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ー蛇抜けー <オオ○キ教授シリーズ>
2017.12.30 (Sat) | Category : 創作作品
235:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/08/30(土)22:44:18ID:xePEZg9L0
蛇抜け 1/7
こんな話でもいいのかな。試しに投下させてもらいます。
兄貴がある寺の住職に納まった。
うちは普通のサラリーマン家庭なのに、昔っから出家に憧れていた、変わり者の兄貴だった。
そんな兄貴が、ある日、郷土史家だという知り合いを連れて家に来た。何でも、調査中に見つかった呪具を寺に持ち込んできた人らしい。
60代のお爺さんで、名前は大月。うちでのニックネームは、速攻で【オオツキ教授】に決まった(笑)。
オオツキ教授は、郷土史の中でも暗部、つまり呪いとか生贄とか関わってる史実を集めているみたいだった。
おどろおどろしい語り口調が面白かったこともあり、彼を一番気に入ったのは、他ならぬ私だ。
そろそろ運転の怪しくなってきた教授は、現地調査の際の運転手を求めているということだった。
2つ返事で引き受けた私に、母が小言を言う。
「そんなことしてるより、花嫁修業しなさいよ」
「修行しなくてももらってくれる人を探すから」
至極まともな返事をしたと思うのに、母は、失礼なことに、絶望的な溜息をついた。
236:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/08/30(土)22:45:10ID:xePEZg9L0
蛇抜け 2/7
その教授との記念すべき1回目のデートは、日本の中央に位置する県の山岳紀行になった。
なんでも、江戸時代までは絶えず水害に悩まされていた難所が、今から行く山の中に残されているとのこと。
具体的にどんな害だったのかというと、今で言う【鉄砲水】。
当時は、細い山々の間を大蛇のような凶悪な濁流が押し寄せるイメージから【蛇抜け(じゃぬけ)】と呼ばれていたらしい。
指示されるとおりに車を進めると、急峻な崖の下に作られた小さな駐車場に出た。
車を出て見回すと、四方は連なる尾根に囲まれた、まさに谷間としか言いようがない土地になっている。
どこからか沢の音が聞こえた。あの水が増水したら、ここなど一発で餌食だなと思ったら、足が震えた。
駐車場から、申しわけ程度に伸びている遊歩道を、60代のわりに身軽な教授について登る。
237:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/08/30(土)22:45:53ID:xePEZg9L0
蛇抜け 3/7
鬱蒼とした樹木の間に伸びていく獣道。お世辞にも歩きやすいとは言えない。
堆積した落ち葉に何度も足を取られるのを忌々しく思っていると、少し先を行くオオツキ教授は、笑いながら小噺をした。
「このあたりは蛇抜けで水没をした最上部にあたる所でね。上流から流されてきた家屋やら人間やらが、よくこのへんに引っかかっていたようだよ」
私は思わず足元を見た。浮き上がった木の根が私の左足を捕らえている。だけだ。
「…自然の脅威ですね…」
ぞくぞくと冷気を感じるのは、標高が上がったから…だと思いたい(汗)。
「そうだね。恐ろしいね。そして人間は、その脅威に信仰で対抗しようとしていた」
教授は、薄く残る脇道に入って、私を招いた。
教授の横に立つと、そこが、巨岩の上であることが見て取れた。
238:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/08/30(土)22:46:30ID:xePEZg9L0
蛇抜け 4/7
眼下は深い谷になっていた。
谷底には見事な水量を称えた渓谷が轟々と唸っている。
怖い…としか思わなかった。
清涼さや自然美なんていうものは、【管理された自然という余裕】があって、初めて持てる感想なんだ。
オオツキ教授が、右腕を水平に起こして対岸を指差すので、つられて見る。
そちらにも大きな岩がせり出している。
岩の下の斜面が大きくえぐられているせいか、今にも落ちそうな不安定さを感じた。
「見えるかな?」
と聞かれたので、光の届かない中、目を凝らすと、対岸の岩の上には古い木の棒が立っていた。
たぶん1mぐらいの高さだと思うけど、上部はちぎり取られたような折れ口を見せているから、もっと長いものだったのかもしれない。
「見えます」
と答えた。
教授は嬉しそうに、
「あれは人柱を立てた跡だよ」
と言った。
私は気分が悪くなって、座り込んだ。
239:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/08/30(土)22:47:05ID:xePEZg9L0
蛇抜け 5/7
「ごめんごめん。あの住職の妹さんだから気にしないと思った」
愉快そうなオオツキ教授に別の意味で不快さを感じながら、私は山麓まで安全運転を重ねた。
「兄貴よりはだいぶ繊細にできてますから」
老獪にどれほど効くか程度の嫌味だけど、返さずにはいられない。
「和やかな食卓で酒飲みながら話をしてるんじゃないんです。目の前に人が死んだ現場があるのに、平気でいられるほうがおかしい」
「それを想像するのが、僕には一番の楽しみだからね」
嬉々とする教授。改めてゾッとする。
240:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/08/30(土)22:48:15ID:xePEZg9L0
蛇抜け 6/7
私の気持ちなどお構いなしに、教授の解説はさらに細に入った。
「あの人柱に立てられたのは、主に子どもだった。貧しい村には、生まれては迷惑な子どもが現れるものだ。それを【禍つ神に捧げる】という名目で葬ったんだ」
「…ひどい話ですね」
「生贄には自然の怖さを充分に知らしめた上で葬らねばならない。だから、大雨ですぐに沈下してしまう水際ではなくて、蛇抜けが起こらない限り死ぬことのない岩の上に縛りつけられた」
「…」
言葉もない。
「足元を激流が逆巻き、雨粒が頬を打つ中、目を血走らせながら上流が決壊する瞬間を待っている心境を想像してごらん。神も自然も人間も、家族でさえも、呪いの対象としてしか見られなくなると思わないかい?」
何が言いたいのはわからず、返事を逡巡していると、教授はトーンを落として、ボソリと呟いた。
「それが人間の本性だよ。僕は、死を覚悟するなんて綺麗事はありえないと思ってるんだ」
「…」
教授は、歳を重ねた今でも、死に対する恐怖が薄れないんだな。そんなふうに思った。
241:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/08/30(土)22:49:20ID:xePEZg9L0
蛇抜け 7/7
教授は何度も足を運んでいるというふもとの資料館に、私のために寄ってもらえることになった。
蛇抜けの起きた年度や被害を綴った古文書が残っているという。
入ってみると、20畳ほどの空間には、当時の衣料や道具が展示され、地図と年表が壁に貼られていた。
真ん中には、ガラスケースに入った書籍が数点。でも、字が崩れすぎてて読めない(汗)。
奥の一角にも大型のケースが据えつけられ、中には腐った木片が大事そうに陳列されていた。説明文には【人柱の破片】と…。
そして…そして、その上の壁には、こう書かれていた。
【○○山の中腹には、今もその柱が立っていた穴を見ることができる】
車に戻ると、オオツキ教授は居眠りを決め込んでいた。
すぐさま起こして確かめる。
「さっき、私に聞きましたよね?『見える?』って。あれって、人柱が立っているのが見えるかどうか聞いたんですよね?」
教授は目をこすりながら、
「そんなもの残ってるわけがないでしょう。岩に穴が開いているのが見えるかって聞いたんだよ」
と答えた。
もっと目を凝らしていたら。
あの棒に縛りつけられて上流を凝視している何か、を、私は見てしまったのかもしれない。
不遇の死者の執念に、手を合わせずにはいられない気分になった。
(※⑦⑦⑦さんからの投稿です。ありがとうございました)
蛇抜け 1/7
こんな話でもいいのかな。試しに投下させてもらいます。
兄貴がある寺の住職に納まった。
うちは普通のサラリーマン家庭なのに、昔っから出家に憧れていた、変わり者の兄貴だった。
そんな兄貴が、ある日、郷土史家だという知り合いを連れて家に来た。何でも、調査中に見つかった呪具を寺に持ち込んできた人らしい。
60代のお爺さんで、名前は大月。うちでのニックネームは、速攻で【オオツキ教授】に決まった(笑)。
オオツキ教授は、郷土史の中でも暗部、つまり呪いとか生贄とか関わってる史実を集めているみたいだった。
おどろおどろしい語り口調が面白かったこともあり、彼を一番気に入ったのは、他ならぬ私だ。
そろそろ運転の怪しくなってきた教授は、現地調査の際の運転手を求めているということだった。
2つ返事で引き受けた私に、母が小言を言う。
「そんなことしてるより、花嫁修業しなさいよ」
「修行しなくてももらってくれる人を探すから」
至極まともな返事をしたと思うのに、母は、失礼なことに、絶望的な溜息をついた。
236:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/08/30(土)22:45:10ID:xePEZg9L0
蛇抜け 2/7
その教授との記念すべき1回目のデートは、日本の中央に位置する県の山岳紀行になった。
なんでも、江戸時代までは絶えず水害に悩まされていた難所が、今から行く山の中に残されているとのこと。
具体的にどんな害だったのかというと、今で言う【鉄砲水】。
当時は、細い山々の間を大蛇のような凶悪な濁流が押し寄せるイメージから【蛇抜け(じゃぬけ)】と呼ばれていたらしい。
指示されるとおりに車を進めると、急峻な崖の下に作られた小さな駐車場に出た。
車を出て見回すと、四方は連なる尾根に囲まれた、まさに谷間としか言いようがない土地になっている。
どこからか沢の音が聞こえた。あの水が増水したら、ここなど一発で餌食だなと思ったら、足が震えた。
駐車場から、申しわけ程度に伸びている遊歩道を、60代のわりに身軽な教授について登る。
237:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/08/30(土)22:45:53ID:xePEZg9L0
蛇抜け 3/7
鬱蒼とした樹木の間に伸びていく獣道。お世辞にも歩きやすいとは言えない。
堆積した落ち葉に何度も足を取られるのを忌々しく思っていると、少し先を行くオオツキ教授は、笑いながら小噺をした。
「このあたりは蛇抜けで水没をした最上部にあたる所でね。上流から流されてきた家屋やら人間やらが、よくこのへんに引っかかっていたようだよ」
私は思わず足元を見た。浮き上がった木の根が私の左足を捕らえている。だけだ。
「…自然の脅威ですね…」
ぞくぞくと冷気を感じるのは、標高が上がったから…だと思いたい(汗)。
「そうだね。恐ろしいね。そして人間は、その脅威に信仰で対抗しようとしていた」
教授は、薄く残る脇道に入って、私を招いた。
教授の横に立つと、そこが、巨岩の上であることが見て取れた。
238:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/08/30(土)22:46:30ID:xePEZg9L0
蛇抜け 4/7
眼下は深い谷になっていた。
谷底には見事な水量を称えた渓谷が轟々と唸っている。
怖い…としか思わなかった。
清涼さや自然美なんていうものは、【管理された自然という余裕】があって、初めて持てる感想なんだ。
オオツキ教授が、右腕を水平に起こして対岸を指差すので、つられて見る。
そちらにも大きな岩がせり出している。
岩の下の斜面が大きくえぐられているせいか、今にも落ちそうな不安定さを感じた。
「見えるかな?」
と聞かれたので、光の届かない中、目を凝らすと、対岸の岩の上には古い木の棒が立っていた。
たぶん1mぐらいの高さだと思うけど、上部はちぎり取られたような折れ口を見せているから、もっと長いものだったのかもしれない。
「見えます」
と答えた。
教授は嬉しそうに、
「あれは人柱を立てた跡だよ」
と言った。
私は気分が悪くなって、座り込んだ。
239:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/08/30(土)22:47:05ID:xePEZg9L0
蛇抜け 5/7
「ごめんごめん。あの住職の妹さんだから気にしないと思った」
愉快そうなオオツキ教授に別の意味で不快さを感じながら、私は山麓まで安全運転を重ねた。
「兄貴よりはだいぶ繊細にできてますから」
老獪にどれほど効くか程度の嫌味だけど、返さずにはいられない。
「和やかな食卓で酒飲みながら話をしてるんじゃないんです。目の前に人が死んだ現場があるのに、平気でいられるほうがおかしい」
「それを想像するのが、僕には一番の楽しみだからね」
嬉々とする教授。改めてゾッとする。
240:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/08/30(土)22:48:15ID:xePEZg9L0
蛇抜け 6/7
私の気持ちなどお構いなしに、教授の解説はさらに細に入った。
「あの人柱に立てられたのは、主に子どもだった。貧しい村には、生まれては迷惑な子どもが現れるものだ。それを【禍つ神に捧げる】という名目で葬ったんだ」
「…ひどい話ですね」
「生贄には自然の怖さを充分に知らしめた上で葬らねばならない。だから、大雨ですぐに沈下してしまう水際ではなくて、蛇抜けが起こらない限り死ぬことのない岩の上に縛りつけられた」
「…」
言葉もない。
「足元を激流が逆巻き、雨粒が頬を打つ中、目を血走らせながら上流が決壊する瞬間を待っている心境を想像してごらん。神も自然も人間も、家族でさえも、呪いの対象としてしか見られなくなると思わないかい?」
何が言いたいのはわからず、返事を逡巡していると、教授はトーンを落として、ボソリと呟いた。
「それが人間の本性だよ。僕は、死を覚悟するなんて綺麗事はありえないと思ってるんだ」
「…」
教授は、歳を重ねた今でも、死に対する恐怖が薄れないんだな。そんなふうに思った。
241:オオ○キ教授◆.QTJk/NbmY:2008/08/30(土)22:49:20ID:xePEZg9L0
蛇抜け 7/7
教授は何度も足を運んでいるというふもとの資料館に、私のために寄ってもらえることになった。
蛇抜けの起きた年度や被害を綴った古文書が残っているという。
入ってみると、20畳ほどの空間には、当時の衣料や道具が展示され、地図と年表が壁に貼られていた。
真ん中には、ガラスケースに入った書籍が数点。でも、字が崩れすぎてて読めない(汗)。
奥の一角にも大型のケースが据えつけられ、中には腐った木片が大事そうに陳列されていた。説明文には【人柱の破片】と…。
そして…そして、その上の壁には、こう書かれていた。
【○○山の中腹には、今もその柱が立っていた穴を見ることができる】
車に戻ると、オオツキ教授は居眠りを決め込んでいた。
すぐさま起こして確かめる。
「さっき、私に聞きましたよね?『見える?』って。あれって、人柱が立っているのが見えるかどうか聞いたんですよね?」
教授は目をこすりながら、
「そんなもの残ってるわけがないでしょう。岩に穴が開いているのが見えるかって聞いたんだよ」
と答えた。
もっと目を凝らしていたら。
あの棒に縛りつけられて上流を凝視している何か、を、私は見てしまったのかもしれない。
不遇の死者の執念に、手を合わせずにはいられない気分になった。
(※⑦⑦⑦さんからの投稿です。ありがとうございました)
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Title : 無題
もうシリーズ化決定ですね
オーガスタス 2017.12.30 (Sat) 23:42 編集
Re:無題
探してみたらいっぱいあったんですwww
2017.12.31 13:51
Title : 無題
プラズマのせいだな!
七篠 2017.12.31 (Sun) 08:48 編集
Re:無題
そうだな!
2017.12.31 13:52