ID:wm1+rES80
鬼子母神 9/9

帰りの車の中で大月が言った。
「鬼子母神って知ってます?」
俺は、うろ覚えの昔話を引っ張り出す。
「たしか…子どもを食う鬼女の話だったと…」
本当はこんな物語らしい。

鬼子母神には1000人の子どもがいて、実子たちをとても可愛がっていた。
だが、その反面、他人の子どもを食べるという業を背負っていた。
釈迦が、彼女に悪行を悟らせるため、鬼子母神の末子を連れ出して隠してしまう。
そこでやっと、鬼子母神は子を亡くした母親の苦しみを悟り、釈迦に帰依して神となる。

「いまでは子どもの守り神として信仰されている鬼子母神だけど、オレ、この話を聞くたびに、疑問に思うんですよね」
大月は、いつもの暴走も控えるほど沈んだ声で言った。
「改心しました、で、人殺しの罪が消えるんでしょうか?」

あの母親は、『アヤちゃん』をこれからも大事にするだろう。
そして、それが『ケイちゃん』の供養に繋がると思っているんだろう。
でも、あの団地の誰も、母親を許さないだろう。のうのうと生きている限り。

「神様の世界じゃ許されるかもしれないが」
俺は答えた。
「人間同士はもっと厳しいんだぜ。慈悲なんてないからな」
大月は少し笑って、
「そのほうがいい」
と言った。



引用元:【霊感持ちの】シリーズ物総合スレ6【友人・知人】
https://anchorage.5ch.net/test/read.cgi/occult/1223829762/567-575









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ー赤い枠ー <オオ○キ教授シリーズ>

2018.01.20 (Sat) Category : 創作作品

392:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/11/09(日)23:46:32ID:M8Ukg23i0
赤い枠 1/13

岡山の支部で成績1、2番を争っていたというエリート営業マンが、この小さな支店に転勤してくると聞いて、俺たちは戦々恐々となった。
のんびりした支店の空気が乱されるんじゃないか?ハードな営業方法に切り替わって、ついていけなくなった社員はリストラされるんじゃないか?

そんな噂の中、やってきた大月(おおつき)は、感じのいい、ごくごく普通の青年だった。
歳は俺より2歳下だという。
支店のやり方に慣れるまで、俺の下で活動することになった。

実はいま、俺には、頭の痛い問題が持ち上がっている。
白地世帯(営業活動をしたことのない土地)の開発目的で飛び込んだ田舎町で、1件の契約も取れていないんだ。
【飛び込み】の基本は情報収集から始まる。その世帯の構成、個人情報の取得。地域交流の有無。そういうものが受け取れて、初めてスムーズな販売交渉をすることができる。
それなのに、その田舎は態度が硬くて、特に近隣との交流関係がまったく聞き出せずにいる。

営業車に大月を乗せて向かう途中、その話をすると、大月は、
「ああ、なるほど」
と言った。
こいつには要因がわかるんだろうか。



393:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/11/09(日)23:47:01ID:M8Ukg23i0
赤い枠 2/13

2時間以上をかけて到着したI村は、センターラインのない市道脇の低い土地にへばりついているような限界集落だった。
年寄りが多いということは機動力がないということだ。
詳しくは書けないが、俺たちの販売する商品は、そういう家屋にこそ必要なサービスだった。

市道から車を下ろし、数反の田んぼが広がる農道に車を停める。
「村には車が入れないんですか?」
と大月が聞いてくるので、
「入れるよ。でも、目立ちすぎて警戒される」
と俺は苦笑した。
初日、すべての家の玄関で応答を無視された俺の苦い経験談だ。



394:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/11/09(日)23:47:29ID:M8Ukg23i0
赤い枠 3/13

大月を伴って、農道の先に点在する家々を回った。
1軒めは門前払い。
2軒目は留守のようだった。
3軒め、やっと玄関が開いたので、家主の顔を見ることができた。70近いような婆さんだった。
俺が説明をしている間、婆さんは無遠慮な視線で俺たちを眺め回していた。
この雰囲気が苦手なんだよなあ…。あからさまに敵対視されてるのがわかるから。

世間話ふうに家族構成を聞きだそうとしたとき、横から大月が、
「若い方が同居してるんですか?窓のサッシが赤いのってシャレてますよね」
と口を挟んだ。
あ、馬鹿…。
婆さんは険しい顔になると、
「気分悪くなったわ。帰れ」
と、俺たちを追い出した。

「最初に言わなくて悪かったな」
俺は、交渉が破綻したきっかけを作った大月が落ち込んだだろうと思って、フォローしてやった。
だけど、大月は全然反省した様子もなく(!)、
「あれに原因があるんだ」
と、いまの家を振り返って観察しながら、考え込んでいる。
「他の家も見て回っていいですか?」
と言うので、
「…どうせ訪問するんだから、ついでに窓枠でも何でも覗けば?」
と答えておいた。



395:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/11/09(日)23:48:05ID:M8Ukg23i0
赤い枠 4/13

4軒めは留守…というより、人が住んでいないようだった。窓枠は普通の色の木枠だった。
5軒めは赤い木枠の家。その窓から爺さんの顔が覗いていたが、呼びかけても出てこなかった。
6軒めは比較的新しい総二階の家で、サッシの色はすべて赤だった。
インターホンを鳴らすと、50代ぐらいの痩せた主婦が出てきた。

俺が今回訪問したのは、いままで未訪だった家屋ばかりだ。
だから、この年代の人間が村に住んでいることは初発見だった。
主婦は、
「うちには必要ないけど」
と、商品については笑いながら断ったが、世間話には応じてくれた。

「この村は源義経をかくまった歴史のあるところなんですって」
主婦の話に、歴史音痴の俺は、
「はあ…」
と答えるのが精一杯だったが、大月はこういう分野に明るいらしく、
「平泉への逃避行の途中の話ですか?身近にそんな場所があるなんて、ちょっと感動ですね」
と、上手く話を合わせていた。

「そうそう。実のお兄さんに追われて、最期は平泉の領主にも裏切られて死んじゃったんですってね。可哀相ねえ」
主婦は、こういう話を気軽にできる相手に飢えていたのか、楽しそうに応じる。
「義経は天才的な軍師だったので、兄の頼朝は自分を越えそうな弟を恐れたのかもしれませんね。才能は、本当は伸ばしてあげなければいけないものなんですが」
と大月はまとめて、主婦に、
「ところで、いまハマってる趣味なんかないですか?僕たちにはその時間を捻出するお手伝いができるんじゃないかなと思ってるんですが」
と、いきなりクロージング(販売交渉で締めに入ること)をかけた。

結果。
俺はこの日、初めてI村で契約を取れた。



396:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/11/09(日)23:48:39ID:M8Ukg23i0
赤い枠 5/13

帰り道、改めて大月に、心から、
「ありがとう」
と言った。
営業マンならわかると思うが、契約が取れないことが自信喪失に繋がって、後々までいい影響を与えないことがある。
俺はまさにそれだった。

やっとその状態が打破できたのだから、礼なんか、何べん言っても惜しくない。
「よかったですね」
と、大月は驕った様子もなく、笑う。
俺もつられて笑った。なんか、こいつ、いいヤツだ。
「大月は、いつもあんなふうに知識を武器にして契約を取ってるの?」
と聞くと、
「んー…。契約を取ることは頭にあるけど、それ以上に雑談好きなのが、いい結果に結びついてるって感じですかねえ…」
と、無欲な一面を覗かせる。
なるほど。トップにいるヤツは、案外こういう性格なのかもしれない。

「あの村、もう少し通えば、もっと顧客数取れると思うかい?」
1件の契約ですでに満足してしまった俺は、もうI村に足を運ぶモチベーションを失くしていたが、一応、大月に窺いを立ててみた。

大月は、少し考えたあと、言った。
「あの赤い窓枠…、もしかしたら、義経を保護した一族の証なんかじゃなくて、他所からI村に入り込んだ開拓民かもしれません」
「だから、窓枠の色が違う住人との交流がなくて、閉鎖的な暮らしをしていたんじゃないかな」
「開拓民の一人と契約ができたんですから、他の世帯も心を開いてくれる可能性は高いと思いますよ」

それって、つまり…。
「部落問題があったってこと?」
と確認すると、大月は曖昧に笑って、
「極端に閉鎖的な地域にはありがちなんですよ」
と答えた。



397:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/11/09(日)23:49:05ID:M8Ukg23i0
赤い枠 6/13

会社に帰ってから、大月の話と主婦の話を合わせて考えてみた。
I村は源義経の隠れ里だったという主婦の話は、大月に言わせれば『ありえない』ことらしい。
義経は、ここからはるか北のG県を通って平泉に至った。この地方に足跡が残るわけがない、と。
余所者として冷遇されてきた赤い窓枠の住人たちが、プライドを保つために語り継いできた偽りの寓話だろう、とも。
なるほど。筋は通っている。

ただ、そうすると、主婦の話が成り立たない。
主婦は、窓枠の赤くない家屋の住人たちのことを、『隠れ住んでいた義経を、追っ手に告発しようとした一族』と呼んでいたんだ。
『あの人たちは、義経の祟りを受けて、次々と不幸に見舞われたの。いまでは村に残ってる人はいないわ』

大月の話によれば、I村での立場は、窓枠の赤い家のほうが弱いと思われる。
一方、主婦の話では、窓枠の赤くないほうが村から追い出されている。

…あの村…、本当に、窓枠の赤くない家には、人が住んでいなかったんだろうか…。

つまらない好奇心に駆られたと、我ながら苦笑する。
今夜、仕事が終わったら、もう1度I村に行ってみよう。



398:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/11/09(日)23:49:31ID:M8Ukg23i0
赤い枠 7/13

昼間ののどかな田舎の情景と違い、闇に沈むI村は、妖怪が出てもおかしくない、おどろおどろしい雰囲気だった。
会社を出る前に、I村に行くことを大月に告げると、大月は笑いながら、
「ご苦労さまです」
とからかった。
だよなあ。やっぱり、俺、物好きだわ。

車は市道に路上駐車した。
あまりに静かで、それ以上、エンジン音を近づかせるのは躊躇われたからだ。
昼間と同じように農道に下りて、集落の間の細い畝道を辿った。
明かりの漏れている家の窓枠は、赤。
人の気配のない家の窓は、アルミの銀や、昔ながらの木枠でできている。
本当に、赤い窓枠以外の家屋は、廃墟と化してしまったんだろうか。
初夏だというのに、空気がやたらと冷たかった。
沈丁花の重い香りが漂ってくる。

小路はますます奥深く、山に入り込んでいく。
闇の中に点々と灯る生活の証。
こんなところに住む人間に、申し訳ないけれど、恐怖を覚えた。
赤い窓枠の住人たちが、本当に他所から入り込んできたのだとしたら、なぜ好き好んで、この土地に住んだのだろう?
こんな、霊気漂う未開の地に。



399:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/11/09(日)23:49:56ID:M8Ukg23i0
赤い枠 8/13

いつのまにか、俺は山の裾野まで来ていた。
獣臭のする山道の先に、一軒、無灯火の家屋が見える。
その家の窓枠の色を確認したら、帰ろう。そう好奇心に区切りをつける。
厚い樹木の枝葉が頭上を覆う真の夜闇の中、足元に注意を集中して、目標物に近づいていった。
ときどき目を上げて確かめる家屋に、人の住んでいる気配はない。

どきん。
自分の心臓の音が、鼓膜の隣りで鳴り始めた。
掌に汗が滲んでいる。
怖い、んじゃない。やばい、んだ。
何かが住んでいる。あの家に。
引き返さないと。【見た】ら、取り返しがつかない気がする。

アルミ色の窓枠をしたその家に背を向けた瞬間、頭の中に強烈なイメージが刺し込んできた。
巨大な白羽が、家の屋根を貫く。
暖かな電灯の漏れ出た窓が、直後、大音響を立てて火を噴いた。
内部で爆発が起こったんだ。



400:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/11/09(日)23:50:19ID:M8Ukg23i0
赤い枠 9/13

俺は必死で走った。元の市道に戻るために。
後ろから、数人の悲鳴や呻き声が追いかけてくる。
『助けて!』
『置いていかないで』
『一緒に連れて行って』
思わず後ろを振り返った。
そこで、俺は、情けなくも腰を抜かした。

焼け爛れた人間の残骸が3つ、追いすがってきていた。
2つは大人、1つは子どもの大きさだ。親子だろう。
突然の爆発で焼け死んだ人たちだ、と、確信した。

その3人の後ろから。
トドメを刺すために、鬼が、巨大な鉈を振り上げながら追いかけてきた。



401:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/11/09(日)23:50:46ID:M8Ukg23i0
赤い枠 10/13

鬼は、3人の首を次々と刎ねた。
子どもの首は、俺の足元に転がってきた。
俺は膝を縮めて、白目を剥いているその首を避けた。
誰の物かわからない嗚咽が、たくさん、辺りに響く。

鬼…巨大な角の生えたマッチョなそいつは、鉈に滴る血液を舐めたあと、俺のほうに歩いてきた。
俺は逃げることもできず、笛のような呼吸音を鳴らしながら、鬼を凝視していた。
死にたくない。
心臓が痛いほど早鐘を打つ。
死にたくない!

無我夢中で、鬼に向かって胸ポケットの携帯を投げつけた。
鬼の硬い皮膚に当たって、携帯はあっさり地面に落ちる。
俺は死を覚悟して、目をつぶった。
そろそろ臨月に入る奥さんの顔が浮かんで、涙が滲んだ。

そのときだった。
鬼の足元に落ちた役立たずの携帯から、強烈な発光が起きた。
同時に着信音がけたたましく鳴る。
鬼は、光と音に責められたように、踵を返して山に帰っていった。
携帯は、鬼の姿が視界から消えるまで、その現象を持続した。



402:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/11/09(日)23:51:18ID:M8Ukg23i0
赤い枠 11/13

俺は、腰が抜けたまま、這って携帯に辿りついた。
受話ボタンを押すと、大月の慌てた声が流れてくる。
「なかなか取らないからどうしたかと思いましたよ。大丈夫ですか?」
…なぜこいつは、このタイミングで、こんなことを言うんだ…?
「大丈夫」
短く答えて、俺は、昼間に続いて礼を言った。
「またお前に助けられた。ありがとう」
大月は、すべてを見透かしたように、
「間に合ったんならよかった」
と言った。
…不思議なヤツだ。

車までの行程をゆっくりと歩みながら、大月の話を電話越しに聞いた。
「オレ、今日、会社を上がったあとに、【彼女】の家に遊びに行ったんですよ」
始まりは、そんな内容だったと思う。
「オレの【彼女】、…なんていうか…、少し鋭い人で。オレを見るなり、『背中に鬼が見えるよ。人を殺すのが好きみたいだから、追い払っておくね』って言うんです」
ふだんなら信用しない話だけど、いまそれらしいモノを見たばかりの俺は冷汗をかいた。
大月は続ける。

「そんなこと言われたのは初めてだったんで、原因は昼間にI村に行ったことだろうなと思ったんです。だから、笹川さんのことが気になって」
真っ先に心配してくれたらしい。
「…お前の【彼女】に感謝するよ。今度紹介してくれ」
と締めくくると、
「拝観料高いですよ」
と返された。
仏像かよ(笑)。



403:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/11/09(日)23:51:43ID:M8Ukg23i0
赤い枠 12/13

翌日、熱を出して欠勤した。一晩中、嫌な夢を見ていたからだ。
新築の家に越してきた親子3人が、地域の軋轢に悩んで、ガス自殺をする夢だった。
ガスの充満した家に、突然の雷が落ちた。3万ボルトの電圧が火災を誘発し、新居はあっけなく破裂した。
まだ生きていた母親と子どもは、玄関から出て助かる寸前に、爆発に巻き込まれた。
五体が吹き飛んだ遺体の様子が、目が覚めた今でも、生々しくて頭から離れない。

夜、大月に電話をした。
「サポートする立場でありながら休んで悪かったな」
謝ると、大月は、賑やかな宴席の雰囲気を背景に、
「しんどかったですけど、6軒、契約を取ってきましたよ。熱が下がったら、快挙祝いしましょう」
と笑った。
ろ…6軒?!ありえねえ…。
「どこで?」
と聞くと、
「I村です。赤枠の窓の家ばかりを訪問した成果ですよ」
と言う。
「…あんな気味の悪いとこ、よく再訪したなあ」
と、半ば呆れると。

大月は、いつも以上に穏やかな声で、
「鬼が出る里だったにしても、あれほどの自然が残っている場所を好きにならない人はいないでしょう?」
と返して来た。



404:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/11/09(日)23:52:55ID:M8Ukg23i0
赤い枠 13/13

………たしかにそうだ。

昨日の夜、車を停めて里に入ったとき、山の稜線が重なり合う間から、遅い三日月が顔を出した。
水を張った田んぼが月光色に染まり、野生の菜の花が淡く色を添えていた。
…しばらく…見惚れたんだ…。
こんなところを見つけて住みついた人間に、嫉妬さえ感じた。

「どんなにすばらしい環境に住んでも、人間のやることなんてドロドロしているのかもしれないが…」
開拓民と先住民との確執を【鬼と犠牲者】というイメージで具現化した俺にとって、大月の言葉は、皮肉なしには賛同できなかった。
でも。
「…でも、俺、そういう側面を持つ人間だからこそ、関わることを楽しいと思ってるなあ」
厄介だが、それが本音だ。
大月は、
「オレも人間が好きですよ。だから、笹川さんも早く顔見せてください」
と労ってくれた。

うん。
なんだか、大月って本当にいいヤツだ。



引用元:【霊感持ちの】シリーズ物総合スレ6【友人・知人】
https://anchorage.5ch.net/test/read.cgi/occult/1223829762/392-404










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