都市伝説・・・奇憚・・・blog
弟を呼ぶのは…
2008.11.13 (Thu) | Category : 誰も信じない人へ
もう15年も前のある冬の夜のこと。
当時、私の家は青森県弘前市という雪深い所にあった。
その日も朝から降っていた雪が夜も深々と降り続いていた。
高校生だった私は、いつものようにラジオの深夜放送を聞きながらいつの間にか眠りに落ちた。
朝の4時頃だったと思う。
どういう訳か目を覚ました私はベッドの横の窓がやけに明るいことに気がついた。
それもまるで昼のような明るさである。雪国の冬の4時はまだ「深夜」で、本来なら降り続ける雪がさらに闇を深くしているはずである。
車でも止まっているのかなぁと思いカーテンを開けようとして気がついた。
家の裏側にあたる私の部屋の外は延々とりんご畑が広がるだけである。
農道すらない畑の中を、まして吹雪の中を林檎の木を縫って走る車など存在しない。
しかも、その明るさは窓のすぐ外でライトかなにかを当ててるとしか考えられないのである。
さらにもう一つ大きな問題がある。私の部屋は「二階」なのである。
カーテンに手をかけて躊躇しているとその光の中をなにか影がゆっくりと動く。
呆然と見ていると、突然ふっと光が消えた。
思い切ってカーテンを開けた。
そこにあるのは相変わらず降り続く雪と闇だった。
その年の初夏。私には二つ違いの妹がいて、妹の部屋も同じ二階にあった。
ある夜、眠りかけた私は真っ青な顔をした妹に起こされた。
尋ねると、怖いのでこの部屋で寝かせてくれという。
寝ていた妹が夜目覚めると、枕元に知らない年配の女性が座っている。
が、妹は身体が動かない。そしてその女性はにこにこと笑いながらずぅっと妹の髪をなで続けるのだという。依然として真っ青な顔で話続ける妹を前に、私は数日前のことを思い出していた。
私には年の離れた弟もいて、そのころようやくハイハイ歩きをするようになっていた。
その弟がハイハイ歩きながらで階段を登るようになり、二階の妹の部屋にしばしば入り込むようになった。そのたびに、母が私に連れてくるようにいうのだが、その日も母に言われ見に行くと弟が妹のベッドに座って笑っている。
静かな日曜の昼のことで、テレビのない妹の部屋は赤ちゃんが見て笑うようなものはなにもない。不思議に思って弟を抱いた瞬間、部屋の奥に飾ってある人形が廻りだした。
それはオルゴールの上にフランス人形が載っているというもので、オルゴールのゼンマイが回ると人形がゆっくり回るという仕掛けの人形である。
だが、それはもう何年も前から壊れて動かないはずだった。
からりん、ころりん。少しだけオルゴールが鳴り、人形が動いて止まった。
相変わらずころころと笑う弟。そういえば弟はどうやってベッドに上がったのだろう。
ようやくハイハイをし始めた弟がかなり高さのあるベッドへ一人で登れるのだろうか。
そう考えていると突然風がさっと吹きカーテンが捲り上がった。
私は促されるように弟を抱き階下へと降りた。
「伯母は小さい頃の私たち兄妹二人とよく遊んでくれていたが、妹はおそらく顔をちゃんと覚えていないだろう、何年か前から病を患い、入院中、みっちゃん(私の妹)は元気かねぇとよく言っていたな」
と父から聞かされるのは、伯母が亡くなって初めてのお盆を迎えたときだった。
この記事にコメントする