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ー甕ー <オオ○キ教授シリーズ>
2018.01.06 (Sat) | Category : 創作作品
500:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/09/15(月)23:00:19ID:1TVHnl7i0
甕 1/8
空気の冴え渡る極寒の頃、兄貴が教授を連れて家に来ることになった。
久しぶりの訪問に、父と母は目を輝かせる。
…この人たちは、教授の本性を知らないから(汗)。
玄関先まで迎えに出たのは、母と私。
振る舞いの上品な教授は、最初の訪問から、母を虜にしていたようだ。
「お父さんより魅力的」
と、はるかに老いた教授と較べられる父…立場なし…。
母の誘導で土間から家に上がりこんだ教授は、狭い廊下の脇によけていた私に、
「今度は少し遠出をしよう」
と告げて、先に進んだ。
「蕎麦はもういいですよ」
教授の後ろから、軽口を叩きながらついていこうとした私。
でも、そこで足が固まった。
501:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/09/15(月)23:01:13ID:1TVHnl7i0
甕 2/8
教授の背中に、長い髪の【何か】が張りついてる。のが見える。
裸の女性の後姿にも見えるけど、体型が異様…。細い。とにかく痩せている。
骨格標本に皮が張りついているみたい。
肌の色は、死人のように土気色だった。
教授の動きに合わせて、操り人形のごとく、くらくらと揺れる。
「何してんだ?」
最後に入ってきた兄貴が、立ち止まった私の後ろから、能天気な声をかけてくる。
私は兄貴を玄関に押し戻し、母と教授に聞こえない小声で聞いた。
「見えた?兄貴、見えた?」
「は?」
見かけは織田○道みたいなくせに、兄貴は全然気づいてなかったらしい。
でも、
「教授の後ろに、餓鬼みたいな人が…」
と私が教えると、心当たりがあったようで、
「ああ。ついてきたのか」
と、あっさり認めて、さっさと居間に行ってしまった。
厄介なモノを連れてくるのは、教授だけにしてよ~。
502:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/09/15(月)23:02:00ID:1TVHnl7i0
甕 3/8
居間の座卓に全員が座ったときには、教授の後ろのアレは見えなくなっていた。
それでも、ビクビクしながら酒を注いだりしてたけど、父と兄貴が、例によって羽目を外し始めた頃には気にならなくなった。
「最近はどの辺りを勉強してみえるんですか?」
父が鼻の頭を赤くして、はしゃぐ。
田舎の農家の次男坊だった父には、こういう学問的な話に触れることが、自分のステータスを高めることにもなっているらしい。
「興味があるのは東北ですが、まだお話できるような成果にはなっていませんね」
教授も、この環境の中では、穏やかな笑顔ができるみたい。
「今度は東北行き?」
私が尋ねると、
「広島だよなあ、教授?」
と、すっかり出来上がってる兄貴が口を挟んだ。
「そうだね。そちらが先だ」
教授も相槌を打つ。
母が兄貴に、
「教授に向かってなんですか、その口のききかたは」
と叱った(笑)。
503:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/09/15(月)23:03:04ID:1TVHnl7i0
甕 4/8
「広島というと、まさか原爆ですか?」
父の言葉に、私は内心で(郷土史と戦争は関係ないでしょ)と突っ込んだけど、教授は、
「ええ。それがらみです」
と肯定した。
「原爆で被災した【ある道具】の出所を調べたいと思いまして」
「それが、回りまわって、いま、うちの寺にあるわけ」
兄貴が付け加える。
兄貴の話に因ると、それは小さな甕(かめ)らしい。
水入れとして使ったもののようだけど、いまではひび割れて、保水力を失っている。
兄貴のお義父さん、つまり先代の住職、が存命のときに、教授が寺に持ち込んだものだ。
教授はそれを【呪具】だと紹介した。
「呪いがかかってる…って、ことですか?」
私が確認すると、教授と兄貴が同時に、
「そうだよ」
と、返事をした。
「あの甕は、水を欲しながら得られず、飢えて死んでいった人間の魂がこもってるんだ」
教授は、たぶんサービス精神なんだろうけど、わざと陰にこもった声で続ける。
父も母も、兄貴さえ、その暗い雰囲気を楽しんでいるようだった。
でも、私は笑えない。だって。
…さっきのアレは、じゃあ、その呪具からとり憑いてきたモノなの?
504:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/09/15(月)23:04:22ID:1TVHnl7i0
甕 5/8
その甕は陶器質のものであるらしい。
【質】というのは、陶器としては完成されていない、土器と陶器のあいのこみたいな質感だから、なのだそう。
そうすると、かなり古い年代の物ではないかと勘ぐるけど、教授は、
「古墳時代までは行っていないでしょう。せいぜい遡って、奈良時代」
と答えた。
それでも、学術的には価値が高いんじゃないの?
「僕の実家の蔵にあったものでね」
酒に強い教授は、それでも少し酔ったのか、身の上話を始めた。
「由来も何もわからないんですが、代々、こんな呪いの話が語り継がれているわけです」
「我が家には一代に1人は狂人が生まれるのだとか。そして、こっそりと隠される…つまり、家族の手で葬られるわけですな」
「僕の世代には僕と妹がいるのですが、どう見ても、狂人資質なのは僕だ。だから、僕自身、粛清される自覚があったんです。でも」
そんな話をしている間も笑みを絶やさない教授だったけど、次の言葉は、少し、表情を翳らせてた。
「残念ながら、選ばれたのは僕ではなく、僕の妹でした」
505:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/09/15(月)23:05:00ID:1TVHnl7i0
甕 6/8
話の途中だったけど、私は席を離れた。
見える…。
教授の後ろの【餓鬼】が、教授の肩口にのしかかりながら、顔を上げようとしているのが。
…見たくない。
台所で塞ぎこんでいると、兄貴が顔を覗かせた。
「酒の追加を持ちに来た…って、何やってんの、お前?」
坊さんのくせに何も気づかない兄貴に八つ当たりした。
「教授の後ろにくっついてるあれは何なの?!兄貴、本当に見えてないの?!!」
兄貴は…困ったように首をかしげる。
「うん。まったく見えてない」
「もーっ!!!」
怒りを通り越して、呆れた。
506:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/09/15(月)23:06:48ID:1TVHnl7i0
甕 7/8
「それ、たぶん、教授の妹さん」
兄貴は、私の正面のテーブル席を確保し、ほお杖をついて、話し始めた。
「教授の妹さんは、10代の頃に家を出て独り暮らしを始めたんだ。理由はよくわからないけど」
「家を出てからはほとんど音信不通。教授も、自分の性格に負い目があったもんだから、会いに行ったことはなかったらしい。…つまり、妹さんが家を出た原因が自分にあると思ったんだな」
「ところが、元気にやっていると思った妹さんは、アパートで餓死した。就職先を解雇されて、収入がなかったんだ」
にわかには信じられない話だった。
でも、兄貴の補足で、なんとなく納得はした。
「いまも生活苦は他人事じゃない時代だけど、教授の若い頃は高度経済成長の真っ只中だ。世の中が豊かになっていく一方で、切り捨てらた人たちは、少数ながら、いたんだよ」
まるで贄だな、と思った。
多くの人間が裕福に満たされるための、犠牲…。
507:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/09/15(月)23:07:56ID:1TVHnl7i0
甕 8/8
兄貴に促されて席に戻った。
教授の背中には、まだアレがいたけど、誰も気づいていないようだ。
兄貴が、教授に追加の酒を注ぎながら、言う。
「あの甕さあ、ときどき喋るんですよ。中身は聞き取れないんだけど、もんのすごくやかましい」
教授が興味深そうに聞く。
「それは1人の声かね?」
兄貴は笑いながら答える。
「いえいえ。代々の呪いの継承者が集まってるから賑やかですよ」
そして、自信ありげに付け加える。
「そのうち、みんなまとめて成仏させますから、まあ、安心しててください」
その瞬間、教授の妹さんの姿は、淡くなって、消えた。
家族には、
「大口を叩くな」
と馬鹿にされた兄貴だけど、案外頼りになるのかもしれない。
なんて思った。
引用元:【霊感持ちの】シリーズ物総合スレ5【友人・知人】
https://anchorage.5ch.net/test/read.cgi/occult/1219147569/500-507
甕 1/8
空気の冴え渡る極寒の頃、兄貴が教授を連れて家に来ることになった。
久しぶりの訪問に、父と母は目を輝かせる。
…この人たちは、教授の本性を知らないから(汗)。
玄関先まで迎えに出たのは、母と私。
振る舞いの上品な教授は、最初の訪問から、母を虜にしていたようだ。
「お父さんより魅力的」
と、はるかに老いた教授と較べられる父…立場なし…。
母の誘導で土間から家に上がりこんだ教授は、狭い廊下の脇によけていた私に、
「今度は少し遠出をしよう」
と告げて、先に進んだ。
「蕎麦はもういいですよ」
教授の後ろから、軽口を叩きながらついていこうとした私。
でも、そこで足が固まった。
501:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/09/15(月)23:01:13ID:1TVHnl7i0
甕 2/8
教授の背中に、長い髪の【何か】が張りついてる。のが見える。
裸の女性の後姿にも見えるけど、体型が異様…。細い。とにかく痩せている。
骨格標本に皮が張りついているみたい。
肌の色は、死人のように土気色だった。
教授の動きに合わせて、操り人形のごとく、くらくらと揺れる。
「何してんだ?」
最後に入ってきた兄貴が、立ち止まった私の後ろから、能天気な声をかけてくる。
私は兄貴を玄関に押し戻し、母と教授に聞こえない小声で聞いた。
「見えた?兄貴、見えた?」
「は?」
見かけは織田○道みたいなくせに、兄貴は全然気づいてなかったらしい。
でも、
「教授の後ろに、餓鬼みたいな人が…」
と私が教えると、心当たりがあったようで、
「ああ。ついてきたのか」
と、あっさり認めて、さっさと居間に行ってしまった。
厄介なモノを連れてくるのは、教授だけにしてよ~。
502:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/09/15(月)23:02:00ID:1TVHnl7i0
甕 3/8
居間の座卓に全員が座ったときには、教授の後ろのアレは見えなくなっていた。
それでも、ビクビクしながら酒を注いだりしてたけど、父と兄貴が、例によって羽目を外し始めた頃には気にならなくなった。
「最近はどの辺りを勉強してみえるんですか?」
父が鼻の頭を赤くして、はしゃぐ。
田舎の農家の次男坊だった父には、こういう学問的な話に触れることが、自分のステータスを高めることにもなっているらしい。
「興味があるのは東北ですが、まだお話できるような成果にはなっていませんね」
教授も、この環境の中では、穏やかな笑顔ができるみたい。
「今度は東北行き?」
私が尋ねると、
「広島だよなあ、教授?」
と、すっかり出来上がってる兄貴が口を挟んだ。
「そうだね。そちらが先だ」
教授も相槌を打つ。
母が兄貴に、
「教授に向かってなんですか、その口のききかたは」
と叱った(笑)。
503:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/09/15(月)23:03:04ID:1TVHnl7i0
甕 4/8
「広島というと、まさか原爆ですか?」
父の言葉に、私は内心で(郷土史と戦争は関係ないでしょ)と突っ込んだけど、教授は、
「ええ。それがらみです」
と肯定した。
「原爆で被災した【ある道具】の出所を調べたいと思いまして」
「それが、回りまわって、いま、うちの寺にあるわけ」
兄貴が付け加える。
兄貴の話に因ると、それは小さな甕(かめ)らしい。
水入れとして使ったもののようだけど、いまではひび割れて、保水力を失っている。
兄貴のお義父さん、つまり先代の住職、が存命のときに、教授が寺に持ち込んだものだ。
教授はそれを【呪具】だと紹介した。
「呪いがかかってる…って、ことですか?」
私が確認すると、教授と兄貴が同時に、
「そうだよ」
と、返事をした。
「あの甕は、水を欲しながら得られず、飢えて死んでいった人間の魂がこもってるんだ」
教授は、たぶんサービス精神なんだろうけど、わざと陰にこもった声で続ける。
父も母も、兄貴さえ、その暗い雰囲気を楽しんでいるようだった。
でも、私は笑えない。だって。
…さっきのアレは、じゃあ、その呪具からとり憑いてきたモノなの?
504:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/09/15(月)23:04:22ID:1TVHnl7i0
甕 5/8
その甕は陶器質のものであるらしい。
【質】というのは、陶器としては完成されていない、土器と陶器のあいのこみたいな質感だから、なのだそう。
そうすると、かなり古い年代の物ではないかと勘ぐるけど、教授は、
「古墳時代までは行っていないでしょう。せいぜい遡って、奈良時代」
と答えた。
それでも、学術的には価値が高いんじゃないの?
「僕の実家の蔵にあったものでね」
酒に強い教授は、それでも少し酔ったのか、身の上話を始めた。
「由来も何もわからないんですが、代々、こんな呪いの話が語り継がれているわけです」
「我が家には一代に1人は狂人が生まれるのだとか。そして、こっそりと隠される…つまり、家族の手で葬られるわけですな」
「僕の世代には僕と妹がいるのですが、どう見ても、狂人資質なのは僕だ。だから、僕自身、粛清される自覚があったんです。でも」
そんな話をしている間も笑みを絶やさない教授だったけど、次の言葉は、少し、表情を翳らせてた。
「残念ながら、選ばれたのは僕ではなく、僕の妹でした」
505:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/09/15(月)23:05:00ID:1TVHnl7i0
甕 6/8
話の途中だったけど、私は席を離れた。
見える…。
教授の後ろの【餓鬼】が、教授の肩口にのしかかりながら、顔を上げようとしているのが。
…見たくない。
台所で塞ぎこんでいると、兄貴が顔を覗かせた。
「酒の追加を持ちに来た…って、何やってんの、お前?」
坊さんのくせに何も気づかない兄貴に八つ当たりした。
「教授の後ろにくっついてるあれは何なの?!兄貴、本当に見えてないの?!!」
兄貴は…困ったように首をかしげる。
「うん。まったく見えてない」
「もーっ!!!」
怒りを通り越して、呆れた。
506:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/09/15(月)23:06:48ID:1TVHnl7i0
甕 7/8
「それ、たぶん、教授の妹さん」
兄貴は、私の正面のテーブル席を確保し、ほお杖をついて、話し始めた。
「教授の妹さんは、10代の頃に家を出て独り暮らしを始めたんだ。理由はよくわからないけど」
「家を出てからはほとんど音信不通。教授も、自分の性格に負い目があったもんだから、会いに行ったことはなかったらしい。…つまり、妹さんが家を出た原因が自分にあると思ったんだな」
「ところが、元気にやっていると思った妹さんは、アパートで餓死した。就職先を解雇されて、収入がなかったんだ」
にわかには信じられない話だった。
でも、兄貴の補足で、なんとなく納得はした。
「いまも生活苦は他人事じゃない時代だけど、教授の若い頃は高度経済成長の真っ只中だ。世の中が豊かになっていく一方で、切り捨てらた人たちは、少数ながら、いたんだよ」
まるで贄だな、と思った。
多くの人間が裕福に満たされるための、犠牲…。
507:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/09/15(月)23:07:56ID:1TVHnl7i0
甕 8/8
兄貴に促されて席に戻った。
教授の背中には、まだアレがいたけど、誰も気づいていないようだ。
兄貴が、教授に追加の酒を注ぎながら、言う。
「あの甕さあ、ときどき喋るんですよ。中身は聞き取れないんだけど、もんのすごくやかましい」
教授が興味深そうに聞く。
「それは1人の声かね?」
兄貴は笑いながら答える。
「いえいえ。代々の呪いの継承者が集まってるから賑やかですよ」
そして、自信ありげに付け加える。
「そのうち、みんなまとめて成仏させますから、まあ、安心しててください」
その瞬間、教授の妹さんの姿は、淡くなって、消えた。
家族には、
「大口を叩くな」
と馬鹿にされた兄貴だけど、案外頼りになるのかもしれない。
なんて思った。
引用元:【霊感持ちの】シリーズ物総合スレ5【友人・知人】
https://anchorage.5ch.net/test/read.cgi/occult/1219147569/500-507
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