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秘密のトンネル
2016.12.26 (Mon) | Category : ホラー・怪奇現象・不思議現象
437:本当にあった怖い名無し:2006/01/28(土)01:53:32ID:PMxL+OOaO
俺の親類には怪談好きが多かった。
祖母や叔父などは、ねだれば幾つでも話してくれたものだ。
中でも俺のお気に入りだった語り部は、年上の従姉妹だった。
この人が変わり者で、普段は無口だが気が乗れば話し巧みにオカルト色たっぷりの怪談奇談を聞かせてくれた。
静かな口調で語られる怪奇は俺を怖がらせると同時に高揚させ、聞き入りながらそこらの物陰に何か潜んでいるような気がしたものだ。
今から話すのは、どこかからの帰り道、夕暮れの中歩きながら従姉妹が話してくれた奇談のひとつ。
従姉妹は子供の頃、線路沿い並ぶ住宅地の一角に住んでいた。
あたりには所狭しと民家や商店が立ち並び、常に何かしらの騒音がしていた。
がらくたをぶちまけたような場所だが、子供にとっては遊び場に困らないところであったようだ。
従姉妹は毎日あちこちを探索して廻った。
トンネルを見つけたのはそんなある日のことだった。
土手になった線路の斜面に、生い茂る草に隠れるように口を開いた穴。
ひとりで暇を持て余していた従姉妹は早速入ってみた。
トンネル自体は長さ十メートルに満たない、土手の反対側に繋がる小さなものであったらしい。
トンネル内部はコンクリートで造られ、暑い日でも薄暗くひんやりとしていた。
電車が頭上を通過する以外は外の世界から隔絶されたように静かで、従姉妹はそこを気に入り自分だけの秘密の場所にした。
439:本当にあった怖い名無し:2006/01/28(土)01:56:11ID:PMxL+OOaO
そのトンネルは通りのすぐ脇にあったにも関わらず、何故だか誰も立ち入らない。
従姉妹がトンネルから外を眺めていても通りを歩く人たちは一度も気づかなかった。
また、そこにいるといつも時間が早く過ぎるようで、日暮れを告げる市役所のチャイムをうっかり聞き逃すことも珍しくなかった。
ある日、トンネルの壁にもたれ掛かりうとうとしていた従姉妹は、どこからか話し声が聞こえるのに気づいた。
身体を起こすと何も聞こえなくなる。
不思議に思いながら、壁に寄りかかると再び声が聞こえた。
壁に耳を当ててみると、先ほどよりはっきり聞き取れるようになった。
それはどうやら二人の男女の会話らしかった。
女が男に早口で、笑いながら話しかけていた。
男も時おり楽しそうな声で応える。
聞き入っているうちに夕方のチャイムがなり、何となく後ろ髪を惹かれる思いでトンネルを後にした。
次の日トンネルに行くと従姉妹はさっそく壁に耳を当ててみた。
やはり聞こえる。昨日と同じ男女の声だ。
今日は男が積極的に話し、女が笑い転げている。
すべて聞き取れないのをじれったく思いながら、耳を澄ませた。
それから、従姉妹は毎日そこへ通うようになった。
440:本当にあった怖い名無し:2006/01/28(土)01:58:09ID:PMxL+OOaO
壁の向こうから聞こえる男と女は、どうやら恋愛関係にあるようだった。
日を追うごとに、二人の親密さが増していくのが幼い従姉妹にも分かった。
何故土手に空いたトンネルの壁から、見知らぬ男女の会話が聞こえるのか不思議に思うこともあったが、そういう場所なのだろうと子供らしい柔軟さで受け入れていた。
やがて壁の向こうの二人は結婚した。
女は仕事を辞め主婦になったようだった。
言い合いをすることもあったが、おしなべて二人は幸せそうだった。
他人ごとながら見守ってきた従姉妹はそれを嬉しく感じた。
相変わらず声は少しだけ遠く、言葉の端々に聞き取れない部分はあったが、どう試してもそれだけは改善されなかった。
隣りの部屋にテレビがあり、それを聞いているようなもどかしさに近かった。
壁の向こうの幸せな生活は、しかし長続きしなかった。
女が妊娠し、産みたいという女とまだ子供は欲しくないという男が対立したのだ。
小学生の従姉妹にもその意味は分かり、心苦しく思った。
女が、どれほど子供を欲しがっているか知っていたから。
少しずつ二人には暗雲が忍び寄り、やがてそれは加速度を増し生活全体を覆った。
夏の嵐のように、あっという間に。
従姉妹は二人の関係が元に戻って欲しいと願い耳をそばだて続けたが、聞こえてくるのは言い争いと悲嘆の声ばかりになった。
441:本当にあった怖い名無し:2006/01/28(土)02:01:11ID:PMxL+OOaO
ある時、いつものようにトンネルで壁に耳をつけると、女の声だけが聞こえた。
すすり泣くような、高い声で細々と呟く声。
それはこんなことを言っていた。
子供のせいで幸せが崩れたこと、仕事を辞め友人が減り空虚な毎日、そして延々男を呪う言葉を。
従姉妹は、薄暗い台所で独りで呪詛を紡ぐ女の姿を想像して寒気を覚えた。
その日を最後に、トンネルには二度と行かなかった。
幾日か過ぎ、時が経つにつれ従姉妹は壁の向こうの声を忘れていった。
しかしある夜、布団でうとうとしていた従姉妹は聞き慣れた声を耳にし飛び起きた。
壁の向こうの声。それが確かに聞こえた。
恐る恐る枕に耳をつけると、女のすすり泣きが伝わってきた。
男の罵声も響いてきた。枕から耳を離すとそれは止んだ。
枕が壁の向こうと繋がったのだろうか。
従姉妹はその晩中、まんじりともせず仰向けのまま天井を見つめていた。
次の日従姉妹は恐ろしいことに気づいた。
枕だけではない。耳に何かを押し当てるだけであの声が聞こえるのだ。
例え自分の手であっても。
やがて別の声が混ざり始めるようになった。
時には老婆の声が、時には少年の声が口々に喋り喚いた。
そしてそのどれもが陰惨な内容だった。
442:本当にあった怖い名無し:2006/01/28(土)02:02:51ID:PMxL+OOaO
「それからね、私はなにがあっても耳を塞げなくなったの」
そう言って従姉妹は立ち止まった。
もう従姉妹と俺の家の分かれ道まで来ていた。
「今も聞こえるの?」
俺は聞いた。
「ずっと聞こえてる。最近では耳を塞がなくても聞こえるようになったよ。だからこうして、たまに誰かに話して聞かせるの。そうしないと頭が声で溢れかえるから」
従姉妹は話し終えると、またねと言って帰っていった。
いつの間にか辺りには暗闇が迫っていた。
道沿いの家からは夕飯の匂いが漂い始めていた。
引用元:死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?120
http://mimizun.com/log/2ch/occult/1137807755/437-442
俺の親類には怪談好きが多かった。
祖母や叔父などは、ねだれば幾つでも話してくれたものだ。
中でも俺のお気に入りだった語り部は、年上の従姉妹だった。
この人が変わり者で、普段は無口だが気が乗れば話し巧みにオカルト色たっぷりの怪談奇談を聞かせてくれた。
静かな口調で語られる怪奇は俺を怖がらせると同時に高揚させ、聞き入りながらそこらの物陰に何か潜んでいるような気がしたものだ。
今から話すのは、どこかからの帰り道、夕暮れの中歩きながら従姉妹が話してくれた奇談のひとつ。
従姉妹は子供の頃、線路沿い並ぶ住宅地の一角に住んでいた。
あたりには所狭しと民家や商店が立ち並び、常に何かしらの騒音がしていた。
がらくたをぶちまけたような場所だが、子供にとっては遊び場に困らないところであったようだ。
従姉妹は毎日あちこちを探索して廻った。
トンネルを見つけたのはそんなある日のことだった。
土手になった線路の斜面に、生い茂る草に隠れるように口を開いた穴。
ひとりで暇を持て余していた従姉妹は早速入ってみた。
トンネル自体は長さ十メートルに満たない、土手の反対側に繋がる小さなものであったらしい。
トンネル内部はコンクリートで造られ、暑い日でも薄暗くひんやりとしていた。
電車が頭上を通過する以外は外の世界から隔絶されたように静かで、従姉妹はそこを気に入り自分だけの秘密の場所にした。
439:本当にあった怖い名無し:2006/01/28(土)01:56:11ID:PMxL+OOaO
そのトンネルは通りのすぐ脇にあったにも関わらず、何故だか誰も立ち入らない。
従姉妹がトンネルから外を眺めていても通りを歩く人たちは一度も気づかなかった。
また、そこにいるといつも時間が早く過ぎるようで、日暮れを告げる市役所のチャイムをうっかり聞き逃すことも珍しくなかった。
ある日、トンネルの壁にもたれ掛かりうとうとしていた従姉妹は、どこからか話し声が聞こえるのに気づいた。
身体を起こすと何も聞こえなくなる。
不思議に思いながら、壁に寄りかかると再び声が聞こえた。
壁に耳を当ててみると、先ほどよりはっきり聞き取れるようになった。
それはどうやら二人の男女の会話らしかった。
女が男に早口で、笑いながら話しかけていた。
男も時おり楽しそうな声で応える。
聞き入っているうちに夕方のチャイムがなり、何となく後ろ髪を惹かれる思いでトンネルを後にした。
次の日トンネルに行くと従姉妹はさっそく壁に耳を当ててみた。
やはり聞こえる。昨日と同じ男女の声だ。
今日は男が積極的に話し、女が笑い転げている。
すべて聞き取れないのをじれったく思いながら、耳を澄ませた。
それから、従姉妹は毎日そこへ通うようになった。
440:本当にあった怖い名無し:2006/01/28(土)01:58:09ID:PMxL+OOaO
壁の向こうから聞こえる男と女は、どうやら恋愛関係にあるようだった。
日を追うごとに、二人の親密さが増していくのが幼い従姉妹にも分かった。
何故土手に空いたトンネルの壁から、見知らぬ男女の会話が聞こえるのか不思議に思うこともあったが、そういう場所なのだろうと子供らしい柔軟さで受け入れていた。
やがて壁の向こうの二人は結婚した。
女は仕事を辞め主婦になったようだった。
言い合いをすることもあったが、おしなべて二人は幸せそうだった。
他人ごとながら見守ってきた従姉妹はそれを嬉しく感じた。
相変わらず声は少しだけ遠く、言葉の端々に聞き取れない部分はあったが、どう試してもそれだけは改善されなかった。
隣りの部屋にテレビがあり、それを聞いているようなもどかしさに近かった。
壁の向こうの幸せな生活は、しかし長続きしなかった。
女が妊娠し、産みたいという女とまだ子供は欲しくないという男が対立したのだ。
小学生の従姉妹にもその意味は分かり、心苦しく思った。
女が、どれほど子供を欲しがっているか知っていたから。
少しずつ二人には暗雲が忍び寄り、やがてそれは加速度を増し生活全体を覆った。
夏の嵐のように、あっという間に。
従姉妹は二人の関係が元に戻って欲しいと願い耳をそばだて続けたが、聞こえてくるのは言い争いと悲嘆の声ばかりになった。
441:本当にあった怖い名無し:2006/01/28(土)02:01:11ID:PMxL+OOaO
ある時、いつものようにトンネルで壁に耳をつけると、女の声だけが聞こえた。
すすり泣くような、高い声で細々と呟く声。
それはこんなことを言っていた。
子供のせいで幸せが崩れたこと、仕事を辞め友人が減り空虚な毎日、そして延々男を呪う言葉を。
従姉妹は、薄暗い台所で独りで呪詛を紡ぐ女の姿を想像して寒気を覚えた。
その日を最後に、トンネルには二度と行かなかった。
幾日か過ぎ、時が経つにつれ従姉妹は壁の向こうの声を忘れていった。
しかしある夜、布団でうとうとしていた従姉妹は聞き慣れた声を耳にし飛び起きた。
壁の向こうの声。それが確かに聞こえた。
恐る恐る枕に耳をつけると、女のすすり泣きが伝わってきた。
男の罵声も響いてきた。枕から耳を離すとそれは止んだ。
枕が壁の向こうと繋がったのだろうか。
従姉妹はその晩中、まんじりともせず仰向けのまま天井を見つめていた。
次の日従姉妹は恐ろしいことに気づいた。
枕だけではない。耳に何かを押し当てるだけであの声が聞こえるのだ。
例え自分の手であっても。
やがて別の声が混ざり始めるようになった。
時には老婆の声が、時には少年の声が口々に喋り喚いた。
そしてそのどれもが陰惨な内容だった。
442:本当にあった怖い名無し:2006/01/28(土)02:02:51ID:PMxL+OOaO
「それからね、私はなにがあっても耳を塞げなくなったの」
そう言って従姉妹は立ち止まった。
もう従姉妹と俺の家の分かれ道まで来ていた。
「今も聞こえるの?」
俺は聞いた。
「ずっと聞こえてる。最近では耳を塞がなくても聞こえるようになったよ。だからこうして、たまに誰かに話して聞かせるの。そうしないと頭が声で溢れかえるから」
従姉妹は話し終えると、またねと言って帰っていった。
いつの間にか辺りには暗闇が迫っていた。
道沿いの家からは夕飯の匂いが漂い始めていた。
http://mimizun.com/log/2ch/occult/1137807755/437-442
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ハルミちゃん
2016.12.24 (Sat) | Category : ホラー・怪奇現象・不思議現象
267:ハルミちゃん:2006/01/25(水)01:38:09ID:RZNSUCeK0
はるか昔、おれが通ってた幼稚園にかわいい女の子がいた。
ある日、その子が昼間ふといなくなってしまった。
先生たちが慌てて探したけれど見つからなかった。
騒ぎになって警察も来たけど見つからなかった。
とうとう迷宮入りになってしまった。
去年の夏、猛暑の真っ盛りに、俺は営業サボって公園をブラついてた。
アスファルトに陽炎がたつほどのクソ暑さだ。
誰もいない公園には原色の花が咲き乱れている。
陽炎のむこうから、幼稚園の制服を着た女の子が、ひとり歩いてきた。
俺を見あげて聞いた。
「○○先生、まだあたしのこと探してる?」
俺は何のことかわからず、
「ごめんね。○○先生って、知らないんだ」
俺がそう言い終わらないうちに、女の子は駈けだして、いなくなってしまった。
○○先生。俺の幼稚園の先生と同じ名前だな。やさしい先生だった。
制服も俺の幼稚園時代のとちょっと似てた。懐かしいもんだ。
良く似た子がクラスにいたな。ミハルちゃん、て言ったっけ。
俺は、ミハルちゃんが行方不明になったままの女の子である事を思い出した。
その年の秋に、幼稚園の解体工事があって、床下から、子供の肋骨と右足の骨だけが見つかった。
269:本当にあった怖い名無し:2006/01/25(水)01:56:34ID:jMy8RrjG0
>>267
いいね。
内容自体はありきたりだけど、話の展開がよかった。
270:本当にあった怖い名無し:2006/01/25(水)02:23:36ID:aQJ7id+v0
>>267
話はよかったのですが、
ハ ル ミ ち ゃ ん は ど こ に ?
271:267:2006/01/25(水)02:40:04ID:UBHl4CT+0
すまん。タイトル間違えた。
修行の旅に出なおしてくる・・・。
引用元:死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?120
http://mimizun.com/log/2ch/occult/1137807755/267-271
.
はるか昔、おれが通ってた幼稚園にかわいい女の子がいた。
ある日、その子が昼間ふといなくなってしまった。
先生たちが慌てて探したけれど見つからなかった。
騒ぎになって警察も来たけど見つからなかった。
とうとう迷宮入りになってしまった。
去年の夏、猛暑の真っ盛りに、俺は営業サボって公園をブラついてた。
アスファルトに陽炎がたつほどのクソ暑さだ。
誰もいない公園には原色の花が咲き乱れている。
陽炎のむこうから、幼稚園の制服を着た女の子が、ひとり歩いてきた。
俺を見あげて聞いた。
「○○先生、まだあたしのこと探してる?」
俺は何のことかわからず、
「ごめんね。○○先生って、知らないんだ」
俺がそう言い終わらないうちに、女の子は駈けだして、いなくなってしまった。
○○先生。俺の幼稚園の先生と同じ名前だな。やさしい先生だった。
制服も俺の幼稚園時代のとちょっと似てた。懐かしいもんだ。
良く似た子がクラスにいたな。ミハルちゃん、て言ったっけ。
俺は、ミハルちゃんが行方不明になったままの女の子である事を思い出した。
その年の秋に、幼稚園の解体工事があって、床下から、子供の肋骨と右足の骨だけが見つかった。
269:本当にあった怖い名無し:2006/01/25(水)01:56:34ID:jMy8RrjG0
>>267
いいね。
内容自体はありきたりだけど、話の展開がよかった。
270:本当にあった怖い名無し:2006/01/25(水)02:23:36ID:aQJ7id+v0
>>267
話はよかったのですが、
ハ ル ミ ち ゃ ん は ど こ に ?
271:267:2006/01/25(水)02:40:04ID:UBHl4CT+0
すまん。タイトル間違えた。
修行の旅に出なおしてくる・・・。
引用元:死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?120
http://mimizun.com/log/2ch/occult/1137807755/267-271
.
ー施餓鬼ー <土佐弁混じりの友人シリーズ>
2016.12.24 (Sat) | Category : ホラー・怪奇現象・不思議現象
247:⑦⑦⑦:2016/12/13(Tue)09:40:57
その年の瀬戸内は大変暖かくて3月にはもう桜が咲き始めていた。
後輩曰く、この時期に既に桜が満開の穴場があるとか抜かすのでお花見をする事となった。
ちょっと山手に上がった所だが、見事な枝垂れ桜が満開だった。
席は大いに盛り上がり、私は下戸のくせに大いに飲み大いに食べた。
酔っ払ってて覚えてないが、いろいろ変な事口走ったらしい
挙句、上半身裸で寝てしまったらしい、覚えてないが。
例年より暖かいとはいえ3月、案の定、風邪をひいてしまった。
滅多に風邪をひかない分、いざひくと往々にしてロクな事がない。
そんな感じの話。
248:⑦⑦⑦:2016/12/13(Tue)09:43:13
熱で頭がボーッとする。
食欲なんてないハズなのに無性に米の飯を食べたくなった。
初めはお粥など炊いたりしていたが、面倒になって炊いたご飯を炊飯器から直接食べ始め、終いに、もう炊くのも面倒だと、私は生の米をそのままバリバリ食いだした。
自分のやってる事が理解できなかった。
いくら食べても胃が空っぽな気がした。
この辺から意識が飛び始め、自分の行動が曖昧になるのだが・・・
確か、レトルトカレーのルーを袋ごと啜ったり乾麺を生で齧ったりしてたようだ。
まったく自分のやってる事が理解できない。
普段から2週間分の食料は置いてあるが、それをおよそ4日で食い尽くしてしまった。
自慢じゃないが私の体重は56kg、普通はこんなに食えるハズはない。
食っても食ってもお腹は減り続ける。
ひもじい。
空腹と倦怠感が全身を襲う。
空っぽの冷蔵庫の前で茫然自失となる。
買い出しに行こうにも体力の限界だった。
ふと脳裏に『死』の1文字が浮かぶ。
こんなんで死んだら恥だな、と考えてた矢先、電話が鳴った。
悪質な風邪なので3日くらい休むと研究室には言っておいたが例の友人からだった。
「もしもしー♪」
1オクターブ高い声。
「治った?大丈夫?お見舞い行こうか?」
ありきたりな事を訊いてくる。
私はもはや
「あー」
だの
「うー」
だのしか返事できなかった。
ただ事ではないと思ったのだろう
「あー待ってち、今から行くけぇ」
と言って切れる。
『助かった・・・かな』
今考えると死にそうになるもっと前に初めから電話で助け呼べば良かったのだが、脳に栄養が回ってなかったのだ。
仕方がない。
数分後、外で友人のバイクの爆音が聞こえる。
それまでは水を飲んで仰向けになって凌いでいた。
ドアは・・・3日前から開けっ放しだった。
249:⑦⑦⑦:2016/12/13(Tue)09:46:13
台所まで入ってきた友人は私を一瞥して噴き出した。
「ブッ」
って。
二言目には
「うわぁ初めて見た」
と嬉しげに言い放った。
彼女曰く『餓鬼の類』だという。
私の身体にまとわり憑いて腹部をガジガジ齧ってたそうだ。
電話の向こうで私の声じゃない
「ひもじい、ひもじい」
って声が聞こえて、ヤバいなと思って慌てて来たらしい。
すぐに友人は誰かに電話をし始めた。
「あ、もしもし、木村の婆っちゃー?んー元気。あーこの間はありがとー」
死にかけの人間放置して世間話か?
「んーでね、たぶんスイゴやと思う。あ、ウチやなくて友達。いや、わからん、後で聞く・・・あ、炭?分かった。ありがとうー」
電話を切った友人はガスコンロに向かって何かし始めた。
料理でも作ってくれるのだろうか、凄くコゲ臭い。
「コレでいいかな」
友人がグラスに注いで持ってきたのは煮え湯だった。
しかも何か灰色い粉末がプカプカ浮いている。
コレを
「目ぇ閉じて鼻摘んで飲み干せ」
と言う。
一口飲むと熱さで舌が焼かれる、炭の苦さと塩辛さが口内に広がる。
「何コレ?」
「塩水」
「は?」
「良いけぇ飲みぃ。ヘソから出るけん」
こんなモン飲んでたまるかと抵抗したが、鼻を摘まれ大口開けさせられ流し込まれた。
暫くして身体から倦怠感が抜け楽になる。
250:⑦⑦⑦:2016/12/13(Tue)09:49:59
友人が
「立てる?」
と訊いてきた。
どうやらもう大丈夫のようだ。
立つと同時に
「ぐ〜〜〜」
と盛大に腹の音が鳴る。
友人は苦笑しながら
「何か作るわ」
と米びつの底に僅かに残った米でお粥を作ってくれたが、結局なんにも味はしなかった。
煮え湯で舌が焼けていたから。
大事を取って病院に行ったところ、栄養失調との事だった。
あれだけ食ったのにだ。
点滴受けながら友人に訊かれた。
「何か思い当たるフシない?」
「○○で花見した」
「3月に?○○寺の下やろ、あそこは7月に施餓鬼する所や。(『施餓鬼』=地獄の餓鬼の為に施しをしてやる鎮魂際みたいなモノ)飲み食いした?」
「たらふく食って裸で寝た」
「バカか。知らん?『施餓鬼の前にお祭りすっと餓鬼が憑く』って」
「知らん、初めて聞いた」
「あー、ウチの地元だけなんかな?まぁ、お前を供物だと思ったんだろうサね。腹に食い物の詰まった」
「・・・ねぇ、さっき俺に何飲ましたん?」
「塩水に注連縄(しめなわ)焼いた灰ぶち込んだモノ」
「何だそりゃ?」
「ウチの地元では割とポピュラーなんだけど・・・」
「知らん、初めて飲んだ」
まぁいいや・・・
私が
「今度ばかりは本当に死を覚悟したよ」
と言うと、友人は頷いて
「とっておきの良い名言がある」
と言った。
「死を恐れるな。死はいつもそばに居る。恐れを見せた時それは光よりも速く飛びかかって来るだろう。恐れなければ、それはただ優しく見守っているだけだって」
「・・・それ、聞いたことあるぞ。アニメのセリフじゃねぇか」
(※⑦⑦⑦さんからの投稿です。ありがとうございました。いわゆる『土佐弁混じりの友人』シリーズの1編ですね。関連記事を掲載しておきます)
その年の瀬戸内は大変暖かくて3月にはもう桜が咲き始めていた。
後輩曰く、この時期に既に桜が満開の穴場があるとか抜かすのでお花見をする事となった。
ちょっと山手に上がった所だが、見事な枝垂れ桜が満開だった。
席は大いに盛り上がり、私は下戸のくせに大いに飲み大いに食べた。
酔っ払ってて覚えてないが、いろいろ変な事口走ったらしい
挙句、上半身裸で寝てしまったらしい、覚えてないが。
例年より暖かいとはいえ3月、案の定、風邪をひいてしまった。
滅多に風邪をひかない分、いざひくと往々にしてロクな事がない。
そんな感じの話。
248:⑦⑦⑦:2016/12/13(Tue)09:43:13
熱で頭がボーッとする。
食欲なんてないハズなのに無性に米の飯を食べたくなった。
初めはお粥など炊いたりしていたが、面倒になって炊いたご飯を炊飯器から直接食べ始め、終いに、もう炊くのも面倒だと、私は生の米をそのままバリバリ食いだした。
自分のやってる事が理解できなかった。
いくら食べても胃が空っぽな気がした。
この辺から意識が飛び始め、自分の行動が曖昧になるのだが・・・
確か、レトルトカレーのルーを袋ごと啜ったり乾麺を生で齧ったりしてたようだ。
まったく自分のやってる事が理解できない。
普段から2週間分の食料は置いてあるが、それをおよそ4日で食い尽くしてしまった。
自慢じゃないが私の体重は56kg、普通はこんなに食えるハズはない。
食っても食ってもお腹は減り続ける。
ひもじい。
空腹と倦怠感が全身を襲う。
空っぽの冷蔵庫の前で茫然自失となる。
買い出しに行こうにも体力の限界だった。
ふと脳裏に『死』の1文字が浮かぶ。
こんなんで死んだら恥だな、と考えてた矢先、電話が鳴った。
悪質な風邪なので3日くらい休むと研究室には言っておいたが例の友人からだった。
「もしもしー♪」
1オクターブ高い声。
「治った?大丈夫?お見舞い行こうか?」
ありきたりな事を訊いてくる。
私はもはや
「あー」
だの
「うー」
だのしか返事できなかった。
ただ事ではないと思ったのだろう
「あー待ってち、今から行くけぇ」
と言って切れる。
『助かった・・・かな』
今考えると死にそうになるもっと前に初めから電話で助け呼べば良かったのだが、脳に栄養が回ってなかったのだ。
仕方がない。
数分後、外で友人のバイクの爆音が聞こえる。
それまでは水を飲んで仰向けになって凌いでいた。
ドアは・・・3日前から開けっ放しだった。
249:⑦⑦⑦:2016/12/13(Tue)09:46:13
台所まで入ってきた友人は私を一瞥して噴き出した。
「ブッ」
って。
二言目には
「うわぁ初めて見た」
と嬉しげに言い放った。
彼女曰く『餓鬼の類』だという。
私の身体にまとわり憑いて腹部をガジガジ齧ってたそうだ。
電話の向こうで私の声じゃない
「ひもじい、ひもじい」
って声が聞こえて、ヤバいなと思って慌てて来たらしい。
すぐに友人は誰かに電話をし始めた。
「あ、もしもし、木村の婆っちゃー?んー元気。あーこの間はありがとー」
死にかけの人間放置して世間話か?
「んーでね、たぶんスイゴやと思う。あ、ウチやなくて友達。いや、わからん、後で聞く・・・あ、炭?分かった。ありがとうー」
電話を切った友人はガスコンロに向かって何かし始めた。
料理でも作ってくれるのだろうか、凄くコゲ臭い。
「コレでいいかな」
友人がグラスに注いで持ってきたのは煮え湯だった。
しかも何か灰色い粉末がプカプカ浮いている。
コレを
「目ぇ閉じて鼻摘んで飲み干せ」
と言う。
一口飲むと熱さで舌が焼かれる、炭の苦さと塩辛さが口内に広がる。
「何コレ?」
「塩水」
「は?」
「良いけぇ飲みぃ。ヘソから出るけん」
こんなモン飲んでたまるかと抵抗したが、鼻を摘まれ大口開けさせられ流し込まれた。
暫くして身体から倦怠感が抜け楽になる。
250:⑦⑦⑦:2016/12/13(Tue)09:49:59
友人が
「立てる?」
と訊いてきた。
どうやらもう大丈夫のようだ。
立つと同時に
「ぐ〜〜〜」
と盛大に腹の音が鳴る。
友人は苦笑しながら
「何か作るわ」
と米びつの底に僅かに残った米でお粥を作ってくれたが、結局なんにも味はしなかった。
煮え湯で舌が焼けていたから。
大事を取って病院に行ったところ、栄養失調との事だった。
あれだけ食ったのにだ。
点滴受けながら友人に訊かれた。
「何か思い当たるフシない?」
「○○で花見した」
「3月に?○○寺の下やろ、あそこは7月に施餓鬼する所や。(『施餓鬼』=地獄の餓鬼の為に施しをしてやる鎮魂際みたいなモノ)飲み食いした?」
「たらふく食って裸で寝た」
「バカか。知らん?『施餓鬼の前にお祭りすっと餓鬼が憑く』って」
「知らん、初めて聞いた」
「あー、ウチの地元だけなんかな?まぁ、お前を供物だと思ったんだろうサね。腹に食い物の詰まった」
「・・・ねぇ、さっき俺に何飲ましたん?」
「塩水に注連縄(しめなわ)焼いた灰ぶち込んだモノ」
「何だそりゃ?」
「ウチの地元では割とポピュラーなんだけど・・・」
「知らん、初めて飲んだ」
まぁいいや・・・
私が
「今度ばかりは本当に死を覚悟したよ」
と言うと、友人は頷いて
「とっておきの良い名言がある」
と言った。
「死を恐れるな。死はいつもそばに居る。恐れを見せた時それは光よりも速く飛びかかって来るだろう。恐れなければ、それはただ優しく見守っているだけだって」
「・・・それ、聞いたことあるぞ。アニメのセリフじゃねぇか」
(※⑦⑦⑦さんからの投稿です。ありがとうございました。いわゆる『土佐弁混じりの友人』シリーズの1編ですね。関連記事を掲載しておきます)
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