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ー番外編(寿命の時期)ー <オオ○キ教授シリーズ>
2018.01.15 (Mon) | Category : 創作作品
44:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/10/21(火)22:53:56ID:qJtBaj3b0
【甕】シリーズまとめの意味もあって、兄貴視点の番外編を送ります。
番外編(寿命の時期) 1/7
俺が4歳になった歳の年末、両親が交通事故で逝った。
情に厚い田舎の百姓の一族だった親父のおかげで、俺は厄介者扱いされることもなく、すぐに親父の弟夫婦に引き取ってもらえることになった。
子どものなかった夫婦は、俺を実子のように可愛がってくれた。
だけど、素直じゃなかった俺は、なんとなく遠慮した感情を持ったまま5年の歳月を過ごした。
ある日、小学校から帰ったら、母さんが俺を呼び、かしこまった声で報告した。
「弟か妹ができるのよ」
俺は…喜んだふりをした。
ついに、この家に俺の居場所がなくなることを予感していながら。
数ヵ月後、病院のベッドで初めて美耶と対面した。
周りの子どもと比べても、一回り小さな赤ん坊だった。
「未熟児ぎりぎりだったの」
と、母さんは大役を果たした喜びを滲ませる。
恐々と手を握ると、美耶は力強く握り返した。
45:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/10/21(火)22:54:19ID:qJtBaj3b0
番外編(寿命の時期) 2/7
当時の俺は、いま考えると、なんて後ろ向きの暗いやつだったんだろうと思う。
美耶が家族の顔を識別するようになった。
母さんを見て笑い、父さんを見て泣き、俺を見て…警戒しているように…見えた。
俺は、美耶がいなくなってくれることを、毎日願っていた。
まだ幼すぎて、この家を放り出されるのは、とても不安だったから。
学校の帰りに、途中の神社に寄り道をし、虚(うろ=穴)の空いているご神木に向かって祈り続けた。
「俺の居場所がなくなりませんように」
「働くことができるようになるまで、家を追い出されませんように」
「もし願いが叶ったら寿命が半分になってもいいから、どうかいまは捨てられませんように」
美耶の顔が見られなくなって、部屋にこもるようになった。
父さんと母さんは、そんな変化を心配したけど、原因はわからなかったみたいだ。
俺は、自力ではどうしようもないところまで追い詰められていた。
葬式の席で、親類の一人が、
「崇志(たかし)くんだけ生き残るなんて、可哀相ね」
と言った。俺も一緒に死ねばよかったね、という言葉に聞こえたんだ。
俺は、生きてても邪魔にしかならない存在なのか?
46:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/10/21(火)22:54:49ID:qJtBaj3b0
番外編(寿命の時期) 3/7
解決してくれたのは、他ならぬ美耶だった。
その日、いつものように神社に寄り、強力に祈念して帰宅した俺を、母さんが勢い込んで出迎えた。
「ベビーベッドの横に来て!早く!」
わけがわからないまま美耶の隣りに立つと、美耶が俺を見て、
「にーちゃ」
と言った。
笑顔で、はっきりと、そして、何度も何度も。
「初めての言葉が『兄ちゃん』だったなんて、ちょっと嬉しいでしょ」
と母さんは無邪気に喜ぶ。
…俺は…正規の子どもである美耶に、家族として認められた気がして…嬉しかったね、確かに。
すぐに鞄を引っさげて部屋にこもり、思いっきり泣き明かした。
あんなに苦しかった胸のつかえが、あっさりと溶けて消えてゆくのが不思議なほどだった。
早くに死んじまった実親のためと。
孤独な子どもとして悩んだ俺自身のためと。
何の罪のもないのに八つ当たりしちまった美耶のためと。
まあ、名高先輩とか、その他もろもろの人たちのために、俺は出家という道を選んだ。
いまは精神的にも落ち着いて、特につまづきもない。
ただ…。
あの虚の神木との約束が、最近、肩にのしかかってきている。
『もし願いが叶ったら寿命が半分になってもいい』
俺はいま35だ。本来の半分の人生しかないとしたら、そろそろ終わりが見えている。
47:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/10/21(火)22:55:14ID:qJtBaj3b0
番外編(寿命の時期) 4/7
だから、【ついでに】呪いをかぶってやろうかと思って、あの甕を壊した。
死んで元々だったから怖くはなかった。
でも、美耶は『呪いはもうない』と言う。
俺は、また美耶に助けてもらったわけだ。
退院した美耶とお袋を車に乗せ、俺は郷里へとハンドルを取った。
同時に退院した晴彦は、
「自力でなんとかするよ」
と、返却された自分の車で岡山まで帰っていった。
後姿を見送りながら、美耶が、
「ハルさん、また会えるかなあ…」
と呟くので、
「教授の家に戻るって言ってたろ。そしたら同じ県内なんだから、毎週でも会える」
と慰めた。
露骨に嬉しそうな表情(かお)するのが笑えるねえ。
48:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/10/21(火)22:56:07ID:qJtBaj3b0
番外編(寿命の時期) 5/7
帰り道。
後部座席でお袋が爆睡に入ったところを見計らって、美耶が語りだした。
「ねえお兄ちゃん…気持ちの悪い話しても、いい?」
眠気を覚え始めていた俺は、歓迎した(笑)。
「じゃあ」
と、妹は話し始める。
「あの甕ね、何に使ったかっていうと、地下にいる修験者に飲み水を提供するためだったの」
「ふうん…」
俺のイメージでは、修験者は、一切の食物を断たれる行(ぎょう)を強いられたのかと思ったが、水を与えられたということは、即身仏に近い状況だったわけか。
即身仏っていうのは、修行者が自らの意思で地中の箱に収まり、餓死するまで行を行うという荒行のことだ。
食べ物は口にせず、漆を混ぜた茶のみを飲料するので、理想的なミイラに仕上がるらしい。
美耶が続ける。
「でもね、藤原は、その水に死んだ修験者たちの脳を混ぜたの。だから、まだ生きている修験者が甕の水を飲んだとしたら」
【共食い】になるんだよね、と、誰かに聞かれることを憚るように、美耶は、口元を手で覆った。
49:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/10/21(火)22:57:33ID:qJtBaj3b0
番外編(寿命の時期) 6/7
美耶の説明は、古代呪術の片鱗をかじった俺には、ピンと来る話だった。
「蟲毒(こどく)…だな」
蟲毒とは、毒のある生物を同じ入れ物に入れて共食いさせ、最後に生き残ったヤツを呪いやお守り代わりに使うっていう呪法だ。所持して定期的に贄を捧げてやれば、家督に繁栄をもたらす。逆に、敵対している家に送りつけて滅ぼす力も持つと言われる。
中国から日本に伝播してきた時点で、【毒の生物】に関しては、少し形を変えているようだ。
毒性を持たない犬を、頭だけ出して地中に埋め、飢え切ったところで首を刎ねて呪術に使うという【犬神】なんかも、蟲毒の一種だと分類されている。
「…人間って、なんでそんなこと実行できるの…?」
美耶は辟易した様子で吐き捨てる。
「さあなあ」
と答えたけど、俺にはなんとなく、呪術に頼らざるを得なかった、そして、呪術ばかりを発展させてしまった人間の気持ちがわかるんだ。
それしか救われる方法がなかったから。
「どうしても叶えたいことがあったら、より強力そうな力に頼るものじゃないのかな、人間って」
と言うと、美耶は、
「神秘的なものに頼るより、生きてる人間同士が協力し合ったほうが、絶対にいい結果が生まれる」
と言い切った。
50:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/10/21(火)22:58:34ID:qJtBaj3b0
番外編(寿命の時期) 7/7
美耶とお袋を家に送り届けて、寺に帰ると、お庫裏さんが外まで出て迎えてくれた。
「お帰りくださってありがとうございます」
いつもどおりの他人行儀な挨拶。
ついつい、イジワルなツッコミをしてみたくなった。
「俺が帰ってきて、嬉しい?」
お庫裏さんは笑って、
「貴方は私の大事な家族ですから」
と言った。
甕を壊すときに、俺、こいつに言ったんだよね。
「もし俺が死んだら、悪いけど、もう1回養子取ってくれる?」
馬鹿だな、俺って。
【家族】を信用しなくて、何回同じ過ちを犯すんだか。
「ただいま」
と言うと、奥さんは、ますます嬉しそうに、
「お疲れさまでした。お帰りなさい」
と答えた。
『明日死ぬ人間を今日救ったとしても、意味はない』
と美耶には言ったが、【今日できること】があるのなら、明日死ぬとしても、人生の意味はあるのかもしれない。
俺が僧侶である意味が、また一つ、追加された。
引用元:【霊感持ちの】シリーズ物総合スレ6【友人・知人】
https://anchorage.5ch.net/test/read.cgi/occult/1223829762/44-50
【甕】シリーズまとめの意味もあって、兄貴視点の番外編を送ります。
番外編(寿命の時期) 1/7
俺が4歳になった歳の年末、両親が交通事故で逝った。
情に厚い田舎の百姓の一族だった親父のおかげで、俺は厄介者扱いされることもなく、すぐに親父の弟夫婦に引き取ってもらえることになった。
子どものなかった夫婦は、俺を実子のように可愛がってくれた。
だけど、素直じゃなかった俺は、なんとなく遠慮した感情を持ったまま5年の歳月を過ごした。
ある日、小学校から帰ったら、母さんが俺を呼び、かしこまった声で報告した。
「弟か妹ができるのよ」
俺は…喜んだふりをした。
ついに、この家に俺の居場所がなくなることを予感していながら。
数ヵ月後、病院のベッドで初めて美耶と対面した。
周りの子どもと比べても、一回り小さな赤ん坊だった。
「未熟児ぎりぎりだったの」
と、母さんは大役を果たした喜びを滲ませる。
恐々と手を握ると、美耶は力強く握り返した。
45:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/10/21(火)22:54:19ID:qJtBaj3b0
番外編(寿命の時期) 2/7
当時の俺は、いま考えると、なんて後ろ向きの暗いやつだったんだろうと思う。
美耶が家族の顔を識別するようになった。
母さんを見て笑い、父さんを見て泣き、俺を見て…警戒しているように…見えた。
俺は、美耶がいなくなってくれることを、毎日願っていた。
まだ幼すぎて、この家を放り出されるのは、とても不安だったから。
学校の帰りに、途中の神社に寄り道をし、虚(うろ=穴)の空いているご神木に向かって祈り続けた。
「俺の居場所がなくなりませんように」
「働くことができるようになるまで、家を追い出されませんように」
「もし願いが叶ったら寿命が半分になってもいいから、どうかいまは捨てられませんように」
美耶の顔が見られなくなって、部屋にこもるようになった。
父さんと母さんは、そんな変化を心配したけど、原因はわからなかったみたいだ。
俺は、自力ではどうしようもないところまで追い詰められていた。
葬式の席で、親類の一人が、
「崇志(たかし)くんだけ生き残るなんて、可哀相ね」
と言った。俺も一緒に死ねばよかったね、という言葉に聞こえたんだ。
俺は、生きてても邪魔にしかならない存在なのか?
46:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/10/21(火)22:54:49ID:qJtBaj3b0
番外編(寿命の時期) 3/7
解決してくれたのは、他ならぬ美耶だった。
その日、いつものように神社に寄り、強力に祈念して帰宅した俺を、母さんが勢い込んで出迎えた。
「ベビーベッドの横に来て!早く!」
わけがわからないまま美耶の隣りに立つと、美耶が俺を見て、
「にーちゃ」
と言った。
笑顔で、はっきりと、そして、何度も何度も。
「初めての言葉が『兄ちゃん』だったなんて、ちょっと嬉しいでしょ」
と母さんは無邪気に喜ぶ。
…俺は…正規の子どもである美耶に、家族として認められた気がして…嬉しかったね、確かに。
すぐに鞄を引っさげて部屋にこもり、思いっきり泣き明かした。
あんなに苦しかった胸のつかえが、あっさりと溶けて消えてゆくのが不思議なほどだった。
早くに死んじまった実親のためと。
孤独な子どもとして悩んだ俺自身のためと。
何の罪のもないのに八つ当たりしちまった美耶のためと。
まあ、名高先輩とか、その他もろもろの人たちのために、俺は出家という道を選んだ。
いまは精神的にも落ち着いて、特につまづきもない。
ただ…。
あの虚の神木との約束が、最近、肩にのしかかってきている。
『もし願いが叶ったら寿命が半分になってもいい』
俺はいま35だ。本来の半分の人生しかないとしたら、そろそろ終わりが見えている。
47:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/10/21(火)22:55:14ID:qJtBaj3b0
番外編(寿命の時期) 4/7
だから、【ついでに】呪いをかぶってやろうかと思って、あの甕を壊した。
死んで元々だったから怖くはなかった。
でも、美耶は『呪いはもうない』と言う。
俺は、また美耶に助けてもらったわけだ。
退院した美耶とお袋を車に乗せ、俺は郷里へとハンドルを取った。
同時に退院した晴彦は、
「自力でなんとかするよ」
と、返却された自分の車で岡山まで帰っていった。
後姿を見送りながら、美耶が、
「ハルさん、また会えるかなあ…」
と呟くので、
「教授の家に戻るって言ってたろ。そしたら同じ県内なんだから、毎週でも会える」
と慰めた。
露骨に嬉しそうな表情(かお)するのが笑えるねえ。
48:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/10/21(火)22:56:07ID:qJtBaj3b0
番外編(寿命の時期) 5/7
帰り道。
後部座席でお袋が爆睡に入ったところを見計らって、美耶が語りだした。
「ねえお兄ちゃん…気持ちの悪い話しても、いい?」
眠気を覚え始めていた俺は、歓迎した(笑)。
「じゃあ」
と、妹は話し始める。
「あの甕ね、何に使ったかっていうと、地下にいる修験者に飲み水を提供するためだったの」
「ふうん…」
俺のイメージでは、修験者は、一切の食物を断たれる行(ぎょう)を強いられたのかと思ったが、水を与えられたということは、即身仏に近い状況だったわけか。
即身仏っていうのは、修行者が自らの意思で地中の箱に収まり、餓死するまで行を行うという荒行のことだ。
食べ物は口にせず、漆を混ぜた茶のみを飲料するので、理想的なミイラに仕上がるらしい。
美耶が続ける。
「でもね、藤原は、その水に死んだ修験者たちの脳を混ぜたの。だから、まだ生きている修験者が甕の水を飲んだとしたら」
【共食い】になるんだよね、と、誰かに聞かれることを憚るように、美耶は、口元を手で覆った。
49:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/10/21(火)22:57:33ID:qJtBaj3b0
番外編(寿命の時期) 6/7
美耶の説明は、古代呪術の片鱗をかじった俺には、ピンと来る話だった。
「蟲毒(こどく)…だな」
蟲毒とは、毒のある生物を同じ入れ物に入れて共食いさせ、最後に生き残ったヤツを呪いやお守り代わりに使うっていう呪法だ。所持して定期的に贄を捧げてやれば、家督に繁栄をもたらす。逆に、敵対している家に送りつけて滅ぼす力も持つと言われる。
中国から日本に伝播してきた時点で、【毒の生物】に関しては、少し形を変えているようだ。
毒性を持たない犬を、頭だけ出して地中に埋め、飢え切ったところで首を刎ねて呪術に使うという【犬神】なんかも、蟲毒の一種だと分類されている。
「…人間って、なんでそんなこと実行できるの…?」
美耶は辟易した様子で吐き捨てる。
「さあなあ」
と答えたけど、俺にはなんとなく、呪術に頼らざるを得なかった、そして、呪術ばかりを発展させてしまった人間の気持ちがわかるんだ。
それしか救われる方法がなかったから。
「どうしても叶えたいことがあったら、より強力そうな力に頼るものじゃないのかな、人間って」
と言うと、美耶は、
「神秘的なものに頼るより、生きてる人間同士が協力し合ったほうが、絶対にいい結果が生まれる」
と言い切った。
50:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/10/21(火)22:58:34ID:qJtBaj3b0
番外編(寿命の時期) 7/7
美耶とお袋を家に送り届けて、寺に帰ると、お庫裏さんが外まで出て迎えてくれた。
「お帰りくださってありがとうございます」
いつもどおりの他人行儀な挨拶。
ついつい、イジワルなツッコミをしてみたくなった。
「俺が帰ってきて、嬉しい?」
お庫裏さんは笑って、
「貴方は私の大事な家族ですから」
と言った。
甕を壊すときに、俺、こいつに言ったんだよね。
「もし俺が死んだら、悪いけど、もう1回養子取ってくれる?」
馬鹿だな、俺って。
【家族】を信用しなくて、何回同じ過ちを犯すんだか。
「ただいま」
と言うと、奥さんは、ますます嬉しそうに、
「お疲れさまでした。お帰りなさい」
と答えた。
『明日死ぬ人間を今日救ったとしても、意味はない』
と美耶には言ったが、【今日できること】があるのなら、明日死ぬとしても、人生の意味はあるのかもしれない。
俺が僧侶である意味が、また一つ、追加された。
引用元:【霊感持ちの】シリーズ物総合スレ6【友人・知人】
https://anchorage.5ch.net/test/read.cgi/occult/1223829762/44-50
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