動く松雄芭蕉像

江東区にある芭蕉記念館分館の屋上には、ブロンズ製の松尾芭蕉像が鎮座している。2003年12月20日付の東京新聞朝刊によると、この芭蕉像を巡っては実に奇妙な噂が地元で語られているらしい。その噂とは、芭蕉像が夜中になると動くというものである。噂によると、この芭蕉像は昼間と夜とでは座っている向きが変わるらしい。夜中に立ち上がり、座りなおしているのだとも言われているようだ。

　学校の怪談などでは、像が動くという話は非常にポピュラーだ。二宮金次郎像にまつわる噂は特に有名で、夜中になると動くとか、ページをめくる動作をするとか、背負っているまきの数が増えたり減ったりするなどと全国の学校で語られている。この動く芭蕉像の話も、そういったタイプの噂の一つなのであろう…と思いきやそうではなく、この芭蕉像、本当に動くのである。
　先の東京新聞の記事によると、この芭蕉像にはモーターが仕掛けられており、昼間は芭蕉記念館分館の館内に顔を向けているのだが、夜になると隅田川を行きかう屋形船からその姿が見えるように90度回転し、河口を向くようになるのだそうだ。なかなかにこった仕掛けであるが、どうやらそのせいで冒頭に紹介したような噂を生んでしまったようである。