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都市伝説・・・奇憚・・・blog

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ー検体ー <オオ○キ教授シリーズ>

2018.01.09 (Tue) Category : 創作作品

535:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/09/20(土)00:40:43ID:VsVHhltb0
検体 1/11

広島までの行程に備えて、車の整備をした。
今回は、なんだか、私がしっかりしないといけない気がする。
教授の、非業の死を遂げた身内に関わることなのだから。

…きっと、いつもみたいに平静な旅にはならないよね…?

出発の声がかかる前に、問題の甕を見せてもらいたくて、兄貴に頼んだ。
でも、
「駄目」
の一言。
未だに継続中の呪いが、どんなふうに跳ねるか、わからないからなんだって。

2週間ほど経って、鋭い寒さが少し和らいだ頃、教授から連絡があった。出発だ。
新幹線の車内に中国地方の駅名が流れ始めたとき。
私は、やっと、【運転手の自分】が今回の旅に必要なかったことに気づいた。

えー…。
教授、今度は私に何をやらせようと…?(汗)



536:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/09/20(土)00:41:32ID:VsVHhltb0
検体 2/11

電車内では教授といろいろな話をした。
いままでの、冒険じみた旅の話。
人間の生への執着と死への恐怖の強大さ。
死後も現世に留まる意識体(霊魂)が存在するのかどうか。

「妹さんが、もし、まだこの世を彷徨っているとしたら、教授は会いたいですか?」
と聞くと、
「ぜひ会いたいね。飢えて死んでいく気持ちを事細かに聞いてみたい」
と言われた。
やっぱり、教授の発想だ(汗)。

「そういうこと言ってると祟られますよ」
と忠言するけど、教授は楽しそうに、
「僕に降りかかるはずだった祟りは、すべて妹が受けてくれたからね。僕は長生きするよ」
と答える。
うちで身の上話をしていたときの神妙な様子は、完全に演技だったらしい…。



537:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/09/20(土)00:42:43ID:VsVHhltb0
検体 3/11

話の後半になって、問題の甕の出所について聞くことができた。
「あれは、元は、爆心地から1キロほど離れた寺院に祭られていたんだ」
教授の説明に、
「爆心地って原爆ドーム?」
と基本的なことから聞き直さなければならない私(汗)。
「そう」
教授は肯定する。
「ただ、原爆ドームに、直接、落下したわけじゃない。考えてごらん。太陽に匹敵するほどの高熱を発する爆弾が落ちたとしたら、建物の原型が残ると思うかい?」
「…」
そっか。
原爆の熱の威力って太陽並みだったんだ、と、改めて震撼する。
「実際の爆心地は、ドーム傍(そば)の相生橋で、地上に落ちる前に空中で爆発したらしいよ」
教授は補足した。

「その寺院で被爆した甕は、戦後の混乱期に盗難と売買を繰り返され、僕の家の蔵に納まった。いかにも古物だし、価値のあるものだと思われたんだろうね」
教授は甕の写真を見せてくれた。
黒ずんだ表面は気味悪く爛れて、【いわくつき】の雰囲気がありありと見て取れる。
「この溶けたような外見は、原爆で?」
と聞くと、
「たぶん」
との答え。



538:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/09/20(土)00:44:42ID:VsVHhltb0
検体 4/11

「僕の家の者は、誰も甕の出所を知らなかった。我が家には、古物商から説明された【呪い】の話が伝わっていただけだ」
「そんなものを、よく買う気になりましたね」
私は教授一家の【趣味】に呆れた。
教授は笑って言った。
「確かに自虐的な趣味だ」
でも、と続ける。
「僕も、一目見たときから、この甕に惹かれるものがあったんだ。理由はいまでもよくわからない。呪いに引き寄せられたのかもしれないな」
「その興味のおかげか、すぐに甕の破損と原爆を結びつけることができた。そして、広島と長崎の爆心地の、史跡、郷土資料館、寺社を回るうちに、広島のS寺で以前保管されていたという情報を得た」
「郷土史に興味を持ったのもこの頃だな。歴史には、遺しても忘れてもいけない事実が潜んでいるとわかったからね」

余談ながら、私は聞いた。
「歴史研究家になろうとは思わなかったんですか?」
だって、歴史に比べて郷土史の評価は、低いと思わない?
「すぐに、証拠を出せと色めき立つ連中を相手にするほど、時間の無駄はないと思わないかね?」
教授はつまらなさそうに愚痴る。
なんだか笑えてしまった。



539:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/09/20(土)00:46:01ID:VsVHhltb0
検体 5/11

「情報を得て、すぐにでもS寺に行って話を聞きたかったが、残念ながら、その直後に妹が死んだ。甕は厳重に蔵の奥にしまわれて、見ることさえできなくなってしまったんだ」
肩をすくめる教授。
そ、そんな反応でいいの?妹さん、可哀相じゃない?(汗)
「それから十数年が経って、蔵を仕切っていた僕の父が死んだ。ところが、また残念ながら、僕には甕を取り出せない理由ができてしまったんだ」
「えっと…」
ちょっとややこしくなってきたので、時間をもらって計算してみた。

教授は、いま60代前半。戦後生まれだと言ったから、62、63歳ぐらい。
妹さんが亡くなったのは、教授が20歳前後だから、いまから42、43年前。
それから10数年経って教授のお父さんが亡くなったんだから、これは30年ぐらい前のことなのね。で、教授は30代半ば…ぐらい?

「その理由ってなんですか?」
と聞くと、教授は複雑な顔をして、言った。
「僕に息子ができた。つまり、代替わりしてしまったんだよ。甕の呪いは、今度は息子が被ることになる」
「えっ?!」
私は、いろんな意味で、驚いた。
教授…奥さん、いたんだ…。
私の失礼な感想を、気づいたんだろうけど無視して、教授は続けた。

「僕にも人並みな感情があるんだと、あのときは感心したよ。息子に害が及ばないように、すぐに、住職の寺に甕を預けて供養を頼んだ」
「それで、息子さんは、いま…?」
と聞くと、教授は、少し困ったような顔をして、頭を掻いた。
「健在だよ。離婚した妻が連れていったから、何年も顔を見てないけどね」
「………」
…やっぱり…、って言っちゃ、ダメだよね(汗)。



540:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/09/20(土)00:47:25ID:VsVHhltb0
検体 6/11

広島駅を降り立ち、タクシーでS寺に向かう。
運転手さんの話によると、S寺は原爆で完全に焼失し、いまあるのは近年に建て替えられた物らしい。
運転手さん自身は年嵩でもなかったけど、土地柄か、戦前から戦後にかけての情報には明るくて、
「あの寺は行者さまが立ち寄られた所だそうで、原爆が落ちる前までは、境内に清水が湧き出る井戸があったんですよ」
と案内してくれた。

教授が、
「【行者さま】というのは修験道の開祖の役小角(えんのおづぬ)のことだな。彼は竜神の異名も持っていて、水の神としても慕われている」
と教えてくれた。

S寺は小さな寺だった。
お手水と本堂と、それから、脇に「御霊水の井戸」と書かれた祠がある。
確かに井戸ぐらいの大きさだけど、扉は締め切られていて、中は見えない。
教授は、すぐ隣にある民家に向かった。こういうこじんまりしたお寺は、住職さんがお隣に住んでいる場合が少なくない。

私は本堂の前で待った。
すぐに教授と、Tシャツにスラックスという普段着の住職さんが出てきた(笑)。
堂内に通してもらえたので、教授の隣りで、かしこまって話に耳を傾けた。



541:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/09/20(土)00:49:01ID:VsVHhltb0
検体 7/11

教授が甕の写真を見せる。
「こちらについて伺いたいのですが、ご存知ですか?」
住職さんは頷きながら、
「この甕は、実物は見たことがありません。戦前までこの寺でご供養差し上げていた物らしいのですが、そのときの住職は原爆で亡くなりましたので」
と答えた。
思わぬところで被爆者の末路を聞いて、私は、浮かれた気分が吹き飛んだ。

教授は、
「お気の毒さまでした」
と悼んで、続ける。
「この甕は、いま、僕が管理して、あるお寺に預けています。幸いにして呪詛の効果は現れていませんが、この寺では、どのようにしてお祭りをしていたんでしょうか?」

その質問に、住職は、
「この甕は水を強く欲するので、絶えず御霊水を注いでお慰めしていたようです。その井戸も、原爆でつぶれてしまいましたが」
と答えた。

そっか…。祠で覆ってあったのは、すでに井戸の形を成してないからなのね…。



542:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/09/20(土)00:51:04ID:VsVHhltb0
検体 8/11

教授はさらに踏み込む。
「この寺にあるとき、甕は、なにか災いを起こしましたかな?」
住職は笑って首を振り…。
でも、すぐに思い返して、声を潜めた。
「災いと言っても、戦時中のことでしたので」
と注記して、説明する。

「この甕を管理していた先々代の住職は、先ほども言ったように、原爆で一家すべて亡くなりました。寺に縁のあった先代の住職が、その惨状を目にしたのは、投下から3日後のことだったと言います」
「先々代とそのご両親は焼け焦げ、修行中だった息子さんは、身重の奥様を引きずりながら、御霊水の井戸まで辿りついて息絶えていたようです」
「奥様は家の中にいらっしゃったのか、ガラスの破片で背中に大怪我をなされていました。先代の住職の呼びかけには一言、二言、応えられたそうですが、その後は、ただ、『水が欲しい』と言って、事切れました」

………。
私は…。
原爆って、ただの歴史だと思ってた。
遺物だと思ってた。

「『水が欲しい』ですか…」
教授は考え込んでいるようだった。
甕は餓死を誘うらしいけど、関係あるの…?



543:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/09/20(土)00:52:32ID:VsVHhltb0
検体 9/11

「ここからは、あまり話を広げないようにお願いします」
住職はさらに小声になった。
「私自身、この話をどこまで伝えていいものか迷っているのですが、身に納めておくのも心苦しいので」
と、本音を吐露し、教授と私に【悪夢】を伝授する。

「先代の住職が、焼け野にご遺体を並べて供養していたとき、米兵が寺に来て、安置してあったご遺体の中から奥様を連れて行ったそうです」
「…それはどういう意味ですかな?」
教授は眉をひそめる。
「よくはわからなかったそうですが、米兵たちは盛んに『サンプル』と言っていた、ということです」
と、住職の返事。

私も意味がわからなくて、教授の顔を見た。
教授は、少し怒っているのかもしれなかった。
「つまり、被爆者の検体として、奥方が選ばれたということですな」
初めて聞く怖い声だった。
「そう思っております。奥様は…いまもこの日本には帰ってきていないのかもしれません」
住職は抑揚のない声で答えた。



544:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/09/20(土)00:56:23ID:VsVHhltb0
検体 10/11

寺を出るときまで把握できていなかった私に、教授は、ゆっくり歩きながら説明してくれた。
「原爆は、なぜ投下されたと思う?」
「えっと…第二次大戦を終わらせるため…ではなかったのですか?」
答えてから、どこかの政治家が同じことを言って非難を浴びたことを思い出した。
「威嚇という説もある。むしろ、米国はそう主張してきた。だが、それだけじゃない」
教授は断言する。

「原爆の技術はドイツからアメリカに渡って来たが、開発計画はずっと秘密裏に行われてきた。マンハッタン計画…と言ってもわからないか」
笑われたけど、わからないものはわからない。首を横に振る。
ただ、
「威嚇目的なら、すごい兵器を保有していることは、むしろ公にするのでは?」
という私の意見は、的を射たようだ。
「そう。原爆の威力は、すでに日本でもSF的な知識で知れ渡っていたから、敵対国が持っていると知れば、たやすくパニックになっただろう」
教授は肯定して、
「でも、アメリカはその手段を取らなかった」
と続ける。
「原爆がどんな効果をもたらすのか。それを知るためには、どうしても実戦で使う必要があったからだ。広島の街と人民は、アメリカの興味本位の検体にされたんだよ」

私が教授の怒りの意味を本当に知るのは、この後、広島の街を回って、原爆の実態を知ってからだった。
けれど、筆舌に尽くしがたいので、それは割愛する。



545:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/09/20(土)00:58:27ID:VsVHhltb0
検体 11/11

「でも、教授…」
寺をはるかに後にしてから、私は思い出して、教授に伝えた。
「甕のこと…【呪い】とは、なんとなく関連付けられましたけど、このお寺に来る以前の軌跡は聞いてこなくてよかったんですか?」

暗い表情で考え込んでいた教授は、ぱっと顔を上げて、頭を掻いた。
「忘れてたよ」
そのまま踵を返して、住職の家を再訪問する。

やっぱり、私、ついてきてよかった…(汗)。



引用元:【霊感持ちの】シリーズ物総合スレ5【友人・知人】
https://anchorage.5ch.net/test/read.cgi/occult/1219147569/535-545









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ー甕ー <オオ○キ教授シリーズ>

2018.01.06 (Sat) Category : 創作作品

500:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/09/15(月)23:00:19ID:1TVHnl7i0
甕 1/8

空気の冴え渡る極寒の頃、兄貴が教授を連れて家に来ることになった。
久しぶりの訪問に、父と母は目を輝かせる。
…この人たちは、教授の本性を知らないから(汗)。

玄関先まで迎えに出たのは、母と私。
振る舞いの上品な教授は、最初の訪問から、母を虜にしていたようだ。
「お父さんより魅力的」
と、はるかに老いた教授と較べられる父…立場なし…。

母の誘導で土間から家に上がりこんだ教授は、狭い廊下の脇によけていた私に、
「今度は少し遠出をしよう」
と告げて、先に進んだ。
「蕎麦はもういいですよ」
教授の後ろから、軽口を叩きながらついていこうとした私。

でも、そこで足が固まった。



501:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/09/15(月)23:01:13ID:1TVHnl7i0
甕 2/8

教授の背中に、長い髪の【何か】が張りついてる。のが見える。
裸の女性の後姿にも見えるけど、体型が異様…。細い。とにかく痩せている。
骨格標本に皮が張りついているみたい。

肌の色は、死人のように土気色だった。
教授の動きに合わせて、操り人形のごとく、くらくらと揺れる。

「何してんだ?」
最後に入ってきた兄貴が、立ち止まった私の後ろから、能天気な声をかけてくる。
私は兄貴を玄関に押し戻し、母と教授に聞こえない小声で聞いた。
「見えた?兄貴、見えた?」
「は?」
見かけは織田○道みたいなくせに、兄貴は全然気づいてなかったらしい。

でも、
「教授の後ろに、餓鬼みたいな人が…」
と私が教えると、心当たりがあったようで、
「ああ。ついてきたのか」
と、あっさり認めて、さっさと居間に行ってしまった。

厄介なモノを連れてくるのは、教授だけにしてよ~。



502:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/09/15(月)23:02:00ID:1TVHnl7i0
甕 3/8

居間の座卓に全員が座ったときには、教授の後ろのアレは見えなくなっていた。
それでも、ビクビクしながら酒を注いだりしてたけど、父と兄貴が、例によって羽目を外し始めた頃には気にならなくなった。

「最近はどの辺りを勉強してみえるんですか?」
父が鼻の頭を赤くして、はしゃぐ。
田舎の農家の次男坊だった父には、こういう学問的な話に触れることが、自分のステータスを高めることにもなっているらしい。

「興味があるのは東北ですが、まだお話できるような成果にはなっていませんね」
教授も、この環境の中では、穏やかな笑顔ができるみたい。
「今度は東北行き?」
私が尋ねると、
「広島だよなあ、教授?」
と、すっかり出来上がってる兄貴が口を挟んだ。
「そうだね。そちらが先だ」
教授も相槌を打つ。

母が兄貴に、
「教授に向かってなんですか、その口のききかたは」
と叱った(笑)。



503:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/09/15(月)23:03:04ID:1TVHnl7i0
甕 4/8

「広島というと、まさか原爆ですか?」
父の言葉に、私は内心で(郷土史と戦争は関係ないでしょ)と突っ込んだけど、教授は、
「ええ。それがらみです」
と肯定した。
「原爆で被災した【ある道具】の出所を調べたいと思いまして」
「それが、回りまわって、いま、うちの寺にあるわけ」
兄貴が付け加える。

兄貴の話に因ると、それは小さな甕(かめ)らしい。
水入れとして使ったもののようだけど、いまではひび割れて、保水力を失っている。
兄貴のお義父さん、つまり先代の住職、が存命のときに、教授が寺に持ち込んだものだ。
教授はそれを【呪具】だと紹介した。

「呪いがかかってる…って、ことですか?」
私が確認すると、教授と兄貴が同時に、
「そうだよ」
と、返事をした。
「あの甕は、水を欲しながら得られず、飢えて死んでいった人間の魂がこもってるんだ」
教授は、たぶんサービス精神なんだろうけど、わざと陰にこもった声で続ける。
父も母も、兄貴さえ、その暗い雰囲気を楽しんでいるようだった。

でも、私は笑えない。だって。
…さっきのアレは、じゃあ、その呪具からとり憑いてきたモノなの?



504:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/09/15(月)23:04:22ID:1TVHnl7i0
甕 5/8

その甕は陶器質のものであるらしい。
【質】というのは、陶器としては完成されていない、土器と陶器のあいのこみたいな質感だから、なのだそう。
そうすると、かなり古い年代の物ではないかと勘ぐるけど、教授は、
「古墳時代までは行っていないでしょう。せいぜい遡って、奈良時代」
と答えた。
それでも、学術的には価値が高いんじゃないの?

「僕の実家の蔵にあったものでね」
酒に強い教授は、それでも少し酔ったのか、身の上話を始めた。
「由来も何もわからないんですが、代々、こんな呪いの話が語り継がれているわけです」
「我が家には一代に1人は狂人が生まれるのだとか。そして、こっそりと隠される…つまり、家族の手で葬られるわけですな」
「僕の世代には僕と妹がいるのですが、どう見ても、狂人資質なのは僕だ。だから、僕自身、粛清される自覚があったんです。でも」

そんな話をしている間も笑みを絶やさない教授だったけど、次の言葉は、少し、表情を翳らせてた。
「残念ながら、選ばれたのは僕ではなく、僕の妹でした」



505:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/09/15(月)23:05:00ID:1TVHnl7i0
甕 6/8

話の途中だったけど、私は席を離れた。
見える…。
教授の後ろの【餓鬼】が、教授の肩口にのしかかりながら、顔を上げようとしているのが。
…見たくない。

台所で塞ぎこんでいると、兄貴が顔を覗かせた。
「酒の追加を持ちに来た…って、何やってんの、お前?」
坊さんのくせに何も気づかない兄貴に八つ当たりした。
「教授の後ろにくっついてるあれは何なの?!兄貴、本当に見えてないの?!!」
兄貴は…困ったように首をかしげる。
「うん。まったく見えてない」
「もーっ!!!」
怒りを通り越して、呆れた。



506:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/09/15(月)23:06:48ID:1TVHnl7i0
甕 7/8

「それ、たぶん、教授の妹さん」
兄貴は、私の正面のテーブル席を確保し、ほお杖をついて、話し始めた。
「教授の妹さんは、10代の頃に家を出て独り暮らしを始めたんだ。理由はよくわからないけど」
「家を出てからはほとんど音信不通。教授も、自分の性格に負い目があったもんだから、会いに行ったことはなかったらしい。…つまり、妹さんが家を出た原因が自分にあると思ったんだな」
「ところが、元気にやっていると思った妹さんは、アパートで餓死した。就職先を解雇されて、収入がなかったんだ」

にわかには信じられない話だった。
でも、兄貴の補足で、なんとなく納得はした。

「いまも生活苦は他人事じゃない時代だけど、教授の若い頃は高度経済成長の真っ只中だ。世の中が豊かになっていく一方で、切り捨てらた人たちは、少数ながら、いたんだよ」

まるで贄だな、と思った。
多くの人間が裕福に満たされるための、犠牲…。



507:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/09/15(月)23:07:56ID:1TVHnl7i0
甕 8/8

兄貴に促されて席に戻った。
教授の背中には、まだアレがいたけど、誰も気づいていないようだ。
兄貴が、教授に追加の酒を注ぎながら、言う。
「あの甕さあ、ときどき喋るんですよ。中身は聞き取れないんだけど、もんのすごくやかましい」
教授が興味深そうに聞く。
「それは1人の声かね?」
兄貴は笑いながら答える。
「いえいえ。代々の呪いの継承者が集まってるから賑やかですよ」
そして、自信ありげに付け加える。
「そのうち、みんなまとめて成仏させますから、まあ、安心しててください」

その瞬間、教授の妹さんの姿は、淡くなって、消えた。

家族には、
「大口を叩くな」
と馬鹿にされた兄貴だけど、案外頼りになるのかもしれない。
なんて思った。



引用元:【霊感持ちの】シリーズ物総合スレ5【友人・知人】
https://anchorage.5ch.net/test/read.cgi/occult/1219147569/500-507









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ー番外編(高校生)ー <オオ○キ教授シリーズ>

2018.01.05 (Fri) Category : 創作作品

454:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/09/11(木)23:53:44ID:Zf/BtvQm0
番外編(高校生) 1/9

長い話ばかりで恐縮しているのと、兄貴編を書いてみたくなったので、サイドストーリーを投下します。
教授は出ません。郷土史もありません(汗)。

運動系は得意なほうだったけど、特に頭が良かったわけでも、経歴のスペックがあったわけでもない。
なのに、中学、高校と、つけられたあだ名は【アニキ】だった。
同級生からも、なぜか上級生からも。

当時、まだ小学生だった妹は、最初は可愛く、
「お兄ちゃん」
と呼んでくれていたんだけど、俺の悪友たちに感化されて、すぐに、
「ダメ兄貴」
が代名詞の定番になった(泣)。

そんな時代の話。



455:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/09/11(木)23:54:32ID:Zf/BtvQm0
番外編(高校生) 2/9

俺の一学年上に、名高、という先輩がいた。
高校時、俺は陸上部と心理学研究会という眉唾なクラブに所属してた。
名高先輩は、その陸上部のほうで世話になった人だ。
おとなしくて気弱な性格だったけど、考えなしに行動する俺を絶妙にサポートしてくれたりして、意外と頼りになる先輩だった。
そして、足は抜群に速かった。

名高さんが3年に進み、クラブにも出てこなくなって疎遠になった頃、妙な噂を聞いた。
「受験ノイローゼらしいよ」
彼は、見るからに厳しい家で育てられてるといった内向的な雰囲気を持っていたから、プレッシャーがきついことは、簡単に想像ができた。

気になって、話を聞きにクラスまで行ったこともあったけど、要らん世話を焼く周囲に、
「あんまり関わらないほうがいいんじゃない?」
と押しとどめられて、結局、声をかけることもなく放置してしまった。



456:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/09/11(木)23:55:05ID:Zf/BtvQm0
番外編(高校生) 3/9

もう肌寒かった10月の半ば。
深夜まで漫画読んで遊びほうけていた俺は、なんとなく視線を感じて、2階の部屋の窓から眼下を覗いた。
名高先輩が立ってた。影が異様に薄かった。
俺はすぐに玄関を飛び出して、先輩が立っていた位置に行った。
けど、もう痕跡はない。

先輩の存在が消滅するイメージが繰り返し浮かんだ。
焦ってあちこちを探すと、俺の家から一区画目にある信号の交差点を、左に折れる影が見えた。
家のほうから、お袋の呼び止める声が聞こえたので、
「すぐ帰るからっ!」
と返事をして、俺は先輩を追った。



457:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/09/11(木)23:55:56ID:Zf/BtvQm0
番外編(高校生) 4/9

尻尾を捕まえる、という言葉があるけれど、まさにそんな感じで、俺は、先輩の影という尻尾を追った。
もうちょっと真面目に走りこんどきゃ良かった。全然追いつけねえ。
汗だくになりながら着いた先は、学校だった。
寒気がするほどの不安が襲ってくる。
息は完全に上がっていたけど、頭は冷静になれた。冷静にならないと【間に合わない】と思ったから。
校門をよじ登って、校庭に忍び込む。

闇に包まれた校舎は不気味で、ガキだった俺は、足がすくんだ。
先輩の影はどこにもない。学校に入ったのかどうかも定かじゃない。

でもさあ。
真夜中に、音信の途絶えてる俺の家に来るぐらいなんだぜ?よっぽど思いつめてなきゃ、やらないよな。
ノイローゼの人間が、最期の場に選ぶのは、自宅か学校ぐらいじゃないのかよ。

鍵がかかっているだろう昇降口を避けて、俺は、教室棟の脇にある、螺旋状の非常階段を上り始めた。



458:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/09/11(木)23:56:55ID:Zf/BtvQm0
番外編(高校生) 5/9

階段は、安全基準なんか気にも留めないという造りで、中央部は、最上階から地面まで吹き抜けている。
腰までの手すりはついているけど、そんなもんは簡単に越えられる。
先輩…、まさか、上から降ってこねえだろうなあ(汗)。
振り仰いでも、上部は、鉄階段の底に阻まれて見えなかった。

4階部分に到達して、いよいよ最上階の5階に着こうとしていた俺は、落ちてくる先輩を受け止めるイメージトレーニングに集中していた。

だってな、この先は屋上に到達するしか道がない。
俺が無駄足を踏んでいるんじゃなかったら、先輩は屋上か、階段の上部にいるはず。
螺旋の上から、ひょいっと先輩の顔が覗きそうな気がした。
「…俺、来てますよ…」
思いとどまってほしくて、ビビリながらも声をかけた。



459:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/09/11(木)23:57:30ID:Zf/BtvQm0
番外編(高校生) 6/9

そしたらさ。おかしいんだよ。
螺旋階段の下のほうから、カンカンと金属を踏み鳴らすような足音が聞こえてきたんだ。
吹き抜け部分に顔を出して確かめると、3階辺りに足が見えた。
な…なんで先輩のほうが下にいるんだよ?!抜いてきたわけもないのに…。

足は下方に向かっている。
俺も方向転換をして、足を追った。
相変わらず早い。距離を離される。
焦る。なぜかわからないけど、思う。
【あの足が地面に下りる前に捕まえないと】



460:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/09/11(木)23:58:17ID:Zf/BtvQm0
番外編(高校生) 7/9

俺が2階あたりまで下りたとき、先輩は、すでに地上まで数段を残すのみだった。
俺は何も考えずに手すりを越え、吹き抜け部分から下に飛び降りた。

地面までは長かった…。

足裏と足首と膝に、思いがけない衝撃を感じて、悲鳴が出た。
でも、うずくまる前に、階段の出口を塞ぐことができた。
あと1段を残して地面に下りきらなかった先輩は、驚いた顔をして、足を止めた。

その瞬間、すぐ脇の植樹の並木から、盛大な音がして。
屋上から飛び降りたらしい先輩の体が、小枝まみれになりながら俺の目の前に落ちてきた。



461:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/09/11(木)23:59:05ID:Zf/BtvQm0
番外編(高校生) 8/9

携帯を常備する時代じゃなかったから、救急車を呼んでくれたのは、俺の叫び声を聞いて集まってくれた近所の人たちだった。
木がクッションになったのか、先輩は、俺の呼びかけに答えるぐらい元気で、隣りに座り込んでた。
「なんでお前がいるの?」
と聞かれたけど、
「バカヤロー」
としか答えられなかった。

でも、後々まで一番の謎とされたのは、まったくの部外者だった俺が、自殺未遂をした先輩の横で、捻挫で動けなくなっていたことだったらしい。



462:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/09/11(木)23:59:45ID:Zf/BtvQm0
番外編(高校生) 9/9

後に住職になった俺は、妹にそのときのことを話し、
「死に急ぐ人間の信号をキャッチしたいから、俺は坊さんになろうと思ったんだよ」
と説明した。
でも、妹は、
「兄貴、キモイ」
と、冷めた対応をしただけだった…。



引用元:【霊感持ちの】シリーズ物総合スレ5【友人・知人】
https://anchorage.5ch.net/test/read.cgi/occult/1219147569/454-462







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