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都市伝説・・・奇憚・・・blog

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2024.05.19 (Sun) Category : 

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ー鋏供養ー <オオ○キ教授シリーズ>

2018.01.02 (Tue) Category : 創作作品

322:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/09/04(木)23:24:28ID:Dy1HDJvD0
鋏供養 プロローグ 1/2

兄貴が久しぶりに帰ってきた。
教授を連れて来て以来だと思う。
今回は単独。
お寺でも酒肉は禁止されてないらしいけど、帰ってくると、
「禁欲生活の反動でさあ」
と言いながら、飲みまくり、食べまくりの破戒僧ぶりを露呈する。
ま、いいけど。家族だし(笑)。



323:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/09/04(木)23:25:28ID:Dy1HDJvD0
鋏供養 プロローグ 2/2

夜中までウダウダと飲み続けている兄貴と父のテーブルに顔を出すと、
「まあ座れ」
と、ビールの缶を差し出された。お休みを言いにきただけなんだけど(汗)。
「オオツキ教授の運転手は楽しいかい?」
と聞かれて、複雑な気分になる。

実際、もう今回でやめると何度思ったか知れないのに、呼び出されると、ついつい好奇心が動いてしまうんだ。
「まあ…ぼちぼち」
と答える。

すると、兄貴は急に真面目な顔になって、持って来たカバンの中をごそごそとさばくりだした。
「今度行くところは障りがあるっていう話だから、これを持ってきた」
手渡されたのは、よくあるお守り。
でも、このお守り、表に何も書いてない。
普通は何か文字が書いてあるでしょ?【交通安全】とか、ただの【御守】とか。
「これ、どんな効き目があるの?」
と聞いても、兄貴は馬鹿話に興じていて答えてくれなかった。
こんなことされたのは初めてだ…。なんだか不安になった。



324:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/09/04(木)23:26:26ID:Dy1HDJvD0
鋏供養 1/8

「今日は障りがあるようなところに行くんですか?」
教授を自宅まで迎えに行き、車に乗せてから、開口一番に尋ねた。
教授はキョトンとしたけど、すぐに合点が行ったようで、
「ははあ…。住職が忠告でもしにきたかね?」
と楽しそうに聞き返した。
「ええ。お守りをもらいました。」
と答えると、見せろと言う。

教授に見せると効力が落ちそうな気がしてイヤだったけど、渡してみた。
教授はすぐに袋を開け、中のお札を取り出した。
「シバか。難しい神に帰依してるんだな」
謎の言葉を発して、お札を袋に戻す。
「何が書いてあったんですか?」
と聞くと、
「キリークだよ」
と、ますますわからない返事。



325:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/09/04(木)23:27:43ID:Dy1HDJvD0
鋏供養 2/8

詳しく聞いてみると、こういうことらしい。
兄貴のお守りの中にあったお札には、梵字という文字が書かれていた。
梵字っていうのは、インドで使われている文字らしい。
教授の時代にはキリークとも呼んだ。

卒塔婆の一番上に筆書きっぽい記号が書かれてるでしょ?あれが梵字。
お守りに書かれていたのは【大黒天】を表す文字だった。
大黒天は、インド神話のシバ神の和名だ。

「大黒天は大黒さまとも呼ばれて七福神に登場しているね。仏教では愛嬌のある姿で描かれるけど、元々は、破壊とその後の再生を司る暗黒神なんだ」
教授は説明を続けた。

「仏教は、知ってると思うけど、インドのヒンズー教から派生した宗教だ。だからインド神話の神が形を変えて仏になっている場合も少なくない。大黒天のモデルはインド神話のシバ神。蒼い象の顔をした神様だよ」
私はなんとか理解して、先を促した。

「オリジナルのシバ神は、大黒天よりもさらに過激な性質で、世界を滅ぼす神とも呼ばれている。仏教の風土には合わない、恐ろしい存在だよ」
「…そんな縁起の悪い神様のお守りを、何で、兄貴は私に渡したんでしょうか…?」
なんだかウツな気分になる。
「魔には魔を、ということだろう。祟りに対して、これほど強力な守護神はないじゃないか」
教授の言葉に、即座に(兄貴ありがと!)な気分になった私は、かなり現金だ。



326:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/09/04(木)23:28:36ID:Dy1HDJvD0
鋏供養 3/8

でも、やっぱり恐ろしい神様にはそれなりのリスクがあるよう。
教授は、
「喜んでいいものかは知らんよ」
と続けた。
「住職というのは、本来なら寺の本尊に帰依しなければならない。効果重視なのはわかるが、最高位の如来を差し置いて、格下の【天】なぞに入魂したら、それこそ障りじゃすまないんじゃないかね」
「…」
意味は…よくわからない。
でも、兄貴は、私のために、なにかとてもまずいことをしたんだろうか。

恐々としていると、教授が、突然、大笑いした。
「冗談冗談。神仏なんぞ何もせんよ。美しき兄妹愛を確認しようと思ってね」
「…」

私は思いっきりアクセルを踏んだ。60の老体が背もたれにバウンドするのもかまわずに。
教授は本当に意地が悪い!



327:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/09/04(木)23:29:22ID:Dy1HDJvD0
鋏供養 4/8

1時間も走ると、今日の目的地に着いた。
小さなお宮だった。参道ばかりがやたらと長い。
両脇の鎮守の森からは、不思議なことに虫の鳴き声さえ聞こえなかった。晩秋とはいえ、まだ死に絶える時期じゃない。
「ここは刃物の中でも鋏(はさみ)を専門に供養するお寺なんだ。毎年、慰霊祭の終わったこの時期にお参りさせてもらってるんだよ」
人気のない径を行く教授の声も、いつになくか細かった。

「静かですね…」
呟くと、教授は森の樹木を仰いで、言った。
「刃物は生命を断ち切るからね。見つからないように、声を潜めておかないと」
「………」
見つからないようにって…何に?刃物に?
見つかったら…どうなるんだろう…。



328:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/09/04(木)23:31:18ID:Dy1HDJvD0
鋏供養 5/8

長い長い、1kmはあるんじゃないかと思われる参道をやっと抜けて、私たちはお宮に辿りついた。
拝殿があるのかと思ったら、境内には小さな祠があるきりだった。
でも、私は足を止めた。と言うより、進めなくなった。
祠の手前に大きくて無骨な鉄製の檻が置かれている。その中に、ギラギラと殺気さえ感じさせる鋏の軍団が納められていたから。

立ちすくんでいる私に、教授が、きっと理由はわかってるんだろうけど聞いてきた。
「どうしたね?」
「痛くて近づけません」
我ながら妙な答え方をした。
教授は大きく頷きながら、
「だろうね。ここは現役の禍つ神だから」
と納得した。

……ってことは、祟るってこと(汗)?

「帰っていいですか?」
と怖気づいたら、教授はニヤッと笑った。
「僕も最初に訪れたときはお参りもせずに逃げ帰ったよ。それから、たびたび、運転中にタイヤがパンクするようになった。何も踏んでないのにゴムが裂けてしまうらしい」

「そ…」
そういうことは先に言ってよお…。
「だから君に運転手を頼んでいる。君まで祟られたら、今後の活動に差し障るから、しっかりと供養をしていくよ」

今日が済んだら、二度と、絶対に、教授には付き合わない。
私は改めて決意した。



329:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/09/04(木)23:32:37ID:Dy1HDJvD0
鋏供養 6/8

敷地の許す限り、檻を大きく迂回して、そのむこうにある祠の前に立った。
教授は、想像するにかなり高額のお布施を封筒に入れて、賽銭箱に投じた。
榊を供え、二拝二拍手一拝する。私も真似た。
古語っぽい言葉で何かを唱えたので、終わってから内容を聞くと、鎮魂の祝詞だということだった。

祠が閉まっているのでご神体は拝めない。けれど、代わりに、観音扉の前に安置されている鋏を、祝詞の間、じっくり観察することができた。
なぜこれだけ檻に入れられていないのだろう?明らかに、他の物とは別格の扱いだ。
裁縫の布切り鋏ぐらいの大きさで、赤茶色の錆にまみれている。

帰り道の途中で、教授に聞いてみた。
「あの祠の鋏は何だったんですか?」
教授は、一段と声を潜めて、言った。
「中絶のとき、母体から取り出した胎児の臍の緒を切るのに使った鋏だよ」

刃物は生命を断ち切る。
さっきの教授の言葉が頭の中にぐるぐると回った。



330:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/09/04(木)23:33:27ID:Dy1HDJvD0
鋏供養 7/8

帰路の運転が拷問のように感じられた。
緊張しすぎてガチガチに固まった腕は、ハンドル操作を何度もミスって、ガードレールを破りそうになった。
数キロ進んでは車を停めて休み、また走る。
チャイルドシートを乗せた車が近づくたびに、乗っている赤ん坊が本物かどうか目を凝らした。

怖い。いまにもタイヤが破裂してスリップしそうで。いまにも肩口から目も開いていない小さな赤ん坊の顔が覗きそうで。
私の怯え方が異常だったので、教授が非常に失礼なことを言った。
「もしかして君には水子がいたかな?」
「違うっ!」
キレ気味に返事するときさえ、涙目になる。



331:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/09/04(木)23:34:59ID:Dy1HDJvD0
鋏供養 8/8

「高校のときに…」
気を紛らわすために、私は教授に語り始めた。

「私、クラス中にいじめに遭っていました。たぶん、かなり精神的に参ってたと思う。でも当時は、大丈夫って自分のこと元気づけてて」

「文房具を取られたり、連絡事項を伝えてもらえなかったり…。ただ、そういうのは、やっているほうが惨めなんだって言い聞かせて我慢できたんです。」

「強気でいられたのって、いじめのキッカケが正義感だったからかもしれない。うちのクラスに、ある日、下級生が呼び出されてきたんです。なんか細かいことで難癖つけられて泣いてて。だからやめさせようとして口を出したの」

そこまで話して、ちょっと落ち着いたので、笑う余裕ができた。
「半年ぐらいで、みんな飽きたのか、そういう陰険なことはなくなったんだけど、一つだけ、いまでも罪悪感を感じてることがあります」

「お金をたかられたんです。一回ね。クラスメートで、唯一私の味方をしていた女の子が妊娠したから、堕胎費用をカンパしろって。もちろん断った」

「嘘だと思ったら、その後、彼女、学校を辞めました。何が原因かはわからなかったけど、私は無関係じゃなかったと思う」

「仕方のない中絶は許されたりはしないのかな」
と呟くと、教授は、
「罪が許されるのは人間のルールの中だけだ。神仏の世界はもっと簡単で、人を殺せば地獄行き」
と明快に答えた。



332:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/09/04(木)23:35:49ID:Dy1HDJvD0
鋏供養 エピローグ 1/3

幸い、事故もなく家に着くことができた。
1時間で済んだ往時に比べて、帰りは4時間近くかかった。疲れきってすぐに布団に入り、目を瞑る。
あ。兄貴に生還連絡をしなきゃ。
横になったまま携帯をプッシュすると、待ち構えたように力強い声が返ってきた。
「おー。無事だったかあ」
ほんとに心配してくれてたんだ(笑)。

今日一日のことを話して、お守りのお礼を言った。
兄貴は、
「げっ。教授、あの文字の意味がわかったの?」
って驚いてた。
「あんまり変な神様を信仰しちゃダメだよ」
と冗談めかして諌めると、
「他に跳ねる仏を思いつかなかったんだ」
と返事が返ってきた。
…跳ねる?



333:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/09/04(木)23:37:10ID:Dy1HDJvD0
鋏供養 エピローグ 2/3

兄貴の話によると。
仏門の修行を修めたとはいえ、兄貴には、まだ退魔や破魔の力はないらしい。
つまり、兄貴のお守りには【魔を退治する】効力はなかった。
だから兄貴は、大黒天という強力なバリアの機能を私の身につけさせて、魔を【外へ飛ばす】ことを試みた。

…【試みた】っていうのは、お守りなんか作ったのは今回が初めてだったそうで、兄貴自身にも効果はよくわかってなかったから(汗)。
外に飛ばされた魔は、私の意識や持ち物を通じて、父や母に仇をなすかもしれなかったみたいなんだ。

それを防ぐために、兄貴は、わざと、お守りの袋だけ祈祷をせずに不浄のままにしておいた。そしてその切れ端を自分の袈裟の袂に入れて、今日一日、行動をしてくれていた。

「そっそれで、兄貴には何もなかったの?!」
と聞くと、
「それがさあ」
と情けない声が返ってくる。
「俺、今日、葬式が入ってて、昼ちょっと前に檀家でお経上げてたんだよ。その最中に袂がえらく重くなったんで、こっそり見たら」
「生まれたての赤ん坊から、2歳ぐらいの子どもまで、数体が袖の中から腕のほうに上がってこようとしてたんだ。もうビビったのなんのって」
昼前といえば、あのお宮にいた時刻ぐらい。
そっかあ…。お守り、やっぱり助けてくれてたんだね。



334:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/09/04(木)23:45:01ID:Dy1HDJvD0
鋏供養 エピローグ 3/3

お葬式の後、兄貴は慌ててお寺まで帰って、こっそり護摩を焚いて供養した。
その最中、祭壇に置いてあった袈裟の袖が、切り裂かれたように何筋もの穴を開けた。
「お庫裏(くり)さんに怒られた怒られた」
10歳年上の奥さんを、兄貴はそう呼んでいる。奥さんはいまも修復にかかりっきりだそうだ。

「水子って怖いね」
としみじみ言うと、兄貴ははっきりと否定した。
「違う。子どもは親を慕っているだけだ。悪意があるわけじゃなくて、ただそばにいたいんだよ」
「でも…」
中途退学した友達の顔が浮かんだ。
「生きてる人間には、すごく迷惑だよ…」
こっそりと中絶さえできたなら、彼女は普通に高校生活を送れたのに。

…私がカンパさえしていたら、人生を狂わせることはなかったかもしれないのに。

「子どもっていうのは、すぐに大きくなって、手がかからなくなるんだぞ」
兄貴が反論する。
「ほんの数年がんばって育ててやれば楽になるのに、その不自由すら恐れて子どもを生んでやらないのは、親の前に人じゃねーよ」

神仏の世界は厳しいな。
と、こっそり思った。



引用元:【霊感持ちの】シリーズ物総合スレ5【友人・知人】
https://anchorage.5ch.net/test/read.cgi/occult/1219147569/322-334













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ー女地蔵ー <オオ○キ教授シリーズ>

2018.01.01 (Mon) Category : 創作作品

282:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/09/03(水)00:09:30ID:x9pNnhBn0
女地蔵 1/7

前回の目明き地蔵で、いわくつきの地蔵さまもあるのだと知ってから、しばらく。
教授が、また
「地蔵を見に行くぞ」
と言ってきた。

今回はほのぼのした話。
N県の中規模のお寺に安置されている【女地蔵】の拝観だった。
このお地蔵さまは鎌倉期に造られた古いもので、人とほぼ同じ背丈を持ち、珍しいことに、体の造りが完全に女体化しているらしい。
「観音さまなら女性に見えないこともないんですが」
と教授相手に恥知らずな感想を述べると、
「インド神話のラクシュミという女神が起源だから当たり前だ」
と、呆れられた。
そんなこと、一般的な知識じゃないじゃんよ(涙)。



283:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/09/03(水)00:10:26ID:x9pNnhBn0
女地蔵 2/7

なぜ、女神起源説もない地蔵尊に女性の性別を与えたのか?
尋ねると、教授は、例の鼻にかかった気に触る言い方で答えた。
「女地蔵はもともとG村の守り本尊でね」
「昔、その村には、手のつけられない暴れ者の若い男がいた。男は出生時に母を亡くしていたので、村人は、男の暴力を収めるために、母親の代わりになる女地蔵を造ったんだ」
…なるほど。

「で、男はおとなしくなったんですか?」
と重ねて聞くと、
「なった。でも、すぐに病気で死んだ」
と、愉快そうに答えた。
まったく…。なんだかなあ、この人の思考回路って…。

山道も悪路もない順調な行程で、昼には寺についた。
観光客に混じって駐車場に車を停めた私は、少し浮かれ気分だった。
「お腹空きましたねえ。あとで駅前のメイン通りに行きましょうよ。食べるとこ、調べてきましたから」
と、教授に向かってガイドブックをちらつかせる。
意外にグルメの教授は、笑って承諾してくれた。



284:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/09/03(水)00:11:06ID:x9pNnhBn0
女地蔵 3/7

拝観料を払い、地蔵尊のお堂に向かう途中、教授が不穏なことを言い始めた。
「暴れ者の若い男が、地蔵ごときでおとなしくなったのはなぜだろう」
【ごとき】って…(汗)。祟られても知りませんよ、私は。
あ、お地蔵さまは祟らないか。

「村の人が、自分のことを心配してくれているのを知ったからじゃないんですか?」
隙がないぐらいまともなことを言った私。
でも、教授はニヤニヤと笑う。
「君には若人の生理現象はわからないか」
…生理現象と地蔵のどこに関連がある?

靴を脱ぎ、堂に上がり込む。
御簾の向こうに、木像のおなかの部分が見えていた。
「あれが女地蔵ですか」
確かに、ウェストは艶かしくくびれていた。
無遠慮な教授の後について、もっと近寄ると、豊満な胸と腰布に覆われた下半身が目に入ってくる。
…私よりスタイルがいいかもしれない。

「母親と言うより、若い女だな」
教授は、無人をいいことに、賽銭箱も乗り越えて、御簾の中に入ってしまった。
や、やばくない(汗)?



285:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/09/03(水)00:11:54ID:x9pNnhBn0
女地蔵 4/7

「どこまで行くんですか?!怒られちゃいますよ」
ハラハラしながら教授を止めるけど、この人はまったく気に止めない。
地蔵尊の前に仁王立ちした後、側面を覗いたり、後ろに回ったりしている。
見ていられなくて、私は本殿に背を向けた。
「教授~。それって、国宝級の文化財なのでは…」
と、半泣きになりながら、目は入り口を監視していたりする。
誰も入ってこないでよお。

「そんな認定は後世の人間が勝手に決めたものだ。そういう差別は、僕は好かん」
いや…教授がどう思うかじゃなくて…。

「何してるんですか?そこまで近づかないと調べることができないんですか?」
畳み掛けると。
こんなことを言われた。
「精液の痕を探してる。若人の暴走を止める目的なら、射精で落ち着かせるのが一番だからね」

このときは、もう二度と教授に付き合うものかと思った。



286:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/09/03(水)00:12:25ID:x9pNnhBn0
女地蔵 5/7

結局、何も収穫がないまま、地蔵堂を後にした。
「僕は美談は信じないから、人間らしい痕跡を探したかったんだけど」
と言い訳する教授。
…もうどうでもいいよ。疲れた。

「教授は、若い男が暴れたのは、…その…性欲のせいだと思ってるんだ」
我ながら露骨だと赤面しながら、教授に確かめる。
「そう。フロイトも言ってるでしょう。思春期の青年を狂わせるのはリビドーだと」
リビドーっていうのは性衝動という意味らしい。
「でも、まさか木像相手に、そ…そんなこと、しないでしょ?」
と否定したけど、男性の性欲については、よくわからない。

「僕の若い頃には、普通に木や石なんか使ったけどね」
「………」
う、うーん…。なんと言っていいのやら。



287:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/09/03(水)00:13:16ID:x9pNnhBn0
女地蔵 6/7

「もしも、若人が暴れた原因がリビドーに因るものなら、若人は、いずれ、仮の道具なんかじゃ満足しなくなっただろうね」
駐車場に続く砂利道を下りながら、教授は続けた。
「村には女性もいたはずだ。手当たり次第に襲いかかる若人を、村人はどうしたのかな。病気で死ぬまで待っただろうか」
キーを開けながら、私は黙って聞いていた。
「単なる昔話なら、改心した若人は、村人のために尽くして大往生を遂げるはずだ。なのに、なぜすぐに彼は死んだんだろう」

教授に助手席に乗るように促し、自分も運転席に身を置きながら、思った。
それは反則だよ、教授。
そんなふうに言われたら、教授の仮説を信じるしかなくなる…。
【若者は、村人に粛清されたんだ】

エンジンをかけ、いつもの癖でサイドミラーとルームミラーの角度を確認した。
両方ともに、私の背にへばりついて、私の顔を覗き込んでいる、獣のような大口を開けた若い男の姿が映った。



288:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/09/03(水)00:14:34ID:x9pNnhBn0
女地蔵 7/7

絶叫は境内まで響いたらしい。
私と教授は寺に保護された。

止まらない震えと涙を、それでもなんとか抑えた。
出してもらった熱いお茶をすすったあと、隣室に用意された布団にもぐらせてもらう。

教授と住職の話が聞こえてきた。
「若い女性にはときどきあるんですわ。まあ、すぐに落ち着きますが」
「それはありがたい。あれが運転してくれないと、昼飯を食いはぐれますから」
…教授の馬鹿。小声で悪態をついた。

「獣のような若い男を見たということですが、何かお心当たりが?」
住職が教授に聞いている。
「いえいえ。まったく」
教授は笑いながらとぼけた。
ずるい!

「そちらには心当たりがありますかな?」
今度は教授が住職に聞いた。
私も耳をそばだてた。

住職いわく。
「女地蔵の由来に関係しているのかもしれません。あれは、表向きは和やかな話になっていますが、実は食人を重ねた異常者の魂を慰めるために造られたものです」
教授が補足した。
「それが【若い男】の正体ですな。業の深さゆえに、いまでも女性を食べる欲求を捨て切れていないと」

私は、頭から布団をかぶった。
いまにも食いつきそうだったあの顔が、脳裏から消えない。


引用元:【霊感持ちの】シリーズ物総合スレ5【友人・知人】
https://anchorage.5ch.net/test/read.cgi/occult/1219147569/282-288














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ー目明き地蔵ー <オオ○キ教授シリーズ>

2017.12.31 (Sun) Category : 創作作品

247:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/09/01(月)13:22:13ID:G3xoKKW20
目明き地蔵 1/8

郷土史家のオオツキ教授について回ると、たびたび遭遇する仏がいる。
お地蔵さまと呼ばれるものだ。

立派な寺に安置されている場合もあるけれど、多くの場合は、簡素な社に入れられて道端に置かれたり、ひどいと野ざらしで風貌もわからなくなっていたりする。

教授の話によると、地蔵尊は、他の神仏のように祟りをなさないのだそうだ。
人間を厄から守ることにひたすら精進してくれるありがたい存在であるらしい。

代表的な昔話である【傘地蔵】も、この地蔵尊の奇跡の物語の一つ。
江戸期以前、病気や災害といった厄疫に科学的な対抗手段を持たなかった人々は、自分たちの村にそういうものをもたらす【魔】が入り込むことを恐れた。
そこで、村の入り口である辻に地蔵尊を立て、バリアの役目を課したのである。

傘地蔵は何体だったか、すぐに思い出せるだろうか。答えは6体。
この数は、人間が死んだあとに振り分けられる【六道】という世界に関係がある。
天国に行く道、人間として生まれ変わる道、動物に転生する道、戦闘に明け暮れる道、ひたすら飢える道、地獄に落ちる道。

どの道にも地蔵尊が現れて、迷える魂を最善の方法で昇華させてやるのだとか。
つまり、6体揃ったお地蔵さまは、死後の世界でまで無敵だったというわけ(笑)。



248:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/09/01(月)13:22:56ID:G3xoKKW20
目明き地蔵 2/8

そんな地蔵尊にまつわる呪いや贄の伝承があるはずもない。
「お地蔵さまを見に行くよ」
と教授が言うときだけ、私は安心してついていくことができた。
あの村に行くまでは。

そこは3つの県が境界を接している小さな村落だった。
いまは、それでも人口300人ぐらいはいるらしいけど、明治維新で統合される前は、U村一の沢、U村二の沢、というように、川に沿って、上流から小さな集落で分けられていた。
向かったのは、一番上流にある一の沢だった。
いまは廃村となっている。

「一の沢は、それ以上登ることができない土地に開かれた集落で、作物が取れるような場所でもなかったんだ。だから、住んでいたのはエタや非人。どういう人間だったかわかるかな?」
教授に聞かれたので、うろ覚えの教科書の知識を引っ張りだした。

「たしか…自分で田畑を持てない、最下層の人たちのことでしたよね?」
「そう。農民となることすら禁じられた人間たちだよ。士農工商の身分制度の中で、実質、一番下に置かれた農民たちの劣等感を和らげるために作られた礎だ」
教授の話は中学の先生の話と合致する。私は素直に頷いた。



249:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/09/01(月)13:23:34ID:G3xoKKW20
目明き地蔵 3/8

「それでも、一の沢は住人にとって安住の地であったんだ。痩せた土地に芋を飢え、野生動物と競るように木の実を取り、なんとか命をつなぐような暮らしであってもね」
「…」

わかる。人間として扱われることすらなかった人々が、獣のような山野の暮らしではなく、定住する村を持てたんだ。
安心して眠れることが彼らをどんなに幸福にしたか。私には容易に想像がついた。

「ただ、住人には常に外敵がいた。二の沢以降に住む農民たちだ。米を食んで体力のある連中は、慢性的な栄養失調の非人たちを好きに蹂躙できた。意味はわかるかな?」
わからない。私は首を横に振った。

「つまり、現代でいう快楽殺人のようなものだ。一の沢の住人は、そこまで軽んじられていたんだ」
鼓動が倍になった。掌に汗が浮かぶ。



250:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/09/01(月)13:24:18ID:G3xoKKW20
目明き地蔵 4/8

教授の指示で車を進入させたのは、小さな川に沿って伸びる未舗装の道路だった。
左手は沢、右手には金色の稲穂が実った田が延々と続いている。
民家も、まだチラホラと見ることができた。

「このあたりは四の沢と呼ばれていた所。先に進むと一の沢まで辿りつけるんだけど、車では無理だね」
と言うので、私は路肩に車を停めた。
降りて、見ると、まっすぐに進む小道は、数十メートル先で薮に侵食されていた。

日は高いのに、ものすごく心細かった。
この先に、人が人を殺してきた現場が残っているんだ。
先に歩きながら、教授は続ける。

「農具すら持たなかった一の沢の住人には、現実的な自衛は不可能だった。彼らは何をしたと思う?」
「えっと…」

教授との会話だというのに、頭が麻痺してて、宗教がらみの答えが出てこなかった。
教授は気に触る高笑いを響かせて、言う。

「お地蔵さまを立てたんだ。一の沢と二の沢の間の辻にね。でも、そんなものは何の役にも立たなかった。立つわけがない」
「…」

そのとおりだけどね。そういう言い方はないんじゃないかな。
私は見つからないように、教授の背中に蹴りを入れる真似をした。



251:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/09/01(月)13:25:12ID:G3xoKKW20
目明き地蔵 5/8

「気休めの地蔵尊は、すぐに二の沢の人間に壊され、かえって怒りを買った。一の沢には大量の血が流れたようだよ」
「…せめて、嬉しそうに話すのはやめませんか?」

耐え難くなって、私は教授に進言したけど、【かえって煽りを与えた】だけだった。
教授はさらに饒舌になる。

「手口はこう。二の沢の住人、いや、殺人鬼どもと言い換えよう。彼らは、深夜、一の沢に忍び込んで、手薄な家から、病人や女、子どもを誘拐する。それを自分の村の山中に連れて行き、数日にわたって加虐趣味に没頭する」

「リンチ後のボロボロの遺体は、これ見よがしに地蔵尊の前に打ち捨てられる。地蔵尊の前には血の海が広がり、いつしか、土台にまで染み込んでいった」

私は歩くのをやめて、教授から少し離れた。
教授の話には多分に妄想が入っているような気がする。
一緒に、人気のない山に入っていくのが怖い…。

「…そのお地蔵さまが、まさか、まだ残っているんですか?」
史実なのか確かめるためにも、聞いておかないと。

「残ってるよ。今は四の沢の出口に移されたから、もうすぐ着く」
教授の言葉どおり、前方の薮に、木造の丸い頭が見え隠れしていた。

思いがけず早い対面に、足が震えた。



252:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/09/01(月)13:25:50ID:G3xoKKW20
目明き地蔵 6/8

オオツキ教授は、そこでいったん立ち止まった。
秋の風が稲穂を揺らし、赤とんぼが群生していった。

「でもね、地蔵尊はとうとう願いを叶えたんだ」
教授の声は、先ほどの熱に浮かされたようなまくしたて方とは一転して、静かだった。

「一の沢の住人がずっと祈っていた結果は、現実になった」
「それは何ですか?」
私は、そばの岩に腰かけて、動悸が治まるのを待ちながら聞いた。

「復讐だな。自分たちの生活を安穏とさせることより、殺人鬼どもが壊滅してくれることのほうが大事になっていたんだ、彼らは」
「…」
そう思って当然の状況に追い込まれた人たちのことが、哀れでしょうがなかった。

「ある日、いつものように一の沢から贄を連れ出した悪鬼たちは、いつものように彼に地獄を与えた。でも、その贄はある病気に罹っていたんだ」
教授は愉快そうに顔を歪めていた。

「天然痘だよ。生きながら腐っていく病気を、二の沢の連中は、自ら、自分の村に招いたんだ」
私も、なんだか、つられて笑った。



253:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/09/01(月)13:26:35ID:G3xoKKW20
目明き地蔵 7/8

二の沢はパニックになった。
助かりたい者が、我先に三の沢に押し寄せた。
事情の飲み込めていなかった三の沢は病人を受け入れ、やがて自らも感染を広げていく。

四の沢の人間は、上流の2集落をけっして村に入れなかった。
五の沢、六の沢も応援に駆けつけ、二と三の沢の住人は、四の沢の入り口のバリケードの前で次々と朽ちていった。

教授の話し方にも因るのだろうけど、二の沢と三の沢の味わった地獄は、一の沢のそれに匹敵していたように思う。

バリケードを越えて四の沢に入ろうとした天然痘患者は、容赦なく槍で突き殺された。
累々と重なっていく屍には、その場で火が放たれたが、中にはまだ死にきらなかった者も多かったらしい。
業火の中から響く悲鳴は、一刻にも及ぶことがあった。

「一の沢の人たちはどうなったんですか?」
と聞くと、教授は、目を細めながら、ゆっくりと歩き出す。
「【駆除】が終わって、麓の役人が検査に来たときには、すでに全滅していたそうだよ」
私も立ち上がった。
すべてが終わったいまのここの空気は、とても澄んでいる気がする。



254:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/09/01(月)13:27:25ID:G3xoKKW20
目明き地蔵 8/8

その騒動の後、上流の沢での蛮行を知った人たちの手で、地蔵尊は手厚く祭られた。
人の絶えた集落から下ろされて、ここ、四の沢に安置されたのも、そういう理由からだった。

教授について、薮の中に無造作に立っているお地蔵さまの前に回った。
台座は、すでに無数の薮の根が入り込んで、大きく割れている。色は特に赤くはなかった。
粗彫りの胴の手足は、わずかに判別がつく程度に刻まれている。鉄の道具を持たない民が、一生懸命、石で削った様子が想像できた。

「この地蔵はね、いまでも、ときどき目を開けるらしいよ」
教授が穏やかな地蔵尊の顔を覗き込みながら言う。
「監視してるんだろうね。人間の顔をした魔物が入り込まないように」
私は、人の営みが立ち消えたその先の山道を振り返って、心の中だけで祈った。
(復讐しか願うものがないような人生を、誰も送らなくてすみますように)

赤とんぼが山に向かって消えていく。
昔、とんぼには祖霊が乗っているから捕ってはいけないと教えてくれたのは、兄貴だっただろうか…。



258:本当にあった怖い名無し:2008/09/01(月)18:50:53ID:PfncZdM3O
教授乙
なんだかやりきれないなあ…



262:本当にあった怖い名無し:2008/09/02(火)08:13:05ID:Z575arJh0
ただの怖い話じゃない。
考えさせられる。



281:本当にあった怖い名無し:2008/09/02(火)22:21:14ID:9QfICBtXO
教授コトリバコ知ってそうですね。



引用元:【霊感持ちの】シリーズ物総合スレ5【友人・知人】
https://anchorage.5ch.net/test/read.cgi/occult/1219147569/247-281













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