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都市伝説・・・奇憚・・・blog

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2024.04.21 (Sun) Category : 

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女子大の図書室にて

2020.08.31 (Mon) Category : 創作作品

110:本当にあった怖い名無し:2007/05/23(水)21:38:23ID:vAulcjdE0
私が住んでいるのは、日本海側の古くは漁業で栄えた港町です。
規模はそれほど小さくなく(一応市です)それでいて、今はもう鄙びた寂しい街でした。
現在は大学を卒業し、市内の銀行に勤めている私ですが、ある休日、お付き合いしている女性と遊んでいると、その女性は大学に忘れ物をしたらしく、私は車でその大学まで彼女を送りました。

市内には幾つかの大学があるのですが、そこは小さな女子短大でその始まりは大正時代まで遡れるとの事でした。
私は女子大が珍しく、彼女と一緒に入って行って、図書室などを散策しておりました。
とても古びた図書室で、多くの本は埃を被っており、あまり使われている気配は御座いませんでした。

ふと、本棚と本棚の間に人一人が無理をすれば入れるような隙間が空いており、その隙間の後ろには更に本棚が並んでいるようでした。
私は生来、本などが好きなこともあり、古い本があるのかなと、無理をして身体をその隙間に押し込め、奥に入りました。
小さなステンドグラス(基督のような…なんとなく初期ゴチックを感じさせる陰鬱のものでした)から紅い光が差し込んでおり、何だか不気味に思いました。

そういえば、休日だからか、その学内にも図書室にも人の気配はまったく感じませんでした。
案の定、私が考えたとおり、そこには幾つかの本棚がありました。
ただ、思ったより埃などは被っておらず、綺麗な事が不思議に思われました。

その本棚には英語の本や独逸語の本、露西亜語の本などがあり、正直英語の本もぐねぐねとした筆記体で私にはタイトルを読む事も出来ませんでした。
そういえば、この大学の創業者はアメリカ人で市の漁業関係者でとある篤志家が基金し、その大学が出来たと、何かで聞いた憶えが御座います。

私は自身の無知を悔やみながらも、本を手に取りぱらぱらと捲っておりました。
ふと、ラテン語?(恐らくその音韻…umとあったので、ラテン語だと思います)の本が御座いました。
それは不思議な豪華な本で皮のようなもので表紙をあしらっており、装飾も蔦が絡まっているような、海藻が絡まっているような、全体で見ると何処か魚類を思わせる、そんな装飾で御座いました。



111:本当にあった怖い名無し:2007/05/23(水)21:39:46ID:vAulcjdE0
それを手にして捲ろうとした瞬間、駄目という叫びと共に、その本は取り上げられておりました。
私が夢中になっていたのか、何時の間にか私の後ろに居た彼女が怒ったような、少しだけ怖いような表情を浮かべており、私は戸惑いました。
彼女はその本を本棚にぐっと押し込むと、私の手を取り、何も言わず、図書室を出て、結局、車に戻るまで、何も言葉を発しませんでした。

車に戻り、私はどうしたという問いを発すると、彼女は何だか震えているようでした。
私は気まずく、勝手にふらふらと大学内を歩いた事を詫び、車を走らせ大学を後にしました。
その日は何だかしっくり行かず、食事の後、彼女を家に送ったのですが、その際、絶対に誰にも大学に入った事、図書室に行った事などは口外しないようきつくきつく言い含められました。
私も女子大にふらふらと入ったと言う負い目もあり、それを承諾し、その日はそれで終りました。

私はあのラテン語の本は何だったのだろうとぼんやりと考え、ネットで調べたり、ラテン語辞典で調べたりしましたが、それらしい言葉は見つからず、造語かなとも考えました。
私の祖父はその年代の人間には珍しく、独逸に留学し、現在も色々と本を読んでいる博識家なので、ある日、祖父にそれとなく、ラテン語のその言葉を知っているかと問いました。

その瞬間、祖父は青褪め、そんな言葉は知らないと、普段の祖父からは想像出来ない強い口調で否定し、続けてその言葉を何処で聞いたかと私に問いました。
私は彼女との約束もあり、言葉を濁し、いやネットで見たんだけどと話すと、ほっとしたように、祖父は口調を和らげ、
「見たのでないなら良い」
とぽつりと口にしました。
本当は私はその本を手に取り、『見た』のですが、何だか口に出来ませんでした。

それから私の身の回りでは色々な事が起きました。
それから一月ほど経った竜宮祭の時期に、彼女は自ら命を絶ちました。
その遺書には「我が神に捧ぐ」とだけあったそうです。
それ以来、私は仕事が終ると、海に行き、ぼぅっとしております。
それ以外、出来ません。
そうして、私自身、何となくですが、海に還りたい気がするのです。
そろそろ、私の番かもしれません。
それでは、失礼致します。



引用元:死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?166
https://hobby9.5ch.net/test/read.cgi/occult/1179548777/110-111





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ムーンチョコ

2020.08.29 (Sat) Category : 創作作品

55:全日本老人生活短歌連盟:2020/08/14(金)23:00:36.86ID:nFyibxWp0.net
すげえ長文の創作でもいいか



63:本当にあった怖い名無し:2020/08/15(土)00:55:07.69ID:9WuvRWi90.net
>>55
いいよ創作でも!!大歓迎よ!!



65:本当にあった怖い名無し:2020/08/15(土)01:17:43.67ID:y3BXYe+r0.net
じゃあこの時間帯ならいいか
言っとくがすげえ長えからな



81:本当にあった怖い名無し:2020/08/15(土)01:59:46.95ID:y3BXYe+r0.net
じゃあサービスでもう一つ
これも長い



82:1/11:2020/08/15(土)02:01:00.79ID:y3BXYe+r0.net
あ、これな、もう50年近く前になる古い話なんだ。仮面ライダーのカードって知ってるよな。
スナック菓子についてるおまけのカードで、男の子どもらが競って集めた。
カードの1枚1枚に番号がついてて、その新しいのを持ってるやつがスゴいってんで、小遣いのほとんどをつぎ込むやつがいたし、遠くの町まで遠征して買いに行くやつもいた。

スナックそのものはすげえマズかったから、食べずに袋のまま捨てる子が多くて、もったいないってことでPTAで問題にされ、社会現象にもなった。ちょっと調べたんだよ。
あのスナックが発売されたのが、仮面ライダーが放映された年で1971年。
俺がこれから話すのは、その1年ほど前のことだ。
ライダーカードとは直接の関係はねえよ。



83:2/11:2020/08/15(土)02:02:02.39ID:y3BXYe+r0.net
でな、俺は流行ってたときに、ライダーカード集めてないんだ。
だから仲間はずれにされたりもしたが、気味が悪くってダメだった、カードがトラウマになってたんだな。
なんでそうなったか、その理由を今から話すんだよ。5年生のときだ。

俺は当時、川崎のほうに住んでた。
今でこそ少しはきれいになったが、昔はなあ、工業地帯の真ん中で、大中小の工場が立ち並んでてな。

海なんかありえない色をしてて、ヒドい臭いだったな。
で、俺はそこの商店街の通りに家があった。
いや、俺の家は工場じゃなく、親父は郵便局に勤めてたから。
あの頃はゲームなんてなかったから、子どもはみんな外で遊んでた。
公園とかでボール使っても、そこまでうるさく言われることもなかったし。



84:2/11:2020/08/15(土)02:03:03.49ID:y3BXYe+r0.net
あと、あちこちに駄菓子屋があった。
5円とか10円で買えるものがあったし、くじがついてて、当たればもう一個ってのも多かったな。
で、小学校の学区にある駄菓子屋は全部知ってるつもりだったんだが、いつも遊んでる同学年の木田ってやつが、
「新しい駄菓子屋見つけた」
って学校の帰りに言ってきた。
「そんなのねえだろ」

「あるんだよ、これから行こうぜ」
ってことで、ランドセル背負ったまま木田についてった。
通学路から外れて運河の橋をわたり、ゴミゴミした中小の工場街に出た。

あちこちからギーギーガンガン、何かを加工する音が聞こえてくる。
「こんなとこに駄菓子屋なんかねえだろ、子どもなんて来ないとこだ」
俺はそう言ったんだが、木田は先に立ってずんずん歩いて、金属と薬品の臭いのする小路に入ってった。



85:4/11:2020/08/15(土)02:04:04.46ID:y3BXYe+r0.net
たぶん溶接とかメッキをやってたんだろう。
で、
「あれだ」
って指差した先に、「◯◯発動機」って看板が見えたんだ。

「駄菓子屋じゃねえじゃん」
バラックみたいな建物だったが、まだそういう家はけっこうあった。
そこはガラス戸4枚分くらいの店で、下がコンクリ。中は3分の2が工場みたいで、いろんな部品や工具があって、自動車の半分くらいもあるでかい機械が見えた。

その店の右側の壁に、たしかに駄菓子が積み上げてある。
くじとか酢イカ、ふ菓子とかどこにでもあるようなのが申しわけ程度に。
ああ、ツマンねえと思った。こんな30分もかけて歩いてくるようなとこじゃねえ。

「いや、ここにスゲえ菓子がある」
木田はそう言い、機械のそばにしゃがみこんでる大人に、
「また来た。ムーンチョコおくれ」
って話しかけた。そしたらその人がふり向き、



86:5/11:2020/08/15(土)02:05:05.37ID:y3BXYe+r0.net
顔を見て驚いた。金属のお面をつけてたんだ。
当時はわからなかったが、溶接のときに火花が目に入らないようにするやつだ。
その人が立ち上がると、小学5年の俺らより少し大きいくらいしかなかった。

くぐもったような声で
「あいよ」
と言い、棚にある金属の缶を開けた。
「ムーンチョコ2つ」
と木田が言って40円出した。

するとその人は、
「ほら」
と缶の中から銀紙で包装した10cmくらいのを出して木田に渡したんだ。
「これがスゲえうめえから、お前も買え」
いったん外に出て見せてもらったが、メーカー名とか何もついてなくて、ただ青い字で「ムーンチョコ」とだけ書いてある。

木田はせわしなく銀紙を破ると、中のカリントウ型のチョコの半分を俺にくれた。
半信半疑で食ってみた。そしたらなあ、これがほんとうにうまかったんだよ。



87:6/11:2020/08/15(土)02:06:12.19ID:y3BXYe+r0.net
いや、いまだにあんなの食ったことがねえ。
チョコの中にどろっとした液体が入ってて舌がとろけるみたいだった。
「こりゃスゲえ」
と思い、俺も2個買った。
で、むさぼるように食ったんだよ。

木田は食いおわって包み紙を開き、手のひらの上に何か青い切手みたいなのを2枚載せ、1枚ずつ日に透かして見てる。
「何だよ、それ」
「くじのカードだよ、こうやって月の景色が見えれば当たりなんだよ。な、おじさん」

鉄のお面のおじさんは僕らを見てうなずき、
「そう、当たりが出れば月の世界にご招待」
なんて言うんだ。俺も自分のに入ってたのを透かしてみたが、ただの青いセロファンだったな。
それから俺は、おじさんがいじってった機械に興味を持ち、
「それ何?」
って聞いてみた。

そしたら、
「宇宙船だよ。もうほとんどできてるんだが、まだ心臓部がない」



89:7/11:2020/08/15(土)02:07:21.58ID:y3BXYe+r0.net
そう言って、機械の中央部分を手袋の手で指した。
その部分だけ金属じゃなくて、丸い、うす青いガラスのボールがついてた。
バスケットボールよりやや大きいくらいだな。
「これが心臓部?」
「そうだ」
でも、宇宙船はさすがに冗談だと思った。
あの頃の小さい自動車の半分くらいで、人が乗れそうなスペースはなかったから。

おじさんは続けて、
「ムーンチョコおいしいだろ。外国から取り寄せてるんだ。ボクたちの学校でも友だちに教えてあげてよね」
って。
それから帰ったんだが、道々、木田と
「ありゃすげえ菓子だ。外国製ってのは本当だろうな。明日から毎日こよう。仲間を連れてこようぜ」
そう話し合った。

翌日、さっそく木田と2人連れて行ってみた。で、全員が3個ずつムーンチョコを買って食ったが、みな大感激してな。
「小遣いが続くかぎり買いに来る」
って言った。



90:8/11:2020/08/15(土)02:08:24.48ID:y3BXYe+r0.net
うん、仲間はどんどん増えて、20人くらいが毎日駄菓子屋に行ってた。
ムーンチョコが売り切れるのを心配したが、おじさんが缶をつぎつぎ奥から出してきた。
あと、組み上げてる機械はだんだん完成に近づいてるみたいで、あっちこっち出っぱってた部分が滑らかになってきてた。
それから1週間後くらいかなあ。そのときも10人ほどが駄菓子屋にいた。

そしたら藤島ってやつが大声で、
「ああ、月の景色だあ!」
って叫んで、あのおまけのカードを見てたんだな。
俺はそばにいたんで、
「見せてくれ」
ひったくるようにして透かしてみたが、やっぱただの青いセロファンだった。
「嘘つくなよ」

俺がなじると、おじさんが、
「ボク、月の景色ってどんなだった?」
と聞き、藤島は勢い込んで、
「アメリカの旗が立ってた。アポロのやつ」
って答えた。するとおじさんは、
「ああ、当たってる」



91:9/11:2020/08/15(土)02:09:28.29ID:y3BXYe+r0.net
そう言って、藤島に名前と住所を紙にメモさせた。
後で景品が自宅に送られてくるってことみたいだった。
で、その翌日の朝だ。

まだ夜が明けてない5時ころ、藤島が自宅から離れた湾岸道路にいて、ひき逃げにあって死んだんだよ。
トラックだったみたいで、体がバラバラになってたそうだ。
残念ながら目撃者はなかったが、そこを通る大型車は限られてるし、犯人はすぐつかまるだろうって、うちの父親が言ってた。

このことを担任から聞いたときはショックだった。
けど、その日の放課後もあの駄菓子屋に大勢で行ったんだよ。
ムーンチョコの中毒みたいになってたのかもしれん。
けど、店の戸がぴったり閉じられてて、ガラスには黒い紙がはってあり、
「閉店しました。ごめんなさい」
って札が下がってたんだ。
そこに来た全員、藤島が亡くなった知らせを聞いたときよりショックを受けた。



92:10/11:2020/08/15(土)02:11:10.42ID:y3BXYe+r0.net
もうムーンチョコが食えねんだから。
やっぱ中毒みたいになってたんだな。あと、藤島の葬式がなかなか行われず、それは遺体の頭が見つかってないせいだって噂が流れたんだ。
結局、5日ほどたって葬式があり、同じクラスで仲が良かった俺も行ったよ。

でな、俺はムーンチョコがあきらめきれず、それからも毎日その駄菓子屋に行ってみたが、ずっと閉まったまま。10日目くらいかなあ、

今日で最後にしよう、そう思って一人で出かけた。
そしたら、店の中が何か光ってるみたいで、ガラスにはった黒い紙がときどき白くなる。
何だろう?
黒い紙の下のほうにわずかなすき間があるんで、俺ははいつくばり、そっから中をのぞき込んだ。・・・あの機械が見え、バッバッと光を発してた。でな、・・・前に機械の真ん中にガラスのボールがあるって言ったろ。そん中に人の顔があったんだ。
藤島だ!と思った瞬間、顔が目を開けた。
俺は後も見ずに逃げ出したよ。



93:おわり/11:2020/08/15(土)02:12:11.73ID:y3BXYe+r0.net
いや、せまいとこからちらっと見ただけだから、見間違いだろうと思う。
そんな馬鹿なことがあってたまるわけがねえ。
それから2週間ほどして、おそるおそるまた行ってみたが、店の建物そのものがなくなり、針金で囲まれた空地になってたんだ。

あと、藤島を轢いたトラックはいつまでたっても見つからなかった。
あれから50年になるから、とっくに時効だ。

まあ、こんな話なんだよ。
それと、これは関係あるかどうかわからねえが、そのあたりの時期に、港に近いとこの化学工場で爆発が起きて、夜が昼間みたいに明るくなったことがあった。死傷者はいなかったみたいだが。
でな、俺はどうしても、藤島の死と、やつが月の風景の当たりを引いたことをつなげて考えてしまってなあ。

だから、流行ってたときも、仮面ライダーのカードは買わなかったんだよ。



94:本当にあった怖い名無し:2020/08/15(土)04:12:15ID:4pTc4SZUO.net
>>93
乙でした!!
二つとも、面白かった
文才あるな
是非また書いてくれ



96:本当にあった怖い名無し:2020/08/15(土)09:57:00.83ID:gctxG9bu0.net
>>93
乙!
面白かった




引用元:死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?360
http://toro.2ch.sc/test/read.cgi/occult/1597272376/55-96





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山中くんと地蔵様

2020.08.28 (Fri) Category : 創作作品

55:全日本老人生活短歌連盟:2020/08/14(金)23:00:36.86ID:nFyibxWp0.net
すげえ長文の創作でもいいか



63:本当にあった怖い名無し:2020/08/15(土)00:55:07.69ID:9WuvRWi90.net
>>55
いいよ創作でも!!大歓迎よ!!



65:本当にあった怖い名無し:2020/08/15(土)01:17:43.67ID:y3BXYe+r0.net
じゃあこの時間帯ならいいか
言っとくがすげえ長えからな



66:1/12:2020/08/15(土)01:18:52.34ID:y3BXYe+r0.net
これ、俺が小学校4年のときの話。今から15年前のことだよ。
当時、山中って子とよく遊んでたんだ。その頃も、子どもの遊びっていったらゲームだったんだけど、その山中ってやつは、親が許してくれないってんでゲーム機持ってなくて、そのかわり、外で遊ぶことをいろいろ知ってたんだ。

例えば、拾った木の棒でノックするみたいにして石を打って、小川の向こうまで10回のうち何回飛ばせるかとか、そういうやつ。

山中とは、4年生の新しいクラスで知り合ったんだけど、俺はずっとゲームっ子だったから、そういうのが新鮮で面白かったんだよな。
あと、山中は遊ぶ場所もいろいろ知ってた。例えば、河口に下水が流れ出す出口とか。
3m以上高さのある土管なんだよ。そこに、水が流れてない時間に行って中を探検する。
あと、小山の裾にある配電の鉄塔の下とか。今から考えれば、どっちも学校に知れたら怒られる場所だったろうけど、そういうのにじつに詳しかったんだ。



67:2/12:2020/08/15(土)01:19:54.26ID:y3BXYe+r0.net
だから放課後、2人で自転車で走り回って、町の中のいろんなところに行ったもんだよ。
思い出すと懐かしいな。山中はそれなりにいいやつだった。

人の嫌がるようなことは絶対に言わなかったし、子どもなりにではあったが、俺にいろいろ気を遣ってくれた。
今になって、そういことがわかるんだよ。
ただ、小遣いはいつも持ってなかったから、アイスや飲み物なんかをおごるのが俺の役目になってたな。

ああ、本題に入るよ。そんときは夏休み中で、俺らの小学校の学区からかなり外れた場所にある神社に行ったんだ。

小さなとこだったよ。神主とかはいなかったんだと思う。社殿の扉も閉まってたし。
なんでそこに行ったかというと、山中が社殿の下の砂地にアリジゴクがいるって言ったからだ。
ほら、神社は高床になってるだろ。その下に潜り込むと、下が目の細かい褐色の砂になってて、そこにぽつぽつとへこみがあった。
それに手を突っ込んで中央の砂をつかみ、持ち上げると手のひらの中にアリジゴクが入ってる。



68:3/12:2020/08/15(土)01:20:57.02ID:y3BXYe+r0.net
いや、殺したりはしなかったよ。ただ観察しただけ。殺したのはアリのほうだな。
それも俺らが殺したんじゃなくて、生きたやつをアリジゴクの穴に入れてやっただけだ。
アリがもがいて逃げようとしてもサラサラ砂が崩れて、どんどん中に落ち込んでいく。
そして真ん中まで落ちると、中からハサミが出てきてガジッとつかまえるんだ。

それをずっと見てた。けど、1時間もするとさすがに飽きてきて、2人で神社の裏手に回ったんだよ。

そこはけっこう深い雑木林になってて、強い日のあたった境内とは反対に、じめじめした感じで暗かったんだ。
で、どういうわけか社殿の柱に立てかけるようにして、大きさの違う板が何十枚も重ねられてあったんだよ。
うーん、もしかしたら、神社の何かを作ったときの廃材だったのかもしれない。
俺が見たかぎりじゃ、あんまり面白そうなことはなかったんだが、山中が板の一枚を手にとって、



69:4/12:2020/08/15(土)01:22:04.73ID:y3BXYe+r0.net
「なあ、神社を作らないか」
って言ったんだ。これも、今考えると摂社ってやつのことを言ってたんだと思う。
ほら、大きな神社の参道沿いには、小さなお社がいくつも並んだりしてるだろ。あれのことだよ。で、俺もそのとき、面白そうだなってすぐ思った。

それで、2人で板を組み上げていったんだよ。もちろん、釘とか持ってたわけじゃないし、セロテープなんかもないから、たんに板の下のほうを土に埋めて、その上に屋根になる板を乗せただけだ。

山中は三角の神社の屋根の形にしたかったようだったが、それは上手くいかなかったな。
で、俺らの背丈より頭一つくらい小さい社殿ができると、山中は鳥居を立てるって言い出した。それは無理だろうと思ったが、意外と簡単だった。

林の中から、できるだけ真っ直ぐな木の枝を拾ってきて2本立て、横木はつるになった植物で結んだんだ。
でな、鳥居ができると、本物の神社みたいな雰囲気になって、俺らはけっこう満足した。



70:5/12:2020/08/15(土)01:23:06.58ID:y3BXYe+r0.net
そしたら山中は
「これだけじやダメだ。ご本尊をいれなくちゃなんない」
って言い出した。

うーん、これも今考えれば言葉が間違ってるよな。ほんとうは御神体だったろう。
それはともかく、2人でご神体になりそうなものを探したが、そんなのが落ちてるわけはないよな。林の中をうろうろしてたら、林から田んぼに出るあたりの場所に、小さなお地蔵様があるのを見つけたんだよ。

頭巾もよだれかけも雨ざらしでボロボロになり、長い年月で顔の造作もわからなくなった地蔵様。
それを見て山中が
「これにしようぜ」
って言い、俺もすぐ賛成した。

そんときは、地蔵様を動かすのが悪いとか思わなかったんだ。でも、それからが大変だった。
だって小さいとはいえ、石の地蔵様なんだから、かなりの重みがある。
俺と山中で頭と足のほうを抱えて、ふうふういいながら俺らの作った神社まで運んだ。
中に立てたら、すごく様になってる気がしたんだよ。



71:6/12:2020/08/15(土)01:24:11.77ID:y3BXYe+r0.net
で、さっそく俺が拝もうとしたら、山中は
「お供えがなくちゃいかんだろ」
って言った。

俺が
「んじゃ、パンかなんか買ってくるか」
と答えると、
「いや、そんなんじゃ喜んでくれん、お供えも作ろう」
神社の境内のほうに戻ってたんだ。手水場で柄杓に水をくみ、それを持って社殿の下に潜り込み、砂を水でこねて団子をつくり出したんだよ。
さっそく俺も真似をした。砂なんですぐに崩れてしまって不格好なものになったが、

2人で5、6個の泥団子ができると、山中は
「仕上げだ」
と言って、その中に、掘り出したアリジゴクを埋め込んだんだ。
それを抱えて社殿の裏に戻り、俺らの神社の、鳥居と地蔵様の中間あたりに積み上げた。

そして手をパンパンと叩いてお祈りをしたんだよ。
え?何を願ったかとかもう覚えてないが、おおかたテストの点を上げてくれとかそんなことだったろうよ。
でな、それが終わると、俺も山中も、ひと仕事終えたような充実感があったんだよ。



72:7/12:2020/08/15(土)01:25:22.77ID:y3BXYe+r0.net
山中は、
「これなあ、できれば鈴つけたいよな」
って言い出し、
「小さいのなら家にあったと思う」
俺が答えて、翌日もそこに来ることにしたんだ。

その日はもう2時間くらい別のとこで遊んで、山中とはわかれた。
で、次の日、また山中としめし合わせてその神社に行った。
前の日に作った団子を見たら、積み上げたのが崩れて、団子の一つ一つに小指を突っ込んだような穴が開いてたんだ。
「これ、地蔵様がほじり出して中身を食ったんかな」

山中はそう言ったが、俺はアリジゴクが自力で逃げ出したんじゃないかと思ってた。
で、小さな鈴と簡単なヒモをくっつけたら、ますます神社らしくなったんだ。
ヒモを引いてリンリンとならしたとき、
「た・り・な・い」
って声が聞こえた。

「え?」
と思ってまわりを見ると、山中が
「今、何か言ったか?」
って俺に聞いてきた。
「いや、なんも」
「足りないって声が聞こえたと思ったんだが」
「俺も」
うーん、どんな声だったかって言われてもなあ。・・・男の声だとは思った。



73:8/12:2020/08/15(土)01:27:20.05ID:y3BXYe+r0.net
あと、年寄りの声とかじゃなかった気がする。むしろ子どもの声みたいな。
「んじゃあ、地蔵様が言ったんだろ」
山中がそう言ったんで、ちょっとびっくりした。
石の地蔵様がしゃべるはずはないだろ。でも、山中は変だとは感じてないように見えた。

「カエルでも捕まえてきて団子に入れるか?」
俺はさすがにそれは嫌だったんで、
「やっぱ菓子とかにしようぜ」
それで2人で神社を出て、自転車で駄菓子屋まで行って、安い菓子の袋を買ってきて供えたんだよ。
これは俺が金を出したんだが、山中はなんだか面白くなさそうな顔をしてたな。

で、その日は網と虫かごを持ってきてたんで、林の中でずっと虫とりをして遊んだ。
その後、山中と別れて家に戻るとき、ちょうど畑から帰ってきた婆ちゃんと家の前で会った。

婆ちゃんは、俺の姿を見るなり、ちょっと怖い顔になって、
「お前、どこぞで悪い遊びしてこなんだか。肩に黒いもんがのっとる」
って言ったんだ。
「いや、なんも。虫とり」



74:本当にあった怖い名無し:2020/08/15(土)01:28:34.18ID:tNhPPBez0.net
みてるぞ



75:9/12:2020/08/15(土)01:28:41.62ID:y3BXYe+r0.net
俺はそう言って虫かごを見せたら、婆ちゃんは
「そうかい。じゃが、そのまんまではいけん」
そう言って、俺の襟首をつまんで無理やり家に入れ、仏壇の前に座らせたんだよ。

で、1時間近く婆ちゃんといっしょに仏壇を拝ませられたんだ。
いや、もちろん嫌だったし、わけもわからなかったけど、やるしかなかった。
婆ちゃんといってもまだ60歳を過ぎたばかりで、毎日畑仕事をしてるから、子どもの俺よりずっと力が強かったんだよ。

それが終わると、
「変な遊びせんで宿題やれ」
そう言われて小遣いをもらったんだよ。
次の日もまた山中と神社に行った。
山中はにやにやしながら先にたって裏手に回ったが、俺らの神社の前に子猫の死骸があったんだよ。
「うわ」
と思った。

子猫の体中、ぼつんぼつんと鉛筆を刺したような穴が開いてたんだよ。
「これ、お前がやったんか?」
山中に聞くと、驚いたような顔をして、



76:10/12:2020/08/15(土)01:29:42.81ID:y3BXYe+r0.net
「いんや、猫の死骸を拾ってきてお供えしたのは俺だが、こんな穴は開けてないぞ」

ちょっとかすれ気味の声で言ったんだ。それから、猫の死骸を足でひっくり返し、
「ほら、お前が買った菓子の袋はそのまんまだろ。たぶん猫は神様が気に入って食ったんだ」
そんなことを言ったが、俺は気持ち悪くて、神社への興味がサーッと引いていったんだ。

「なあ、これからプール行かないか」
と山中を誘ったら、
「ああ、たまにいいか」
山中も乗り気で、お参りしないでその場を離れようとした。

そのとき、また、
「た・り・な・い」
って声が聞こえたんだよ。前と同じ声だと思った。俺と山中は同時にあたりを見回したが、人の姿はなかった。
俺は自転車まで走っていき、山中も後に続いた。

で、俺らの家の近くまで全速で自転車を漕いで、お互いプール道具を取ってきてもう一度集合することにした。
けども、それが俺が山中を見た最後になったんだな。



77:11/12:2020/08/15(土)01:30:46.20ID:y3BXYe+r0.net
プール道具を載せて自転車で集合場所にしてたバス停に向かうと、サイレンの音がしてて、たくさん車が停まってた。
パトカーと救急車もいた。ちょうど担架にのせられた人が救急車の後部に運び込まれていくとこで、足だけが見えたが、それが山中のボロっちいズックだと思ったんだよ。

俺はどうすることもできず、プールには行かずに家に帰ったんだ。
一人でテレビ見てると、パートに出てた母親が帰ってきて、
「なんか、子どもが事故にあったみたい。近所の人が噂してたけどあんた知ってる?」

って聞いてきたから、俺はプルプルと首を振ったんだ。後でわかったんだが、事故にあったのはやはり山中で、トラックの後ろを自転車で走ってたら、積んでた鉄筋が何本も落ちてきて頭に刺さったってことだった。即死だったんだ。

それから夕飯前に婆ちゃんが戻ってきて、俺の顔を見るなり、
「あれほどいけんと言うたやろ」
そう言ってまた、仏壇の前に2時間正座させられたんだよ。



78:おわり/12:2020/08/15(土)01:32:00.33ID:y3BXYe+r0.net
ま、これでだいたいの話は終わり。
それからしばらくの間、婆ちゃんは畑に行かず、ずっと俺を監視するようにそばについて宿題をやらされた。
おかげで宿題が新学期までにできたのは、あの夏休みだけだったよ。

あと、学校で山中と一番親しかったのは俺なんだが、葬式には呼ばれなかった。
山中の家は新興宗教に入っていて、その人たちだけで葬式を出したみたいなんだ。

もちろん俺は、婆ちゃんをふくめ神社での話は誰にもしゃべってない。ここで今話したのが初めてなんだよ。
ああ、あの神社なあ。夏休みが終わって少ししてから、怖かったけど気になって一人で見に行った。
裏手に回ってみると、俺らが作った鳥居や、板の社殿はなくなってたが、地蔵様だけはそこに残されてあった。

でな、最初、すり減って表情もわからなかった地蔵様の顔が、なんだか微笑んでるように見えたんだ。それで俺は
「ああ、足りたんだな」
って思ったんだよ。



79:本当にあった怖い名無し:2020/08/15(土)01:33:02.65ID:tNhPPBez0.net
>>78
おつ
おもしろいな



引用元:死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?360
http://toro.2ch.sc/test/read.cgi/occult/1597272376/55-79




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