都市伝説・・・奇憚・・・blog
母と娘
2008.08.05 (Tue) | Category : 誰も信じない人へ
おかんが癌で亡くなって6年になる。
癌を見つけたときにはもう余命一年の宣告。親父と相談の上、おかんには告知しなかった。一年、騙し続けた。
私はその時二番目の子供を妊娠中。大きい腹でおかんの病室に通った。
ある日おかんが私の腹をなでて、まだ見ぬ孫の名をつけて呼んだ。
おかんの死後、丁度一ヶ月の日に娘は生まれた。母がが呼んでくれた名前を娘につけた。すごく愛しそうに呼んでくれた名前だから、迷わなかった。
母は夢に出てくることも姿を見せることもなかった。妹のところにも。
私は、母を騙し続けたことに、とても罪悪感を感じていた。例えモルヒネが処方されて
「お姉ちゃん(母は私をこう呼んでた)、この薬は何?」
と聞かれても、ただの鎮痛剤じゃね?とかいって誤魔化してた。
一日ずつ命が減っていく母に、それを悟られまいと必死で嘘ついてた。
母は私を恨んでる。何の心の準備も出来ず、亡くなったのは私のせいだ。
親父は母の闘病中から娘より若い愛人を作って母のことは全部私に任せていたので、余計責任を感じてた。
私の所に出てこなくても当たり前だよな、そう思ってた。
先週、娘とお風呂に入っていると、娘がこう言った。
「ママ、私の名前はママのおばあちゃんがつけたんだよね」
ああ、話したことあったかな、と思って、そうだよ、と答えた。
「私、この名前大好きって言ったら、おばあちゃんが嬉しいって言ってたよ」
驚いた。いつおばあちゃんに会ったの?と、聞くと、
「いっつもいるよ。ミルちゃん、って白いネコさんとお庭とかに」
ミルちゃんは、母の死後すぐに死んだ、母の可愛がってた飼い猫。
写真も家には残ってないし、娘が知る筈もない。
思わず娘に聞いてしまった。おばあちゃん、ママのこと怒ってるでしょ。って。娘は
「明日聞いてあげるね」
って答えた。
娘には見えるけど、私に見えないのが何よりの証拠。娘のとこには出て、私のとこには夢にすら出ない。嬉しいけど、悲しかった。
でもその夜、夢を見た。おかんだった。実家の両親の部屋で、生前座ってた椅子に座ってた。膝にはミルちゃん。夢の中で、私は母に謝った。
ごめん。騙しててごめん。号泣した。
「……ごめんねぇ、お姉ちゃんつらかったよねぇ」
「お母さん怒ったりしてないよ?毎日病室で色々笑わせてくれて、楽しかったよ」
母が手を握ってくれた。暖かかった。一層泣けてきて、自分の泣き声で目が覚めた。起きても母の手の感触が、体温が手に残ってた。
朝起きてきた娘が言った。
「おばあちゃん、ママとお話したんでしょ?おばあちゃんが言ってたよ。良かったねママ」
今も娘は母が見えるらしいけど、私には見えないまま。でもそれでもいい。母が傍にいることが分かったから。
もうすぐ母の命日が来る。お墓と仏壇掃除して、母が大好きだった作家の新刊でも供えてやろうと思う。
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