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都市伝説・・・奇憚・・・blog

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2024.04.29 (Mon) Category : 

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マセラティおじさん(2)

2018.12.15 (Sat) Category : 創作作品

366:◆J3hLrzkQcs:2007/01/27(土)00:45:35ID:nvEpYtdk0
おっさんの言うとおりだった。呪いは、3ヶ月後に自分に戻ってきた。
マセラティおじさんとまた会ったのは、秋が終わり冬にさしかかろうとしていたときのこと。

ほぼ毎日と言っていいほど進学塾に通いづめだった僕は、その日も同じように進学塾から家路に向かって歩いていた。
前に襲われた道から帰れば、一番早く家に着くのだが、トラウマのせいか何が何でも通らないように決めていた。
回り道になるにもかかわらず、比較的明るく、また人や車の流れがある道を選んで帰っていた。

あの事件の後、数日後たってから、1度だけどうなっているのか確認しに行ったことがある。
もちろん日が沈む前、それも友達と一緒にという条件つきで。

まるで事故った形跡がなかった。
たしかにここで事故ったのは間違いないはずなんだが…。
マセラティはなくて当たり前だが、飛び散ったフロントガラスの破片すら見つからない。
垣根にも穴はなかったし。電話ボックスも、やっぱりなかった。
ただ、あるがままの光景がそこにはあった。

あそこは異次元だったんだろうか?
今度、おっさんが現れたら聞いてみよう。そう思った。

場面は今へと戻る。突然音が聞こえなくなった。
さっきまで聞こえていた犬の吠える声もピタリと止んだ。とうとう来た。
自分の呼吸音だけがしっかりと聞こえる世界。背中からじんわりと汗が滲み出る。
おっさん頼む!早く来てくれ…。

すると、どっかからエンジン音が聞こえた。
おっさんがやってきたのだ。そして車は、あのマセラティだった。
修理に出したのかきれいに直っていた。そして僕の横に車を停める。

「おい、挨拶はいいから乗れ。奴が来る。」
僕はあわてて助手席に乗った。
左ハンドルなので、少しだけ戸惑ってしまう。
おっさんも僕がシートベルトを締め終わらないうちに発車した。
よく見るとドアのところにお札が貼ってある。



367:◆J3hLrzkQcs:2007/01/27(土)00:49:16ID:nvEpYtdk0
真っ先に聞いた質問が
「今までどこに行ってたんですか?」
だった。
おっさんは、あるものを探していたとだけ言い、しきりにドアミラーで後ろを確認している。
あるものとは、呪いをかけたり、またかけた呪いが呪い返しにあった場合、その呪いの身代わりになる物のことらしい。

具体的に言うと、髪や爪といった身体の一部を身代わりとして入れ、呪いを中に閉じ込めるための木箱である。
僕にかかっている呪いは、膨大な年月を経て弱っているものの、そこらへんの木で作った木箱くらいじゃ封じ込められないほど強力なんだとか。

だから、おっさんはまず呪いに耐えられるだけの神木をずっと探してたそうだ。
そして作る木箱も、釘を使わず複雑に組んだ特殊なものでなければならないとのこと。
それを作るのがまた厄介なようで。

「もしあの呪いが弱ってなかったら、どのくらいの威力なんですか?」
我ながら恐ろしい質問をしてみた。おっさんの横顔からは長い睫毛をたくわえた目が見えた。
その目がドアミラー、僕、前方という順で動いている。

「あまり俺も詳しいことは分からないが、それこそ千は殺されてただろうね。」
震える僕を見て、おっさんはにこやかに笑い、あれよりもっとヤバい呪いもあるから大丈夫だよと付け加えた。
今思うとフォローのつもりだったのだろうか?全然フォローになっていなかったが。

「来た」
そう呟くと、おっさんは一気にスピードをあげはじめた。
エンジンがうなり、速度計の針が動きはじめた。
それにつられて心臓がバクバクも言い始める。
見たくなかった。が、僕は不可抗力でドアミラーを覗いた。

いた。

はるか後方にそいつが見えた。地面から浮いたところに立っている。
そしてそのままの状態で、滑るように僕たちを追いかけてきているのが分かった。

ガチャン。

全部のドアにロックがかかる。
重たい空気。重圧感のある緊張が走る。
おっさんも真剣なのか、黙ったままハンドルをさばく。とにかく居心地が悪かった。



368:◆J3hLrzkQcs:2007/01/27(土)00:50:15ID:nvEpYtdk0
やはり下調べしてあるのだろう、さっきから直線の多い道ばかりを走ってるようだ。
曲がる寸前でスピードを落としているとはいえ、とんでもない速度だ。

しかし、それでもそいつはピッタリと付いてきていた。
しかも差は開くどころか、どんどん近付いているのだ。

数十分も走らすと、だんだん疲れてきたのか、おっさんの運転が荒くなりはじめた。
見ると、おっさんの顔には汗が。初めて見た。この人でも汗かくんだ。そう思った。
…と同時に僕は、みるみる不安になる僕。

ドアミラーを見るたびに、そいつはどんどん距離を縮めていた。
だめだ、このままじゃ逃げ切れない。絶望的だった。心臓が今にも張り裂けんばかりだ。

「おい、次曲がったところで運転代われ。」
当時、中2の僕にとっては、あまりにも酷な命令に思えた。

「大丈夫。ハンドルを持つだけでいい。とにかくど真ん中を走らせろ。いいな。簡単だろ?」
ためらってる時間はなかった。やりたくないけど、やるしかない。僕は頷く。
おっさんは次の角に勢いよく突っ込んだ。
ほとんどドリフト状態で、ものすごいGで身体が「く」の字に倒される。

ハンドルをしっかりと持つ手に、じっとりと汗が滲む。
いくら見晴らしのきく直線道路のど真ん中を走っているとはいえ、もし運転操作をあやまったら…。そう考えると腕がブルブルと小刻みに震える。
おっさんはシートベルトを外し、窓から身体を乗り出すと、しきりに何か呟いていた。
その窓から容赦なく吹き込む冷たい風の音にかき消されて、何を言っているか聞こえはしなかったが、例の呪文を唱えているようだ。

バン!

前に聞いた爆竹のような音がこだまする。
おっさんは一仕事終えたような顔つきで、顔を車内に引っ込めると、パワーウインドウで窓を閉めながら
「よくやった」
と頭をなでなでしてくれた。



369:◆J3hLrzkQcs:2007/01/27(土)00:50:54ID:nvEpYtdk0
辛くも何とか逃げ切ることが出来たようだ。
あたりは人が歩き始め、車が道を走り始めた。元のあるべき世界に帰ってきた。
おっさんは、僕を家のすぐ近くまで送ってくれた。
なぜ僕の家の場所を知っているのか?謎ではあるが、あえて聞かなかった。

どうせ
「式神だから」
とか言われるのがオチだし、マセラティのナンバープレートを調べることで正体を突き止められると思ったから。
代わりに、今度おっさんに会ったら、聞こうと思っていたことを聞いてみる。
「さっきの音がない世界って何なんですか?」

そしたら
「今の世界が『在る』ことを誰も証明出来ないし、さっきの音のない世界が『無い』ことも誰も証明出来ない。分かるかい?在るか無いかは問題じゃないんだよ。」
と、かなり哲学的なことを言われた。要するにおっさんでも分からないみたいだ。

車から降りると、すかさずナンバープレートを頭の中に控える。
よし!完璧。完全に暗記したナンバープレートを忘れないように暗唱しながら、僕はおっさんに別れを告げた。
エンジンを吹かし、まさに発車する瞬間のことだった。おっさんは、何か思い出したかのごとく口走った。

「あ、そうそう。1つ言い忘れてたよ。僕のこと調べようと思ってもやめときな。時間の無駄だから。なんかナンバープレート見てたから一応言うね。ナンバープレートなんか調べても『在る』わけないよ。この車は『無い』世界にあったやつなんだから。」

そう言うと、マセラティはあっという間に夜の闇に消えてしまった。



370:◆J3hLrzkQcs:2007/01/27(土)00:58:35ID:nvEpYtdk0
とりあえず今日はもう寝ます。



引用元:死ぬ程洒落にならない怖い話をあつめてみない?156
https://hobby9.5ch.net/test/read.cgi/occult/1169205119/366-370














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マセラティおじさん(1)

2018.12.14 (Fri) Category : 創作作品

320:◆J3hLrzkQcs:2007/01/26(金)17:58:36ID:3YqwWs8A0
「このことは話すな。」
そう言われていたけれど、もう時効だと思うので、書きます。

僕は、幼いころに両親が交通事故で死んでしまったので、叔父のところに養子に出されました。
しかし、叔父は僕の存在をあまり快く思ってないみたいで、僕を塾に行かせることによって、出来るだけ家に僕を置くのを避けていました。

きっかけは中2の夏。
進学塾の授業が終わり、外に出ると辺りは真っ暗。僕は、電灯の明かりを頼りに、歩きながら家路に向かっていた。
すると自分の数十メートル先を歩いていた女性に、いきなり車が突っ込んできました。
一瞬の出来事なのに、その瞬間スローモーションのようになったのを覚えている。
すさまじい音とともに、空中に舞うフロントガラスの破片。

ぶつかった衝撃で、脚がありえない方向に曲がりながら、吹き飛ばされるOL。
そして反対側の民家の垣根へと吸い込まれるように消えていった…。

呆然と、事の成り行きを見届けた後、こりゃ一大事と思い、事故現場に駆けつけてみる。
ぶつかった車は(当時はどこのメーカーか分からなかったけど)マセラティのセダンで、フロント部分が完全に潰れていた。かなりのスピードを出していたのが分かる。
粉々に割れたフロントガラスの奥には、ドライバーの顔が見えた。おっさんだった。
芸能人で例えるなら阿部寛に似ている。

そのおっさんが車から出てきた。サングラスに黒スーツ。
まるで映画に出てくるスパイみたいな格好だ。変な緊張が走った。おっさんは僕を見て一言。

「見るな。」

とんでもないものを見てしまったと後悔した。まさかこんな事件に巻き込まれるとは…。
あぁ、今日で僕の人生が終わる。天国のお父さんお母さん、今からそっちに向かうよ。
自分の中で何かが崩れ始めるのが分かった。
逃げたいけど、足がすくんでしまって言うことを聞いてくれない。
そんな僕を見て、おっさんは口元を緩め、ニコっと笑う仕草を見せる。

「別に君を殺しに来たわけじゃない。むしろ助けに来たんだ。」

へ?その言葉を聞いて頭の中が混乱した。
僕を助けに?意味が分からない。



321:◆J3hLrzkQcs:2007/01/26(金)17:59:19ID:3YqwWs8A0
この人、何言ってんだ?でも自分に殺意がないことが分かった僕は、なぜか妙な安心感に満たされた。
と言うかなんだろう…どこかなつかしい気持ちがする。

「まだ生きてやがったか。あのスピードならいけると思ったんだけどな。」
穴の開いた垣根からは、さっきの女性が倒れているのが見えた。
死んでる?まったく動く気配がない。助けに行こうとすると、おっさんに行く手を阻まれた。

「行ったら殺されるぞ。」

思わず足が止まる。殺される?いよいよ分からなくなってきた。
あっけに取られている僕を、サングラスごしにおっさんは見ている。

「君、変だと思わないのか?あんなに馬鹿でかい音で事故ったのに、私たち以外に誰もいないだろ?」

言われてみれば、たしかに変だ。事故った場所は、民家が立ち並ぶ閑静な住宅街。
あんなすさまじい音ならば、家の中にいようが絶対に聞こえるはずである。
近所の住人なら何が起きたんだ?と窓から覗いたり、現場にやって来たりと何らかのアクションを起こすはずだろう。

家々には明かりこそ付いているが、まるで人の気配を感じなかった。
いや、そもそも女性に会ってからは、通行人はおろか走っている車すら見ていない。
なるほどさっきから感じていた妙な違和感はこれだったのか…。

完全なる静寂。
風の吹き抜ける音。
その風で揺れる木のざわめき。
遠くで聞こえる車の走る音といった些細な音すらしなかった。
耳鳴りで鼓膜が痛くなるほどの無音状態。ひたすら不気味だった。
もぞもぞと女性が動いている音が響いた。生きてた。
それを見て、おっさんが焦り始めた。動揺の色を隠せない様子だ。マセラティに乗り込む。

「とにかく後ろに乗れ。詳しい事情は後で話す。」
僕は乗らなかった。誘拐だと思ったからだ。唯一の目撃者を始末するために、どこかに連れて行く気だ。そう推理した。



322:◆J3hLrzkQcs:2007/01/26(金)18:01:50ID:3YqwWs8A0
「俺を信じろ」
そう言われるが無理だった。やはりここは救急車と警察を呼ぶべきだ。
(当時、まだケータイは普及していなかったので)急いで公衆電話を探す。
すぐに見つかった。

よりによって女性が倒れている家のすぐそばに電話ボックスがあった。
でも、こんな場所に電話ボックスなんてあったけ?いや、そんなことは関係ない。
今は一刻を争う事態だ。ぐずぐずしていると死んでしまう。電話ボックスに向かって走り出した。

「馬鹿!戻れ!そっちに行くな!」
おっさんの叫ぶ声が聞こえる。知ったことか!電話ボックスに飛び込み、急いで119に電話。電話ボックス側は垣根がないので、倒れている女性が見える。

上半身は塀に隠れているものの、脚だけは見えた。小刻みに痙攣している。
僕は、それを見ないよう背中を向けて、呼び出し音を聞いていた。
おっさんは黙って運転席から僕を見ていた。
受話器を取る音が聞こえた。

「ふふふふふふふふ…」

思わず受話器を落としそうになった。そりゃそうだ。いきなり受話器から女性の笑い声が聞こえたからだ。
背中に視線を感じる。後ろを振り返るとゾッとした。
女性がまさに電話ボックスのガラス一枚挟んで立っていたからだ。
僕は、ここで初めて女性の顔を見た。バサバサに散らばった黒い髪と眼球の無い空洞の目。それだけしか分からなかった。
他の部分は、吐きかけた息でガラスが曇って見えなかったからだ。

蛇に睨まれた蛙のように動けなかった。背筋が凍ってしまい、何とも嫌な汗が全身に滲み出るのが分かった。腰こそ抜かさなかったが、筋肉が弛緩したせいで思わず失禁。

脚をつたう温かい尿のおかげで感覚が戻ると、脊髄反射のごとくおっさんのいるところまで全力疾走。
参考書がパンパンに詰まったリュックを背負っていたのだが、そんなのもろともせず、我ながら驚くスピードだった。
どうやらマセラティのエンジンがかからないらしく、おっさんはいきなり僕の腕をつかむと、そのまま引っ張るようなかたちで走り出した。

「走れ!絶対に後ろを見るな!」

こうなったらもうおっさんに従うしかない。
背後で引きずったような音が、どんどん近づいているのが聞こえる。



323:◆J3hLrzkQcs:2007/01/26(金)18:03:18ID:3YqwWs8A0
ずるずるずるずるずるずるずるずる…

「這ってこの速さかよ。脚をだめにしなかったら車でもダメだったな…」
悲鳴にならない叫び声をあげながら、もう無我夢中で走る。が、リュックを背負って走っているので思うように走れない。

「おい!リュックなんか捨てろ!つかまるぞ!」
そう言われるが、捨てるのをためらう。人間こんなときでも欲だけはちゃんと働くんだなって思った。

そんな僕を見かねたのか、おっさんは呪文のような言葉を唱え始めた。
もう今にも追いつかんばかりに、ずるずると這う音が迫ってくる。そして首筋に生暖かい吐息がかかるのが分かった。
耳元で息遣いも聞こえる。もうだめだと思ったそのとき…

バン!
後ろで爆竹のような爆発音がした。その音に紛れてうめき声が聞こえる。
何かがのた打ち回るような音もする。もう這う音はしない。
しかし、おっさんはそんなことお構いなしに走り続けた。

どれくらい走っただろうか?
学校の体育で持久走をやっているためか、はたまた火事場の馬鹿力のおかげか分からないが、よくもまあずっと走れたと思う。
どこをどう走ったのか分からない。
気付いたら、自分の家から300メートルくらい離れた場所にある神社にいた。失禁してビショビショだった下半身もいつの間にかすっかり乾いている。

道路を行き交う車が見えた途端、助かったという安心感と疲労感のせいで力が抜けてしまい、リュックの重さも手伝って、路肩にへなへな~としゃがみこんでしまった。
喉がカラカラに渇き切って唾が出なかった。手水舎があったので水を飲む。

おっさんがやってきた。とにかくお礼をしなきゃ。しかし、興奮状態で呼吸が乱れてて、うまく呂律が回らない。

「あ…あの…助けてくれ…テ…ありがトう…ございましタ…。」
おっさんはネクタイを結びなおしつつ
「なに、礼には及ばないよ。」
と一言。深呼吸を繰り返し呼吸を落ち着けている僕を、おっさんは横目で見ながら「
どうしたもんかな…。」
と呟いていた。



324:◆J3hLrzkQcs:2007/01/26(金)18:06:30ID:3YqwWs8A0

「あれはいったい何なんですか?」
境内のそばにある電灯の明かりで、おっさんのサングラスが怪しく光る。

「誰にも言わないと…約束できるか?」
「え?どういうことです?」
「約束できるのか?できないのか?どっちかと聞いているんだ。」
「どうせ今日あったことなんか言っても誰も信じてくれません。だから僕…誰にも言いません。約束します。教えてください。」

サングラスで分からなかったが、真剣な目で僕を見ているのが分かった。
タバコに火をつけ一服すると、おっさんは話してくれた。

すっごい複雑な話なので、各々の名称を読みやすいようにアレンジし、簡略化したものを書いておきます。

昔、ある豪族に代々仕える一族がいたそうだ。
一族は2つのグループに分かれており、結界などによって病気や災いから味方を守る祈祷師グループと、呪詛などによって敵を滅ぼす呪術師のグループで、互いに対立し合う関係だった。
その一族の助けもあって、豪族も栄えることが出来たので、一族の有力な人物には、褒賞として位を授けたり、領土を与えたりしたそうです。
そのため、呪詛によって勢力拡大に貢献することが出来る呪術師グループは、どんどん成長していきました。

そんなある日、その豪族の長が病に倒れてしまいました。
当時、病は悪霊による仕業と考えられていたので、豪族は祈祷師に助けを乞いました。
祈祷師グループにとっては手柄を立てる、またとない大チャンスです。
莫大な恩賞を交換条件に引き受けました。
しかし、何か見えない力に邪魔されているのか、なかなか思うように事が進まなかったそうです。

そこで、祈祷師グループのリーダーだった青年が長を看病し、残り全員がその周りを囲んで結界を張るかたちをとりました。
祈祷師たちはその間、その場から一歩も動かず、何日も飲まず食わずのままで耐えていたそうです。
そのかいもあってか、ようやく悪霊が長の口から出てきたのだが、青年はそれを見てギョッとしました。



325:◆J3hLrzkQcs:2007/01/26(金)18:07:46ID:3YqwWs8A0
悪霊の正体は呪術師グループのリーダーだったのだ。
よりによって長が一番信頼を寄せている人物が、長を憑り殺そうとしていただなんて…。
内乱を避けたかった青年は、口が裂けてもそのことを長に言わないことを決めました。

手柄を認められ、褒美に位と領土と豪族の末娘をもらった祈祷師グループは大喜びでした。
祈祷師のリーダーと末娘は契りを結び、祈祷師グループは念願だった豪族の仲間入りを果たすことが出来ました。
やがて2人の間には子供も生まれます。
それを苦虫を噛み潰した表情でじっと見ている呪術師グループ。

あの一軒の騒動で危険視されたため呪術者たちは、位も領土も片っ端から剥奪されていきました。
彼らの不満や苛立ちはどんどんたまります。

まさに自業自得なんだけれども、自分たちの先祖が積み立ててきた功労が失われていくのを見るのは、さぞや無念だったと思います。
そして呪術師のリーダーが位を剥奪されたことで、怒りが限界に達したらしく、とうとう内乱が始まってしまいました。
古代の呪術によって悪霊や生霊をけしかける呪術師たち。
自然の神々の力をかりた結界をはることで呪い返しをする祈祷師たち。

一族の殺し合いによって、たくさんの人が呪い殺され、処刑されました。もちろん一族以外の人もたくさん殺されました。
また、高度な呪詛や自然の神々の天罰によって大地震や大干ばつといった災害が多発し、それが元で大飢饉が起こり、
そこでも数え切れない人々が餓死していったそうです。
繁栄は、あっという間に終焉を迎えました。

「その話が、僕と何か関係があるんですか?」
話の区切りがついたところで僕は聞いた。

「大ありだよ。君は、祈祷師と豪族の間に出来た子供の末裔なんだから。」
事態が全然飲み込めなかった。完全に自分の理解の範疇を超えてしまっている。
いや、そもそもこんなオカルトチックな話なんか簡単に信じちゃっていいのだろうか?
僕は、こんな時どうすればいいのか対処法が分からなかった。



326:◆J3hLrzkQcs:2007/01/26(金)18:09:05ID:3YqwWs8A0
「どっかの馬鹿がさ、掘り返しちゃったんだよね。封印されていた呪詛を。」
聞けば、さっき追いかけてきたあれは、呪術師の使う呪詛の一種なんだそうだ。

「人を呪えば穴二つってことわざ知ってる?呪いって失敗すると呪った相手のところに帰っていくんだよ。でも呪いをかけた奴は、はるか昔に死んでるわけだ。ゆえに呪いは、また君のとこに戻ってくる。何度でもね。」

血の気が引いたのが分かった。あんなのがまた戻ってくる?しかも何度でも?
冗談じゃない。本当に洒落にならないほど怖かった。

「だから君を助けに来た。」

少なくともこの人は味方ってことだけは分かった。おっさんは、自分は式神みたいなもんだと言っていた。
どうして僕のことを知ってるのか聞くと
「式神だから」
としか答えなかった。

「とにかく今回は初めてだったし、僕も地理的に分からないことだらけだったから、探すの遅くなっちゃったけど…。次からはもっと早く助けに来る。だから安心なさい。(時計を見ながら)まずいな、だいぶ話し込んでしまった。君はもう帰りなさい。親が心配する。」

おっさんは
「ではまた。」
と言うと、僕に背中をクルっと向けて、カツカツと革靴の音を鳴らしながら何処かに行ってしまった。
夜風が、あっけにとられている僕にいつまでも吹きつけていた。
これが僕とマセラティおじさんの最初の出会いだったのだ。


引用元:死ぬ程洒落にならない怖い話をあつめてみない?156
https://hobby9.5ch.net/test/read.cgi/occult/1169205119/320-326












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女主人

2018.11.21 (Wed) Category : 創作作品

612本当にあった怖い名無し2018/11/14(水)01:04:00.26ID:32mkK2K30
『女主人』

これは俺が大学に通ってた時の話
といってももう20年近く前か

大学入学後は飲みばかりで友人Aと俺は、しょっちゅう街まで酒を飲みに繰り出してた。

街と言っても地方の僻地にあるような町で、かろうじてアーケード街があるような所。
アーケード自体は7時には消灯しちゃうし、夜は廃墟と言われても信じてしまうほどボロいアーケードだった。

そんな気持ち悪いアーケードでも一軒だけ深夜営業している居酒屋があったので酒飲みのAと俺はもはや常連と化していた。
女主人が一人で切り盛りしている静かだが活気ある良い店だった。

居酒屋に通うようになってしばらく、妙な事に気づいた。
定休日でもないのに深夜営業の居酒屋が閉まってる事があったのだ。
そしてそんな時は必ずアーケード全体になんとも言えない異臭が漂っていた。

なんと言えばいいのか・・腐敗臭なのか糞尿なのか下水からモワッと沸いてくるような神経に触る臭い。
特にその居酒屋付近は臭いがきつく、そんな日は必ず居酒屋は閉まっていた。

ある時、居酒屋の女主人に聞いてみた。
『時々アーケードが臭いときあるよね。あれは下水の関係?』
女主人は
『不思議なのよ。あの臭いが出たら店も開けられないし困ってるのよ』
と話はじめた。
女主人の話を要約するとこうだ。

この地域は水路も入りくんでいて、居酒屋の下にもちょうど水路が通ってるそうだ。
問題は川上にある畜産農家が動物の死骸や潰した豚牛の不要部分を川に捨てていることだそうだ。
しかも、その川が普段は水門で塞き止められている為、水が腐り悪臭を放つ。
そして水門が開かれると腐った汚水が下流に流れ出し居酒屋の地下を通る水路から悪臭を発生させている、とのことだった。

『不思議なのよ』
とは言うがそこまで原因がはっきりしているならば警察や役所に抗議を出せばいいのにと言ったら何度か女主人もアーケード街代表として近隣住民と共に行政に訴えたそうだが畜産農家のジジイとその家族がいわゆるキ○ガイで、少し収まってもすぐに同じ事を繰り返す問題人物なんだそうだ。



613本当にあった怖い名無し2018/11/14(水)01:05:37.62ID:32mkK2K30
次の日、女主人から聞いた話を学食で話していた時、地元住人の先輩が
『その家族なら地元で有名だね。この大学からも近いよ。ジジイが元々カタギじゃなくて家族で経営してるらしいんだけど廃棄物バラまいたり近所と揉めたりトラブルメイカーだよ』
と教えてくれた。
俺とAは大学からも近いという事を聞き、一度キ○ガイジジイとやらを見てみようかという話になった。

次の休日、俺とAは先輩に教えてもらった通りにキ○ガイジジイの小さな農場に来ていた。
ボロボロの木とトタンで出来た養豚場らしき納屋と畜産場があり、そのすぐ横には川というかデカい用水路があった。

『この用水路にジジイは死骸を捨ててるのか』

俺は怖いもの見たさで用水路を覗いてみた。
動物の死骸や臓物、糞尿でさぞかし悲惨な光景なのだろうと覚悟していたが、そんな事は無かった。
ゴミや泡も浮いてキレイとは言わないが、当時としてはごくごく普通の用水路、想像していた惨状は無かった。
なんだこんなもんかと思い帰ろうかとした時、さっと吹いた風に乗って強烈な悪臭が漂って来た。
吸った瞬間に嗚咽が出る、ガスも混じったような強烈な悪臭。

問題の川からでは無かった、ではどこからなのかと辺りを眺めたがすぐに分かった、なぜなら本来ならギーギーうるさいはずの養豚場が静かすぎるのだ・・。
もしかして、と思い俺とAは養豚場に近づき、既に確信は得ていたがトタンの隙間から養豚場の中を見た。
地獄だった・・。Aはかろうじて耐えたが俺はモロにゲロを吐いた。

養豚場の臭いも強烈だったが、トタンの隙間から見えた光景は酷すぎた。
まず、おびただしいハエの群れがそこらかしこに飛び回り、床に豚の死骸が散乱していた。
小豚なのか親豚なのか原形を保たないほど腐敗し部分的には紫の液状と化して、その中をウジの大群が波打っていた。
一匹として生きている豚はいなかったと思う。

俺とAはあまりに気持ち悪い物を見てしまった後悔と共に、大学に戻る途中の交番で先ほど見た光景を警察官に伝えた。
『ジジイ家族が夜逃げしたんじゃなかろうか』
というのが警察の見解だった。ありそうな話だ。



614本当にあった怖い名無し2018/11/14(水)01:06:40.27ID:32mkK2K30
それからしばらくして思わぬ展開になった。
ジジイ家族全員が家の中で白骨化した状態で発見されたのだ。
死後既に3ヶ月は経っていたそうだ。
豚達は餌を与える飼育員を失い、弱いものから倒れ、死んだ仲間を食いながら延命しつつも最後には全滅したんだそうだ。

数日後、俺とAはまた居酒屋に来ていた。
その日は店も混んでいてジジイ家族が死んだという話は他の常連客の間でも話題になっており、ガヤガヤしていた。

『いやぁ~。驚いたねぇ心中かね?』
『あんな図太い家族が心中するかー?』
『しかし、こういっちゃなんだが水路に豚捨てる奴がいなくなって、今後はアーケードの悪臭も無くなるから嬉しいよな!な?女将さん』

女主人は
『そうね~』
とだけ相づちをうちながら忙しそうに仕事していた。

A『おばちゃん、焼酎おかわり!その話ですけど、家族が無くなったのは3ヶ月前なんだそうですよ。だから3ヶ月前には用水路にゴミを捨てる人はもういなかったはずなんですよ。なのに、先月も先々月も例の臭いが立ち込めてる時がありましたよね。なあ?』

Aに言われて俺も気がついた
『あ~、確かにそうだなっ。そう考えると不思議』
と言いかけた時、何かモヤモヤした。

ん?という感触、、なんだろう、、何か既視感を感じるような、得体の分からぬ恐怖を感じるような、、、背を向けて仕事していた女主人が振り返り、俺を見る。

俺は理解した・・

冷や汗が涌き出てくるのと同時に、むせ返るようなあの嫌な臭いがどこからともかく漂って来るのを感じた。



引用元:死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?352
http://mao.5ch.net/test/read.cgi/occult/1537031148/612-614




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