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ー復職ー <沙耶ちゃんシリーズ>
2017.11.18 (Sat) | Category : 創作作品
723:まこと◆T4X5erZs1g:2008/08/10(日)23:45:16ID:Nc5xjCme0
<復職-1>
<霊障>から一週間ほどして、先輩から催促の電話があった。
「顔出せっつっただろうが」
。。。忘れてた。
あんまり登場させたくないので仮名だけつけておく。
H先輩は俺の5つ年上で、上司としてわがまま放題を俺に押しつけた人だった。
その頃、俺は社会の右も左もわからないガキだったから、事なかれ主義でH先輩に嫌々くっついてたんだが、同じ社にいた彼の反抗分子からも目をつけられて、結局退職するに到ったんだよ。
数年ぶりのボロい社屋を訪ねると、在社当時よりももっとメタボに傾いたH先輩が重そうな腰を上げた。
俺は、頭は下げたが、非好意的な表情をしていたと思う。
勧められた椅子を使うまでもなく、俺たちの交渉は決裂する。
H先輩「社に戻れ」
俺 「戻りません」
アクの強すぎる人だから部下がいつかないんだろうな、と、すぐにわかったからさ。
H先輩「働いてんの?」
俺 「いま、職を探してる最中です」
H先輩「じゃあいいじゃねーか」
俺 「よかないですよ。ここ以外で探します」
H先輩「嫌われたもんだなあ。電話までしてきておきながら」
あんたにしたんじゃねーよ、と、心の中で毒づきながら、俺は黙ってた。
実際、ここに連絡を取った本当の目的は、復職への足がかりにしたかったからなんだ。
H先輩が健在と知ったらその気はなくなったけどね。
H先輩「まあなんだ。正社員になるかどうかはともかく、外注としてこの仕事請けない?」
俺が固辞してたもんだから、先輩が折れてきた。
外注って発想はなかったなあ。
俺 「どんな仕事ですか?俺、ブランク長いですよ」
H先輩「だから簡単なやつね。U町って知ってるかな?」
妙に丁寧な説明なのが気味悪かったが、俺は話を聞くことにした。
俺 「知ってます。ぎりぎりで市内に入ってる僻地ですね」
俺の住んでいる市は県内で一番の面積を誇っている。
でも中心の駅のまわり以外は、ほとんどが田園か山林に組していた。
U町なんてのは、ちょっと前まで郡だったところだ。
H先輩「そうそう。突風被害に遭ったとこだ。その被災地が手つかずの状態で残されてるらしいから、ちょちょっと行って写真を撮ってきてくれ」
724:まこと◆T4X5erZs1g:2008/08/10(日)23:46:45ID:Nc5xjCme0
<復職-2>
話を進めにくいのでばらすと、俺の元の職場っていうのはフリーペーパーを扱っている弱小出版社なんだ。
市(近隣含む)の地域情報や広報を掲載して読者をつかんでる。
こういう雑誌って、見たことあると思うけど、スポンサー広告がほとんどだろ?俺のところは大手のクライアントが1つ常駐していて、ペーパーの質を高めるために、プロのライターを派遣していた。それがH先輩。だからこの人は偉そうなんだよorz
先輩の言う突風被害っていうのは、新聞の地方版に載ってたから俺も知ってた。
傘が飛ぶとかテントが倒れるとかってレベルじゃなくて、山林が根こそぎ傾くほどの規模だったらしい。
なんで先輩が行かないんですか?、と聞こうとして、やめた。
荒れて進入も難しい現場に行く気がなくなったんだ、この人は。
「写真を撮ってこられるようなところなんでしょうね?地割れを飛び越えていけって言われても無理ですよ」
依頼者がH先輩なだけに、しつこく確認する。
「ぜーんぜん大丈夫。危ないと思ったらそこで引き返しゃいい。地元情報誌としての面子が保てりゃいいんだ」
なるほど。それらしい写真が2、3枚掲載できればいいわけか。
「給料は?」
これも念押しすると、期待程度の額を提示してきた。おし!
「やります。締めはいつですか?」
と聞くと、しゃあしゃあとして答えるクソH。
「今日の18時校了だ。デジカメで撮って、ネット喫茶から送ってくれ」
はえーよ(汗)。時計を見ると11時半。現場到着まで2時間はかかる。。。。なんとかなるか。
引き受けてから気がついた。
あ。沙耶ちゃんを12時に迎えに行く予定だったんだ。。。
725:まこと◆T4X5erZs1g:2008/08/10(日)23:48:05ID:Nc5xjCme0
<復職-3>
現場は予想以上に惨々たる状態だった。
山というほどの奥地ではなく、村落から10分ほど入ったところの麓の林の中。
どう吹いたのかわからない。嵐は中心部から放射線状に大木をなぎ倒していた。
重い固まりが落ちた跡みたいだ。
思わずミステリーサークルを思い出した。
沙耶ちゃんはいつものように、俺を待たずに先に歩き出した。
そう。家に帰してから仕事に来ようと思っていたのに、目を輝かせてついてきたんだ。
「すごいエネルギーですね」
直径60センチはある木の、折れた幹を見下ろしながら、沙耶ちゃんは呟いた。
「自然っていいなあ」
この光景を目の前にしての言葉とは、違わないか、それ(笑)。
地がめくれ上がって、何十本もの根が露出している場所で1枚撮る。
被害のない場所から被災した上空も1枚。
鬱蒼とした林のその場所だけ、快晴の空が丸見えだった。
数十センチの穴がそこかしこに空いてるし、枝葉は上から降ってくるしで、あまり長居したい場所ではない。
残りの数枚を取ると、沙耶ちゃんの待っている倒木まで戻る。
彼女の上には光が降っていた。
きれいな栗色の髪と、細い肩と、そして紅茶色の瞳が、金色の日光に溶け込んでいた。
思わずシャッターを押すと、気づいた沙耶ちゃんは俺に笑顔を向けた。
「あ。お帰りなさい」
「退屈だったろ?」
と聞くと、
「いいえ。気持ちよく充電できました」
と笑う。
「何か見てたの?」
と、もう一度聞くと、沙耶ちゃんも、もう一度、とても明るい笑顔で
「今は見えません。まことさんといるときは見えなくなりました」
と答えた。
726:まこと◆T4X5erZs1g:2008/08/10(日)23:49:11ID:Nc5xjCme0
<復職-4>
U町にはネット喫茶なんてもんはないんで(というかネット環境が来ているかどうかも怪しい)、すぐに幹線沿いの店に飛び込んだ。メールの設定をし、撮ったばかりの画像をハードに流し込む。
さすが1000万画素。画質のクオリティは高い。
5枚ほど添付して送信した。
「はあ。。。終わったー。。。あの人の仕事はこれだから嫌なんだよ」
と愚痴ると、隣りでパソコンを覗き込んでいた沙耶ちゃんが、急に俺の胸に頭をすり寄せてきた。
驚いた。が。。。。なんとなく自然な気がした。
「余計なものが見えなくなった感想は?」
の答えは
「幸せな気がします」
だった。
沙耶ちゃんは俺に惚れてくれてる。確信した。
彼女はいままで「普通の人間であること」以上に頑張ろうとしていた。
だけど、そんなものは彼女を幸せにはしない。
等身大の女の子の沙耶ちゃんに、俺は、。。。今度は無理矢理ではなく、キスをした。
携帯がメールを受信したんで、こっそりとポケットから取り出して開く。
H先輩からだった。
タイトル『5枚目の写真はなんだ?』
俺は笑いながら沙耶ちゃんに告げた。
「君の写真を送ったんだ。ついでにデートしましたって。たまには先輩を悔しがらせてやらないとww」
メールを開く。H先輩の本性が表れた文章で、こう書かれていた。
「ばかやろう。気味の悪いもん送ってくるんじゃねーよ!」
慌てて送信済みのメールを開くと、5枚目には、折れた大樹の横に、ぼんやりとした金色の人型の光が映っていただけだった。
733:まこと◆T4X5erZs1g:2008/08/11(月)18:28:07ID:SYS6hAXx0
<復職-5>
被災地から戻る途中で沙耶ちゃんをバイト先に下ろし、俺は会社に戻った。
H先輩は
「もう用はない」
と言ったが、さすがに画像を送りっぱなしで無関心にはなれない。
採用した写真とゲラ刷りを見せてもらって、勘を少し取り戻す。
そうそう。この工程が一番好きだったな。
それから不採用の画像を消去してくれと頼んだ。
後で勝手に使われないための予防策だが、俺にそういう知恵がついていたことを、先輩は嘲笑した。
5枚目の画像を処理しようとしたH先輩の手が止まる。
「お前、この前の肝試しの後、ちゃんとお祓いに行ったのか?」
真面目な口調だったので、ついウケた。
「H先輩からそういう非現実的な言葉を聞くとは思いませんでしたよ。行かなきゃまずかったですかね」
「俺には関係ないから返事はできんな。お前が決めりゃいい」
自分から話振っといて、なんだよ。。。
H先輩は削除ボタンを押し、『異変』の痕跡を消し去った。
「また連絡する。俺の番号、着拒にするなよ」
と皮肉る先輩。そういえば、昔はそんなこともしたなあ。
引用元:【霊感持ちの】シリーズ物総合スレ4【友人・知人】
https://hobby11.5ch.net/test/read.cgi/occult/1216318669/723-733
<復職-1>
<霊障>から一週間ほどして、先輩から催促の電話があった。
「顔出せっつっただろうが」
。。。忘れてた。
あんまり登場させたくないので仮名だけつけておく。
H先輩は俺の5つ年上で、上司としてわがまま放題を俺に押しつけた人だった。
その頃、俺は社会の右も左もわからないガキだったから、事なかれ主義でH先輩に嫌々くっついてたんだが、同じ社にいた彼の反抗分子からも目をつけられて、結局退職するに到ったんだよ。
数年ぶりのボロい社屋を訪ねると、在社当時よりももっとメタボに傾いたH先輩が重そうな腰を上げた。
俺は、頭は下げたが、非好意的な表情をしていたと思う。
勧められた椅子を使うまでもなく、俺たちの交渉は決裂する。
H先輩「社に戻れ」
俺 「戻りません」
アクの強すぎる人だから部下がいつかないんだろうな、と、すぐにわかったからさ。
H先輩「働いてんの?」
俺 「いま、職を探してる最中です」
H先輩「じゃあいいじゃねーか」
俺 「よかないですよ。ここ以外で探します」
H先輩「嫌われたもんだなあ。電話までしてきておきながら」
あんたにしたんじゃねーよ、と、心の中で毒づきながら、俺は黙ってた。
実際、ここに連絡を取った本当の目的は、復職への足がかりにしたかったからなんだ。
H先輩が健在と知ったらその気はなくなったけどね。
H先輩「まあなんだ。正社員になるかどうかはともかく、外注としてこの仕事請けない?」
俺が固辞してたもんだから、先輩が折れてきた。
外注って発想はなかったなあ。
俺 「どんな仕事ですか?俺、ブランク長いですよ」
H先輩「だから簡単なやつね。U町って知ってるかな?」
妙に丁寧な説明なのが気味悪かったが、俺は話を聞くことにした。
俺 「知ってます。ぎりぎりで市内に入ってる僻地ですね」
俺の住んでいる市は県内で一番の面積を誇っている。
でも中心の駅のまわり以外は、ほとんどが田園か山林に組していた。
U町なんてのは、ちょっと前まで郡だったところだ。
H先輩「そうそう。突風被害に遭ったとこだ。その被災地が手つかずの状態で残されてるらしいから、ちょちょっと行って写真を撮ってきてくれ」
724:まこと◆T4X5erZs1g:2008/08/10(日)23:46:45ID:Nc5xjCme0
<復職-2>
話を進めにくいのでばらすと、俺の元の職場っていうのはフリーペーパーを扱っている弱小出版社なんだ。
市(近隣含む)の地域情報や広報を掲載して読者をつかんでる。
こういう雑誌って、見たことあると思うけど、スポンサー広告がほとんどだろ?俺のところは大手のクライアントが1つ常駐していて、ペーパーの質を高めるために、プロのライターを派遣していた。それがH先輩。だからこの人は偉そうなんだよorz
先輩の言う突風被害っていうのは、新聞の地方版に載ってたから俺も知ってた。
傘が飛ぶとかテントが倒れるとかってレベルじゃなくて、山林が根こそぎ傾くほどの規模だったらしい。
なんで先輩が行かないんですか?、と聞こうとして、やめた。
荒れて進入も難しい現場に行く気がなくなったんだ、この人は。
「写真を撮ってこられるようなところなんでしょうね?地割れを飛び越えていけって言われても無理ですよ」
依頼者がH先輩なだけに、しつこく確認する。
「ぜーんぜん大丈夫。危ないと思ったらそこで引き返しゃいい。地元情報誌としての面子が保てりゃいいんだ」
なるほど。それらしい写真が2、3枚掲載できればいいわけか。
「給料は?」
これも念押しすると、期待程度の額を提示してきた。おし!
「やります。締めはいつですか?」
と聞くと、しゃあしゃあとして答えるクソH。
「今日の18時校了だ。デジカメで撮って、ネット喫茶から送ってくれ」
はえーよ(汗)。時計を見ると11時半。現場到着まで2時間はかかる。。。。なんとかなるか。
引き受けてから気がついた。
あ。沙耶ちゃんを12時に迎えに行く予定だったんだ。。。
725:まこと◆T4X5erZs1g:2008/08/10(日)23:48:05ID:Nc5xjCme0
<復職-3>
現場は予想以上に惨々たる状態だった。
山というほどの奥地ではなく、村落から10分ほど入ったところの麓の林の中。
どう吹いたのかわからない。嵐は中心部から放射線状に大木をなぎ倒していた。
重い固まりが落ちた跡みたいだ。
思わずミステリーサークルを思い出した。
沙耶ちゃんはいつものように、俺を待たずに先に歩き出した。
そう。家に帰してから仕事に来ようと思っていたのに、目を輝かせてついてきたんだ。
「すごいエネルギーですね」
直径60センチはある木の、折れた幹を見下ろしながら、沙耶ちゃんは呟いた。
「自然っていいなあ」
この光景を目の前にしての言葉とは、違わないか、それ(笑)。
地がめくれ上がって、何十本もの根が露出している場所で1枚撮る。
被害のない場所から被災した上空も1枚。
鬱蒼とした林のその場所だけ、快晴の空が丸見えだった。
数十センチの穴がそこかしこに空いてるし、枝葉は上から降ってくるしで、あまり長居したい場所ではない。
残りの数枚を取ると、沙耶ちゃんの待っている倒木まで戻る。
彼女の上には光が降っていた。
きれいな栗色の髪と、細い肩と、そして紅茶色の瞳が、金色の日光に溶け込んでいた。
思わずシャッターを押すと、気づいた沙耶ちゃんは俺に笑顔を向けた。
「あ。お帰りなさい」
「退屈だったろ?」
と聞くと、
「いいえ。気持ちよく充電できました」
と笑う。
「何か見てたの?」
と、もう一度聞くと、沙耶ちゃんも、もう一度、とても明るい笑顔で
「今は見えません。まことさんといるときは見えなくなりました」
と答えた。
726:まこと◆T4X5erZs1g:2008/08/10(日)23:49:11ID:Nc5xjCme0
<復職-4>
U町にはネット喫茶なんてもんはないんで(というかネット環境が来ているかどうかも怪しい)、すぐに幹線沿いの店に飛び込んだ。メールの設定をし、撮ったばかりの画像をハードに流し込む。
さすが1000万画素。画質のクオリティは高い。
5枚ほど添付して送信した。
「はあ。。。終わったー。。。あの人の仕事はこれだから嫌なんだよ」
と愚痴ると、隣りでパソコンを覗き込んでいた沙耶ちゃんが、急に俺の胸に頭をすり寄せてきた。
驚いた。が。。。。なんとなく自然な気がした。
「余計なものが見えなくなった感想は?」
の答えは
「幸せな気がします」
だった。
沙耶ちゃんは俺に惚れてくれてる。確信した。
彼女はいままで「普通の人間であること」以上に頑張ろうとしていた。
だけど、そんなものは彼女を幸せにはしない。
等身大の女の子の沙耶ちゃんに、俺は、。。。今度は無理矢理ではなく、キスをした。
携帯がメールを受信したんで、こっそりとポケットから取り出して開く。
H先輩からだった。
タイトル『5枚目の写真はなんだ?』
俺は笑いながら沙耶ちゃんに告げた。
「君の写真を送ったんだ。ついでにデートしましたって。たまには先輩を悔しがらせてやらないとww」
メールを開く。H先輩の本性が表れた文章で、こう書かれていた。
「ばかやろう。気味の悪いもん送ってくるんじゃねーよ!」
慌てて送信済みのメールを開くと、5枚目には、折れた大樹の横に、ぼんやりとした金色の人型の光が映っていただけだった。
733:まこと◆T4X5erZs1g:2008/08/11(月)18:28:07ID:SYS6hAXx0
<復職-5>
被災地から戻る途中で沙耶ちゃんをバイト先に下ろし、俺は会社に戻った。
H先輩は
「もう用はない」
と言ったが、さすがに画像を送りっぱなしで無関心にはなれない。
採用した写真とゲラ刷りを見せてもらって、勘を少し取り戻す。
そうそう。この工程が一番好きだったな。
それから不採用の画像を消去してくれと頼んだ。
後で勝手に使われないための予防策だが、俺にそういう知恵がついていたことを、先輩は嘲笑した。
5枚目の画像を処理しようとしたH先輩の手が止まる。
「お前、この前の肝試しの後、ちゃんとお祓いに行ったのか?」
真面目な口調だったので、ついウケた。
「H先輩からそういう非現実的な言葉を聞くとは思いませんでしたよ。行かなきゃまずかったですかね」
「俺には関係ないから返事はできんな。お前が決めりゃいい」
自分から話振っといて、なんだよ。。。
H先輩は削除ボタンを押し、『異変』の痕跡を消し去った。
「また連絡する。俺の番号、着拒にするなよ」
と皮肉る先輩。そういえば、昔はそんなこともしたなあ。
引用元:【霊感持ちの】シリーズ物総合スレ4【友人・知人】
https://hobby11.5ch.net/test/read.cgi/occult/1216318669/723-733
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