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都市伝説・・・奇憚・・・blog

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2024.05.05 (Sun) Category : 

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ー鬼になる理由<崇志>ー <オオ○キ教授シリーズ>

2018.01.30 (Tue) Category : 創作作品

815:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/12/13(土)22:58:33ID:sgkzXjaf0
鬼になる理由<崇志> 1/4

『鬼』なんてもんに託(かこつ)けて美耶を誘ったのは、最近、実家にも帰ってないし、会話がなかったと思ったからだ。
もちろん、そんな本心をクソ生意気な妹に伝える気はない。

晴彦と付き合いだしてから、美耶にはいい変化が起きている。
人間不信のケが強かった妹は、元々は引きこもりに近い生活をしてたんだ。
心配する両親と衝突することも多かったのを見かねて、俺は教授に美耶を連れ出してくれるように頼んだ。

教授は、
「ショック療法になるかもしれないよ」
と笑いながら協力してくれた。
今は晴彦がその役目を負っている。
…ボランティアではなしに。

助手席の美耶に、サービス精神で晴彦の話題を振ってやった。
「あいつの運転に少しは慣れたか?」
美耶は、盛大に首を横に振る。
「絶対に慣れないっ!…っていうか、すでに恐怖症」
「…動体視力が並外れてるから、事故はしないんだけどね」
一応、フォローをしておいてやろう。
「ハルさんって、他は穏やかな性格してるのに、なんで運転だけ暴走なの?」
という美耶の質問に、俺は、正直に答えた。
「あいつが穏やかになったのは、歳を食ったからだよ。会ったばかりの頃はえっらく我儘で、突然、大阪からこっちまで夜行で来て、『いま駅にいるから迎えに来て』なんて電話をしやがったことも度々あったんだぜ」

「ハルさんって、お兄ちゃんと会った頃は大阪にいたの?」
美耶が不思議そうに聞く。
ああ、そうか。美耶は、晴彦が転勤した後からしか知らないもんな。
「晴彦の出身は大阪だよ。離婚したあと、教授はこっちに、晴彦は仕事で岡山に行った。だから、あいつ、本当は大阪弁なんだ」
ガラ悪いぞ、と忠告すると、美耶は、
「聞いてみたい~」
と喜んだ。
いい変化だ(笑)。



816:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/12/13(土)22:59:04ID:sgkzXjaf0
鬼になる理由<崇志> 2/4

俺が会った頃、晴彦は、お世辞にも『好かれる性格』はしていなかった。
自暴自棄で甘ったれで、口癖は、
「オレがいなかったら、よかったのに」
だった。

あいつから聞いた話。
晴彦の子ども時分の徒名は『死神』だ。
教授の受け継いでしまった甕の呪いは、晴彦に少なからず影響を与えていた。あいつの友人のほとんどは、不慮の怪我や死によって晴彦から離れている。
教授はその事実を愁いていた。息子と縁を切れば解決するのではないかと思って、戸籍を切り離した。

その後、晴彦に呪いの影響は見られなくなった。
でも、晴彦は、父親と離れなくてはならなくなったことを、
「オレがいなかったら、よかったのに」
と言い続けた。

美耶に、晴彦が受け止められるかな。
…美耶にしかできないか。



817:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/12/13(土)22:59:34ID:sgkzXjaf0
鬼になる理由<崇志> 3/4

今朝一番で入った晴彦からの電話は、そう切羽詰った様子でもなかった。
「今晩、そっちに連れて行く約束をしてた笹川さんが失踪しました」
と、出勤前らしい短い伝言を残しただけだ。
しばらくして、再度かかってきた電話。
「飲み屋に残してきた笹川さんの車がなくなってます。失踪後に取りにいったとしか思えないけど、笹川さんのマンションから飲み屋まで、8キロぐらいの距離があるんですよね」
その行動には、俺も少なからず疑問に思う。
「パジャマのまま、明け方の道路を8キロも歩いたっていうのか?錯乱していたにしても、途中で気づくだろうに」
晴彦が、
「車ごと神隠し…なんて、ありえないですよね」
と、苦笑交じりに言った。
俺は、
「お前、仕事休めないだろ。探しに行ってやろうか?」
と志願した。

細い市道に入ってしばらく走ると、山間のところどころに開けた田畑が見えてきた。
I村に近づいてみて初めて気づいたが、この辺りの山は『磯神(いそがみ)』じゃないのか。
地元出身じゃない晴彦が気づかないのは無理もないが、磯神は、国内有数のミステリーゾーン、つまり心霊現象の多発するスポットだ。
美耶も身を硬くしている。



818:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/12/13(土)22:59:58ID:sgkzXjaf0
鬼になる理由<崇志> 4/4

「何か見えるのか?」
落ち着きなく周囲を見回す美耶に聞いてみた。
「ううん。見えはしないけど…」
言葉を濁した美耶は、直後に耳を塞いだ。
「死にかけた人の、『助けて』って声がたくさん聞こえる」
俺はラジオのボリュームを大きくした。
短波に乗って流れてきた曲は、季節外れのレクイエムだった。
磯神は、峠越えのドライバーの事故死が並外れた場所でもある。

市道から、さらに細い脇道に車を入れた。
右手に広がる山裾に、赤い窓枠の家が点在していた。
そのI村の入り口に、晴彦から聞いていた笹川氏の車が停まっていた。

やばい、かもな。臆してるのが自分でもわかる。



引用元:【霊感持ちの】シリーズ物総合スレ6【友人・知人】
https://anchorage.5ch.net/test/read.cgi/occult/1223829762/815-818












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ー鬼になる理由<美耶>ー <オオ○キ教授シリーズ>

2018.01.29 (Mon) Category : 創作作品

796:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/12/12(金)00:12:30ID:vNpQddCw0
鬼になる理由<美耶> 1/4

ハルさんから入ったお兄ちゃんヘの電話は、とても奇妙な内容だった。
ハルさんの会社の先輩に当たる人が、その日の明け方に家出をした、というもの。
少し前から言動がおかしかったこともあって、会社では『精神的な病理による一時的な失踪』と受け止められてしまったみたい。
でも、ハルさんは、もっと深刻に考えてる。
「オレ、急には会社を休めないから、その間だけでも笹川さん探しを頼めませんか?」
ハルさんの依頼に、お兄ちゃんは二つ返事で引き受けた。

で、今、私を迎えに来てる(汗)。

「なんで私も一緒なの?」
お兄ちゃんの車の助手席で、不満たらたらの私。
だって、馬鹿兄貴ときたら、
「鬼が出るらしいから、お前が必要」
とかって理不尽なこと言うんだもん。
鬼…ねえ…。
そんなもの、現実にはいないと思うんだけどな。



797:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/12/12(金)00:12:55ID:vNpQddCw0
鬼になる理由<美耶> 2/4

お兄ちゃんは、以前から、たびたび、その失踪した笹川さんのことを聞いていたよう。
「I村ってわかる?そこが元凶みたいだから、いま向かってる」
って県境の村名を上げる。
場所はなんとなくわかるし、すごい田舎なのもわかる。行ったことないけど。
「私たちが行って探すっていっても、笹川さんの顔はわかるの?」
と聞くと、
「パジャマで飛び出したから、それを目印にする」
だって…。
アバウトな兄貴だ(溜息)。

それにしても、変な話。
笹川さんは、夜中に突然、
「子どもがいない。鬼が連れて行った」
って騒いで飛び出したらしいけど、赤ちゃんはちゃんとその部屋で寝てた。

以前、ハルさんがうちに遊びに来たときに、ハルさんの後方に禍々しい角の生えた『黒い影』を見たことがある。
追い払えそうだったから玄関の外に締め出したけど、あの日、ハルさんは笹川さんとI村に仕事しに行ったんだよね。
笹川さんは、あの『影』に憑かれちゃったのかな?
追い払えずに今まで来ちゃったのかな?



798:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/12/12(金)00:13:45ID:vNpQddCw0
鬼になる理由<美耶> 3/4

「幽霊なら、角なんか生えないよね?」
道すがら、助手席でただ座っているのもなんなので、いろいろ考えてみた。
教授にくっついて旅をしていたとき、私はいろんな幻覚を見た。その中には、ただの妄想とは思えないほど現実と合致しているモノもあった。
でも、鬼は見ていない。鬼っていうか…人間から大きく外れた生き物を見たことは…ない…。
『黒い影』には、捻くれた大きな角が2本、はっきりと頭にあった。アレを見たとき、私は、人間の怨霊ではなくて動物の霊かと思ったんだ。牛みたいな不恰好なシルエットだったし。

「牛鬼(ぎゅうき)って妖怪の伝承は実際にあるぞ」
お兄ちゃんは、煙草を口の端に乗せながら答えた。
「鬼の頭に牛の体を持っていたり、頭と体の形が逆だったり、他の動物が混ざったりと、よくわからない動物だけどな。キメラであることは間違いないらしい」
「キメラ?」
聞き覚えのない言葉に、私は首を捻る。
「キメラってのは、2種類以上の生物が合体している生き物のことだ。元はギリシャ神話だったかな。ライオンとヤギと蛇の一部分ずつを持つキマイラってのが出てくるんだ」
なんとなく記憶にある。ライオンの頭に尻尾が蛇のイラスト。
「じゃあ、鬼っていうのは、実際にいるの?」
と聞くと、お兄ちゃんは苦笑する。
「んなの、知らねーよ。全国に似たような妖怪話が残っていても、写真でも残ってなけりゃ、それが事実とは言えないだろ」
うん。『伝承』だけじゃ証拠にはならない、よね。



799:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/12/12(金)00:14:30ID:vNpQddCw0
鬼になる理由<美耶> 4/4

「牛鬼ってのは、未知の海洋生物のことじゃないかな」
他に話題もなかったので、お兄ちゃんは続けた。
「『牛』なんて名前がついているわりには、伝承が残っているのは水辺ばかりなんだ。海や湖に生息していた大型魚類が、ごく稀に姿を現した現象がそれなんじゃないかと思う」
「その魚に角があったの?」
私が聞くと、お兄ちゃんは頭を掻きながら、
「あ、そっか。魚に角はおかしいよな」
と笑う。
でもすぐに異説を持ち出した。
「実在の『魚類』に角はなくても、後々、その魚を食べた人間が、寄生虫か何かから重病を発症すれば、それは『疫神』となるだろ。その後の口伝で『病気を撒き散らす鬼』と同一視されても無理はないと思わないか?」
…ありえる話には聞こえる。

「それじゃあ、『笹川さん』に幻覚を見せたのは、やっぱり、鬼じゃなくて動物霊か何かの仕業なのかなあ」
『鬼』なんてものがいないとなれば、ハルさんにくっついてきた『黒い影』は、そうとしか説明できない。
お兄ちゃんは、
「いーや」
と、ほんっっっとに楽しそうに、言った。
「俺は『妖怪』ってのはいると思うね。死んだ人間の思念や神仏なんかじゃなくて、『異形の生き物』が存在することを信じてる」
…一応、反論しといた。
「私が持衰(じさい=古代の神降ろしの能力を持った巫女)の生まれ変わりだったとしても、そんなモノを感知する力なんてないんだからね(汗)」

お兄ちゃんは、
「期待してるよ」
と無責任に言った。
…馬鹿。



引用元:【霊感持ちの】シリーズ物総合スレ6【友人・知人】
https://anchorage.5ch.net/test/read.cgi/occult/1223829762/796-799













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ー虐殺ー <オオ○キ教授シリーズ>

2018.01.23 (Tue) Category : 創作作品

742:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/12/07(日)00:42:11ID:H8wRhXRO0
虐殺 1/8

7月に入ったころ、仕事仲間から嫌な話を聞いた。
人里離れた山中の一軒家の周囲に、犬や猫の死骸が大量に散乱しているという。
一軒家に住む家族の仕業らしいが、仕事仲間も、
「興味はあるんだけど、腐敗臭がすごくて、家に近寄ることができないんだ。たぶん、家の中には、もっとたくさんの動物が死んでるぜ」
と、直接確かめることはしなかったらしい。
近くでの営業周りの仕事をゲットした俺は、この日、その家に足を運んでみることにした。

麓の村は、商店もある活気づいた田舎町だった。
大きな国道が走っていて、車通りが激しいせいか、閉鎖的な雰囲気はまったくない。
それでも、家々を回っているときに、時折、妙な臭いが鼻をつくことがあった。
「気持ちの悪い臭いですね」
と持ちかけると、村の人間は一様に顔をしかめて、
「あれは加藤のとこだわ。飼えなくなったペットを山に放す輩が後を絶たんもんだから、加藤が次々と始末してるんだわ」
と言った。



743:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/12/07(日)00:42:34ID:H8wRhXRO0
虐殺 2/8

なんだ…。俺は拍子抜けした。
動物虐待かと思ったら、野犬や野良猫の駆逐だったのか。
「加藤さんっていうのは、そういうのを請け負う業者か何かですか?」
と聞くと、村人は、
「そうじゃない。いつのまにか住み着いた余所者で、虐殺が好きな一家だわな」
と答えた。

…虐殺…。
俺の脳裏にI村での光景がよぎった。
子どもの首を容赦なく刎ねた鬼。
弱い者への慈悲などまったくない生き物の行為だった。

自分の子どもでさえ平気で凍死させる母親のいる世の中だ。
動物『ごとき』を喜んで殺す人間がいても、不思議はないのかもしれない。

俺は仕事を適当に切り上げて、山に向かった。
『鬼のような』人間を見てみたかった。



744:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/12/07(日)00:42:58ID:H8wRhXRO0
虐殺 3/8

仕事仲間の話では、かなり奥深く入り込まないと辿り着けないということだったが、俺はすんなりと『加藤』邸に着いた。
途中に散乱していたという犬猫の死骸にもお目にかかってない。
仕事仲間から情報を得たのは半月ほど前だったから、片づけたのかもしれない。

なんとなく大月に電話してみた。
仕事ではすでに別行動を取っていた大月は、ちょうど遅い昼食に入っている時間だったらしく、
「また妙なことに興味を持って」
と笑いながらしばらく付き合ってくれた。
が、最後には、
「気をつけて近づいてくださいよ」
と、改まった声で忠告をしてきた。

俺自身、なぜこんなことに関わろうとするのか、自分の行為が説明できない。
ただ、『見たい』。
鬼のような人間の姿を。
本物の鬼ではなく、ただのエゴの固まりである人間の姿を。



745:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/12/07(日)00:43:27ID:H8wRhXRO0
虐殺 4/8

人気のない加藤邸の玄関先を迂回し、右側に開けている庭を回った。
臭いがきつい。動物の臭いじゃない。腐乱した死体の臭いだ。
柵などはなかったが、手を入れてあるらしい敷地は、かなりの面積を持っていた。
3分ほどかけてゆっくりと裏口に回ると、そこには。
痩せ衰えた茶毛のレトリバーに餌を与える初老の男がいた。

男はかがんで、餌箱を犬の鼻先に押しつけている。
一見、普通の飼い主とペットの光景に見えた。
が、レトリバーは餌を拒んでいた。
犬に詳しくない俺が見ても明らかに栄養失調なのに、餌箱に口をつけようとしなかった。
初老の男は、しばらくして諦めたように、餌箱を取り上げた。

俺は声をかけた。
「その犬、餌を食べないんですか?」
老人は少し警戒したようだったが、俺が名刺を差し出すと、
「ああ。訪問販売か」
と、若干、修正してほしい認識で受け入れてくれた。



746:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/12/07(日)00:43:50ID:H8wRhXRO0
虐殺 5/8

「今日はこの地区を回らせてもらっているんですが、麓の人たちから加藤さんのことをお聞きしまして」
俺は警戒を解くべく、情報源を明らかにする。
老人は憎々しげな表情を浮かべたあと、
「ロクな事は言っとらんだろう」
と、麓の住人に対する敵意を顕わにした。

…たしかに彼らは、この『加藤』氏のことを快く評価はしていなかったが、それにしても温度差があるな…。

双方に角が立たないようにフォローする。
「野犬の駆除をしてくれるからありがたいと言ってましたよ。でも、本当は駆除じゃなくて、飼ってみえるみたいですね」
老人の持つ餌箱の中身は、ちゃんとしたドッグフードに見えたからだ。
老人は、足元の痩せた犬を一瞥し。
酷薄な笑いを浮かべて言った。
「これには農薬が混ぜてある。食えば速攻で死ぬ」
それから、怯えた表情のレトリバーに向かって、付け足した。
「じっくり餓死するのが望みのようだがな」
俺は言葉に詰まって、立ち尽くした。



747:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/12/07(日)00:44:20ID:H8wRhXRO0
虐殺 6/8

老人に首輪を掴まれた痩せ犬は、引きずられるように家の裏口に消えていった。
あの犬…これから徐々に衰弱して死んでいくのか…。
やりきれなくなって、大月に解決策を求めた。
大月は、
「ちょっと待ってくださいよ」
と電話口でしばらく沈黙したあと、
「そのレベルの虐待なら警察が動くと思います。けど、犬は保健所で薬殺されるでしょうね。だから、先にここに連絡してください」
と、ある施設の電話番号を提示してきた。
『アニマルシェルター』。野生化した犬や猫を保護して、新しい飼い主を探す施設なのだという。
「彼らなら悪質な飼い主に対抗する手段も持っています。笹川さんが動くより、的確に処置してくれますよ」

大月の説明に、かなりの精神的安定を得て、俺はいったん山を下りることにした。
加藤邸のテリトリーの中では、妙な動きを控えたほうがよさそうだと思ったから。
来たときとは逆に、左回りに庭先を戻ると、家の中から、突然、犬の断末魔が聞こえた。
あえて思考をシャットアウトして、玄関まで戻る。

玄関のすぐ外に、さっきのレトリバーの惨殺体が置かれてあった。



748:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/12/07(日)00:44:55ID:H8wRhXRO0
虐殺 7/8

窓から、強い憎悪を浮かべた太った老婦の顔が覗いている。
その横に、30代ぐらいの痴呆じみた男が、返り血で濡れた服を着たまま立っていた。

なぜ、こんなことができるんだ?

俺は血走った瞳で睨んでいる犬の死体を無視して帰途に着いた。
『お前が来なければ、もっと生きられた』
犬の恨みが聞こえるような気がしたから、無視せずにはいられなかった。

帰り道には、累々と積もる動物の遺骸。
来るときはなかったはずだ。
仕事仲間の話を思い出した。
「その死体のひとつひとつが、助けてくれって言ってるような気がして、頭がおかしくなりそうだった」
俺は口笛を吹きながら帰った。
お前たちはもう死んでいるんだ。俺にはどうすることもできないんだ。だから無視するよ。

麓につき、営業車の運転席に身を沈めてから、アニマルシェルターに連絡をした。
シェルターの職員は、
「動物も人間と一緒だったでしょう?死ぬときには強い想いを残します。だから、我々は自費を投じて救助活動をしてしまうんですよ」
と言った。



749:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/12/07(日)00:45:34ID:H8wRhXRO0
虐殺 8/8

その夜。
仕事を終えた俺は、大月を強引に飲みに誘った。
運転は暴走気味なくせに、飲酒運転は絶対にしない大月は、この日も一滴も飲まなかったが。
俺は、I村の件からずっと疑問に思っていたことを大月にぶつけた。
「俺はなぜ、こんな厄介ごとばかりに首を突っ込むようになったんだろう?以前はうまく避けていたのに」
大月は首をかしげながら、
「さあ?」
と言うばかりだ。
「本物の鬼が見たいんだよ」
俺は益体もないことを言って、さらに大月を困らせる。

「今日の一家も、やってることは鬼に匹敵するが、角はなかった。ただのサディスティックな人間だ」
「I村で見た鬼は、角も牙もあって、硬そうな筋肉と震え上がるような大声を出していた。あれは俺の幻覚なのか?それとも本物だったのか?」
「本物の鬼には、どこに行けば会えるんだ?」
大月は、
「なぜそんなものが気にかかるんです?」
と、ノンアルコールを呷りながら聞く。
俺は答えた。
「もし俺が鬼に呪われたのなら、俺のかみさんや子どもにも影響が及ぶかもしれないだろ。俺はあいつらだけは守りたい」

大月は笑って、そして呆れた。
「親ってのは、みんなそんな発想をするんだな」
そして、俺のグラスを取り上げると、
「その辺にしましょう。明日はもっと大酒のみの住職のとこに連れて行ってあげますから」
と言った。



引用元:【霊感持ちの】シリーズ物総合スレ6【友人・知人】
https://anchorage.5ch.net/test/read.cgi/occult/1223829762/742-749












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