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線路を走る落ち武者
2012.08.07 (Tue) | Category : ホラー・怪奇現象・不思議現象
夏の夜。トモ子はいつも通り、10時に家を抜け出した。
「今夜10時、いつものコンビニにな」
学校で集合の約束を交わしてから、待ちに待った時間。部屋に鍵をかけ、裏口からこっそり外に出る。
門限の時間に娘がしている事に、両親は気付いているのか、それとも知らぬふりをしているのか、居間からはテレビの音しか聞こえない。後者だとしても、男の友達に会いに行く事を知ったら、一騒動起こるだろう。
だが、別に非難される覚えはないとトモ子は思う。自分達はなにも悪い事をしていない。コンビニの駐車場に座って話をしているだけなのだから。
大声で騒ぎ立てないよう注意しているし、ゴミも散らかさない。集まるのも入口から離れた区画を選んでいるし、車が来たら、邪魔にならないようコンビニ店内に一時避難する。
何も問題はないはずだ。
一緒に行く約束をしていた女の子と合流してから、トモ子はコンビニの駐車場に到着した。
既に何人かが集まり、話題の花を咲かせている。
ここに集まっている事を、学校の皆は知らない。コンビニで清涼飲料を買って、トモ子も話の輪に加わった。
ここでする事は、学校にいる時と変わりない。流行りの曲や最新の映画の話などで盛り上がるだけ。
それでも、トモ子は毎回の集まりで、違った自分がここにいるような優越感を感じてしまう。
都会の学生達はどうなのだろう。ジュースを飲みながら、トモ子は考えてみた。繁華街やクラブなど、もっと楽しい場所に出かけているに違いない。
しかし、楽しさの本質としては、自分達も劣っていない事を確信していた。夜中に家を抜け出し、仲間達と会っているという事が、自分が大人に近付いている様な感覚を与えてくれるのだから。
何かをやるのが楽しいのではない。違う自分になるのが嬉しいのだ。
夜が深まる中、トモ子達はもうすぐ来る夏休みの話題など、他愛もない話に熱中していた。
夜気が温く感じたが、ずっと外にいれないという程ではない。時折コンビニで何か買う時以外、誰もその場から動かない。
既に深夜の二時を回り、コンビニのすぐ近くの踏切もさっきから沈黙し続けている。それでも、帰ってしまうのが勿体ない気がして、皆時間に気付かないふりをしていた。
明日は休み。多少遅くなっても大丈夫だろうと。
終電からしばらく経った頃、喉の渇きを覚えたトモ子はジュースでも買おうと立ち上がった。
その時、突然、踏切の警報が鳴り、遮断機が下がった。
「なんだこんな時間に」
男子が驚いて声を上げ、女子は不安そうに顔を見合わせる。コンビニの店員も、不思議そうに踏切の方に視線を向けるのが見えた。
「幽霊電車でも通るんじゃないか」
誰かの冗談混じりな言葉。
幽霊だけが使う電車が、深夜の町をこっそり走っている。その想像に興奮した皆は、踏切の前まで歩いていった。
赤色が点灯し、音がやかましい。しかし何も通る様子がない。
幽霊電車は目に見えないのではないか、と話し合いながら、線路の先を見つめた。レールが溶け込む闇の向こうには、何も見えない。
いや、何かがやってくる。一歩一歩、重い金属が擦れ合う音を立てて走ってくる。
「何だ……?」
心に不安を掻き立てるそれに、全員が思わず踏切から一歩退いてしまう。
荒い息の様な音も響いてきた頃、街灯の光にその姿が浮かび上がった。
頭の頭上を剃り上げ、脇に長い髪の毛を垂らした落ち武者だった。黒い鎧は所々で糸がほつれ、金属片が落ちかかっている。
血と泥に汚れた足袋で砂利を踏みしめながら、落ち武者はトモ子達の前を走り過ぎていった。
「……何? 今の……」
高校生達は、その後ろ姿を呆然と見送った。落ち武者がいなくなっても、遮断機は上がらない。警報器の音も鳴り続く。
全員が誘われる様に、再び落ち武者が走ってきた方に視線を向ける。すると、再び闇の中から、何かが近づいてくるのが見えた。距離が縮まるにつれ、白い色がどんどんはっきり見えてくる。
今度は、髪を振り乱した女だった。死に装束を着て、体長が2mもある。
どうやら落ち武者を追いかけているようだ。両手を前に突き出しながら、足音も立てずに落ち武者が消えた方へ走り去っていく。
誰も、何も言えないまま、お互いの顔を見合わせた。
遮断機の警報が止み、夜の町に再び静寂が戻った。
(※暗さんからの投稿です。ありがとうございました)
「今夜10時、いつものコンビニにな」
学校で集合の約束を交わしてから、待ちに待った時間。部屋に鍵をかけ、裏口からこっそり外に出る。
門限の時間に娘がしている事に、両親は気付いているのか、それとも知らぬふりをしているのか、居間からはテレビの音しか聞こえない。後者だとしても、男の友達に会いに行く事を知ったら、一騒動起こるだろう。
だが、別に非難される覚えはないとトモ子は思う。自分達はなにも悪い事をしていない。コンビニの駐車場に座って話をしているだけなのだから。
大声で騒ぎ立てないよう注意しているし、ゴミも散らかさない。集まるのも入口から離れた区画を選んでいるし、車が来たら、邪魔にならないようコンビニ店内に一時避難する。
何も問題はないはずだ。
一緒に行く約束をしていた女の子と合流してから、トモ子はコンビニの駐車場に到着した。
既に何人かが集まり、話題の花を咲かせている。
ここに集まっている事を、学校の皆は知らない。コンビニで清涼飲料を買って、トモ子も話の輪に加わった。
ここでする事は、学校にいる時と変わりない。流行りの曲や最新の映画の話などで盛り上がるだけ。
それでも、トモ子は毎回の集まりで、違った自分がここにいるような優越感を感じてしまう。
都会の学生達はどうなのだろう。ジュースを飲みながら、トモ子は考えてみた。繁華街やクラブなど、もっと楽しい場所に出かけているに違いない。
しかし、楽しさの本質としては、自分達も劣っていない事を確信していた。夜中に家を抜け出し、仲間達と会っているという事が、自分が大人に近付いている様な感覚を与えてくれるのだから。
何かをやるのが楽しいのではない。違う自分になるのが嬉しいのだ。
夜が深まる中、トモ子達はもうすぐ来る夏休みの話題など、他愛もない話に熱中していた。
夜気が温く感じたが、ずっと外にいれないという程ではない。時折コンビニで何か買う時以外、誰もその場から動かない。
既に深夜の二時を回り、コンビニのすぐ近くの踏切もさっきから沈黙し続けている。それでも、帰ってしまうのが勿体ない気がして、皆時間に気付かないふりをしていた。
明日は休み。多少遅くなっても大丈夫だろうと。
終電からしばらく経った頃、喉の渇きを覚えたトモ子はジュースでも買おうと立ち上がった。
その時、突然、踏切の警報が鳴り、遮断機が下がった。
「なんだこんな時間に」
男子が驚いて声を上げ、女子は不安そうに顔を見合わせる。コンビニの店員も、不思議そうに踏切の方に視線を向けるのが見えた。
「幽霊電車でも通るんじゃないか」
誰かの冗談混じりな言葉。
幽霊だけが使う電車が、深夜の町をこっそり走っている。その想像に興奮した皆は、踏切の前まで歩いていった。
赤色が点灯し、音がやかましい。しかし何も通る様子がない。
幽霊電車は目に見えないのではないか、と話し合いながら、線路の先を見つめた。レールが溶け込む闇の向こうには、何も見えない。
いや、何かがやってくる。一歩一歩、重い金属が擦れ合う音を立てて走ってくる。
「何だ……?」
心に不安を掻き立てるそれに、全員が思わず踏切から一歩退いてしまう。
荒い息の様な音も響いてきた頃、街灯の光にその姿が浮かび上がった。
頭の頭上を剃り上げ、脇に長い髪の毛を垂らした落ち武者だった。黒い鎧は所々で糸がほつれ、金属片が落ちかかっている。
血と泥に汚れた足袋で砂利を踏みしめながら、落ち武者はトモ子達の前を走り過ぎていった。
「……何? 今の……」
高校生達は、その後ろ姿を呆然と見送った。落ち武者がいなくなっても、遮断機は上がらない。警報器の音も鳴り続く。
全員が誘われる様に、再び落ち武者が走ってきた方に視線を向ける。すると、再び闇の中から、何かが近づいてくるのが見えた。距離が縮まるにつれ、白い色がどんどんはっきり見えてくる。
今度は、髪を振り乱した女だった。死に装束を着て、体長が2mもある。
どうやら落ち武者を追いかけているようだ。両手を前に突き出しながら、足音も立てずに落ち武者が消えた方へ走り去っていく。
誰も、何も言えないまま、お互いの顔を見合わせた。
遮断機の警報が止み、夜の町に再び静寂が戻った。
(※暗さんからの投稿です。ありがとうございました)
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Title : 無題
落ち武者「来るな愛すべき者よ これは男の戦いなのだ…」
女「いいえ 貴方の為なら地の果てまでもついて行く覚悟です」
という時代劇ドラマの撮影現場だったとか
春月 2012.08.07 (Tue) 16:23 編集
Re:無題
なんだ実はいい話だったのか
2012.08.14 15:37
Title : 無題
夜中に走る保線車両に引かれる落ち武者。
NONAME 2012.08.07 (Tue) 23:34 編集
Re:無題
シュールwww
2012.08.14 17:15
Title : 無題
この雰囲気は好きだなあ。
ななしの 2012.08.08 (Wed) 01:55 編集
Re:無題
まさにオカルトですよね。
2012.08.14 17:17
Title : 無題
落ち武者が連なってチューチュートレイン
ボンコ 2012.08.08 (Wed) 07:58 編集
Re:無題
ふぁんふぁんうぃーひっすてーすてー
2012.08.14 17:23
Title : 無題
落ち武者w
がんばって逃げ切ってくれw
NONAME 2012.08.10 (Fri) 01:22 編集
Re:無題
応援したいよねw
2012.08.14 18:09
Title : 無題
八尺様、何してはるんですかw
むたおむた 2012.08.10 (Fri) 13:20 編集
Re:無題
後ろの人八尺様だったのかw
2012.08.15 13:39
Title : 無題
落ち武者「ほら、捕まえてごらーん」
女「待って~~」
落ち武者「ははははは」
女「うふふふふ」
もげろ
NONAME 2012.08.20 (Mon) 10:12 編集
Re:無題
もげてはぜろ
2012.08.20 13:22