都市伝説・・・奇憚・・・blog
父の優しさ
2008.06.08 (Sun) | Category : 誰も信じない人へ
中学生の頃、病気で父が死んだ。
葬式からしばらくは、死んだことを自分で実感できずに、涙も出ず、私は薄情な人間なんだとぼんやり思いながら過ごしていた。
その頃の私は寝てばかりだった。あんなに寝ることはないっていうくらい一日の大半を寝て過ごした。今思えば無意識の内に寝ることに頼っていたのかもしれない。
あと、多分なんとなくだけど生命力が低下していた気がする。何もやる気が起きなかった。
そしてある日の夕方、父の部屋でテレビをつけっぱなしで寝ていたら、
「○○(私の名前)!」
と呼ぶ声が聞こえた。
「お父さんだ!!」
と思ってガバッと飛び起きたら、それはテレビのCMで、あるタレントがこちらを向いて笑いながら、
「○○!がんばれ!」
と言っていた。偶然にも同じ名前だっただけだった。
でも後にも先にもそのCMを見たことはないし、私が聞いたの明らかに父の声だった。
そこでふと我に返り、父を亡くしたことがリアルに私の体を駆け巡り、父のいなくなった父の部屋でワンワン泣いた。
あのCMは偶然流れただけかもしれないが、私の中ではとてもとても大きなものだった。
それから、度々父が夢に出てくるようになった。
でも不思議なことに、はじめの頃は顔もしっかり見えていたんだけど、段々と後ろ姿だけになり、声だけになり、最後には“気配”だけになっていた。
“気配”だけになったのがちょうど大学の2年くらい。
“気配”だけでも私にはその存在はリアルに感じられ、父の夢を見た朝はいつも涙を流しながら目が覚めた。
父が“気配”になった頃、私には彼氏ができ、そして同棲をはじめたのだった。
それまでは慣れない場所でひとり暮らしの私を心配し、遠くから見に来てくれていたのかもしれない。
でも私を大切にしてくれる人が現れたから、安心して最近は現れないのかもしれないなあと思う。
同棲をし始めてから、父はぱったり夢に現れなくなった。
でも、先日祖父が1週間くらい昏睡状態が続き、
「もうダメだろう」
と言われて、誰もがダメだと思っていた。私は、実家に帰って一晩中父の仏壇に祈りつづけた。
「まだ、おじいちゃん連れて行かないで。お父さんいなくなっておじいちゃんもいなくなったらみんな悲しがる。お母さんのために、私のためにもまだお願いだから連れて行かないで」
と涙を流しながら手を合わせ続けた次の日、おじいちゃんは奇跡的に目覚めた。そして危ないと言われながら半年経った今もなんとか生きている。
きっと私はあれは父のやさしさだと思っている。
この記事にコメントする