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都市伝説・・・奇憚・・・blog

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隣に新しく人が引っ越してきたんです

2017.11.26 (Sun) Category : 創作作品

430:本当にあった怖い名無し:2017/11/19(日)16:56:09.92ID:zm4E/7O10.net
創作でしかも幽霊の話じゃないんだが投稿していいかな



431:本当にあった怖い名無し:2017/11/19(日)17:26:34.03ID:zm4E/7O10.net
返事がないので投下



432:1/5:2017/11/19(日)17:28:27.95ID:zm4E/7O10.net
新婚2年目の5月のことです。前の年に赤ちゃんができて、生後半年でした。
あの頃は集合住宅に住んでいまして・・・かなり大きな団地でしたが古くて・・・
入居者も歯がかけたようにほつぽつとしか入っておらず、子どもがもう少し大きくなったら新しくて広いところに越そうと、夫と話をしていました。

夫は食品販売の会社に勤めていたんですが、4月から3ヶ月の長期出張で地方支店に行ってました。
週末には帰って来ましたが、平日は赤ちゃんと2人でのんびりと過ごしていたんです。
それでですね、第2週の月曜に、右隣に新しく人が越してきたんです。

事前の連絡なんかはなかったです、自治会があまり機能してなかったんですね。
私が午後に赤ちゃんを乳母車にのせて2時間ばかり買い物に出ている間に、もう引っ越しは済んでしまっていましたから、荷物はあまりなかったんだと思います。

先ほど、のんびりしたと言いましたが、やはり寂しさもありましたので、話し相手になるような人ならいいなと思ってました。
ところがその日も、翌日もご挨拶も何もなかったんです。
こちらから伺うのもなんですし、そういうのが今風なんだと思って黙ってました。

ところがそれだけじゃなくて、通路で会ったとき私から挨拶しようとしたら、ふいと横を向いて部屋に入ってしまったんです。
私より5歳位上でしょうか、ちょうど夫くらいの年齢だと思いました。
きれいな方だと想うんですが、ボサボサの髪に化粧っ気はまったくありませんでした。



433:2/5:2017/11/19(日)17:29:29.32ID:zm4E/7O10.net
失礼な人、と思いましたが、どうやら一人暮らしで、昼夜逆転の生活をしているようでした。
日中は出かける様子がないし、夜ずっと部屋に明かりがついていたんです。
どうしてわかるかというと、物干し場をかねているベランダが、胸までの高さの仕切りはあるもののつながっていて、そこから身をのり出すとサッシ戸がのぞけるんですが、新しいカーテンのすき間から夜中ずっと明かりが見えてたんです。
いえ別に監視していたわけじゃなくて、なんとなく薄気味が悪いなと思ってたんです。

・・・夜の仕事というわけではなさそうでした。
ときおり深夜に出かけることもありましたがすぐ戻ってきて・・・
食料をコンビニ等で買ってたんだと思います。

そのうち土曜日になり、夫が帰ってきたのでお隣の話をしましたが、
「へえ、そう」
と言ったぐらいでほとんど関心がないようでした。
翌週の月曜日、天気がよかったのでベランダに洗濯物を干していましたら、そのお隣のベランダを白い猫がうろついていました。

動物が好きではないので種類はわかりませんでしたが、ごく普通の日本の猫に見えました。
ノラ猫ではないと思いました。この4階のベランダに登ってくることができるとは思えませんし、首に鈴がついてチリチリ鳴ってましたから。それに手術しているのか鳴き声もたてません。
お隣で飼っている猫なんだろうか・・・

団地はペット禁止でしたが、そのときは苦情を言うつもりはなかったんです。



434:3/5:2017/11/19(日)17:30:30.29ID:zm4E/7O10.net
それが・・・数日後風を入れるためにサッシを開けていたら、どうやらその猫が入り込んだようなんです。
寝室のほうに寝かせてある赤ちゃんのベビーベッドの布団にひじょうに臭いシミがついていました。
もちろん赤ちゃんはおむつなので、赤ちゃんのおしっこというわけではありません。
いつも寝室への襖は少し開けていますので、そこからベランダを通ってそこから入り込んだとしか考えられませんでした。

これは苦情を言うしかないと思い、意を決して通路に出、隣の部屋のインターホンを押しました。
しばらく間があって
「・・・何ですか」
と機械のような抑揚の返事が返ってきました。

「あのお宅で飼っている白い猫のことなんですが・・・」
「・・・猫がどうしたって」
「ベランダからうちに入り込んでるみたいなんです」
「それで?」
「困るんです。うちには赤ちゃんもいますし」

ここでまた間があって、
「赤ちゃん」
とインターホンからあざ笑うような声が聞こえました。
「ドア開けられないからそのままベランダに出て。そこで話すから」
ベランダの仕切りごしに話をするということなんだろうか、なにか部屋に入れられない理由でも・・・
それで不承不承ベランダに出ました。



435:4/5:2017/11/19(日)17:31:31.42ID:zm4E/7O10.net
待っているといつまでも出てきませんので、そこから声をかけました。
「あのベランダに出たんだけど」
するとサッシのすぐ後ろから
「今行く。準備してるんだよ」
と声がして、隣の女が両手に頑丈そうな白の布袋をひきずって出てきました。
相変わらずボサボサの髪でジャージの上下でした。
「あんたに迷惑かけたようだから猫を始末するよ・・・どっちの袋に猫入ってると思う」
わけがわからず黙っていると、
「早く選べよ、この2つの袋には猫とお前の赤ちゃんがはいってるんだよ」
「嘘!!そんなことありえない」

「・・・お前が最後に赤ちゃんを見たのはいつだよ?さっきこの仕切りを乗り越えて袋に入れたんだよ」
袋は下に置かれていましたが、よく見るとどちらも布を突っ張るようにして中で動いてるものがあります。
私は思わず赤ちゃんを見に部屋へ戻ろうとしましたが、
「動くな!動くとガキを入れたほうを下に放り投げるよ!」
「早く選びな。3つ数えるうちに選びな、1・2・・・」
私は仕切りにとびついて乗り越えようとしました。
でも足が上がりません。

女は片方の袋を持ってベランダの向こうの仕切りまで後じさりすると、高笑いしながら、両手で袋を外への手すりの下のコンクリの柱に叩きつけ出しました。
「アハハハハハハハ、さあ、死ね、死ね」



436:5/5:2017/11/19(日)17:32:33.60ID:zm4E/7O10.net
袋の中で
「ギッ、ギイイッ」
というくぐもった声がしていました。
女はすぐに疲れて、袋をコンクリの角に立てかけて足で踏み始めました。
「ギッ、ギニャッ」
「アハハハハハハハハ」
白い袋に赤く血が滲んできました。
私は仕切りを越えるのをあきらめ、寝室まで走りました。
赤ちゃんはベビーベッドですやすやと眠っていました。
「お前の赤ちゃんは声帯取ってないだろうが、アハハハハハハハア」
ベランダで女が叫び声を上げていました。
私は迷わず警察に通報しました。

ここからのことは話したくないです。
女は夫の昔の恋人だったみたいです。
あの団地のことを調べて越してきたみたいなんですね。
夫がそのことを知っていたかどうかはわかりません。
裁判のときには知らなかったとは言ってましたが・・・離婚したんです、このことのせいで。

女のほうは動物虐待ですか・・・たいした罪にはなりません。
両親らしき人が警察から引き取って連れて帰ったはずです。
どこかの病院に入院してるんじゃないかと思いますがわかりません。

あと、猫の袋とは別のもう一つのほうには、動く赤ちゃんのリアルな人形が入ってました。



437:本当にあった怖い名無し:2017/11/19(日)17:50:47.17ID:hkR/jbeO0.net
こわ~・・・



438:本当にあった怖い名無し:2017/11/19(日)20:09:10.55ID:wHuCZ5B70.net
ほんのりどころじゃねえわ



439:本当にあった怖い名無し:2017/11/19(日)21:04:32.05ID:BwkcG+EA0.net
いや創作なんでしょ



440:本当にあった怖い名無し:2017/11/19(日)22:20:23.72ID:QxXxNmc/0.net
最初稲川Jさんの語り口調で読んだよ
ベビーカーと称さないのは時代背景が古めなんかなぁ
マーキング困るよね



441:本当にあった怖い名無し:2017/11/19(日)22:36:53.59ID:EyjkVSEkO.net
創作宣言がなけりゃ、良作だったな



446:本当にあった怖い名無し:2017/11/20(月)06:08:21.48ID:lSrmcHyAO.net
創作だろうと思って読んでるくせに創作宣言されるとなんとなく萎えるのが不思議



447:本当にあった怖い名無し:2017/11/20(月)08:07:16.13ID:/f6eiWO60.net
こういう日常の中にある異常者の話もいいもんですな。オカルトじゃないけど。


引用元:ほんのりと怖い話スレ 126
http://toro.2ch.sc/test/read.cgi/occult/1507703100/430-447




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ー親父の死ー <沙耶ちゃんシリーズ>

2017.11.25 (Sat) Category : 創作作品

46:まこと◆T4X5erZs1g:2008/08/23(土)22:45:42ID:5DwZQ5v70
<親父の死-1>
2時間ほど仮眠を取って、夜中のバイトの支度をしているところに電話が入った。
親父の面倒を看てもらっている叔母(母さんの妹)からだ。
「まことくん、お父さんの容態が急変したの。もう飛行機もないでしょうけど、できるだけ急いで来てあげて」

俺はすぐに自家用車で空港まで向かった。
バイト先には途中で連絡を入れた。
まだ店にいた店長は快諾してくれた。
H先輩には朝一の飛行機の時間を調べてもらった。
最近思うんだが、俺はなぜこの人をあんなに毛嫌いしていたんだろう。

空港に着いたが、最終便の出た後の国内線ロビーは、当然のように閑散としている。
駐車場に置いてきた車まで戻り、早朝までの充分な時間を睡眠に費やした。
なぜだろう。気は焦るが、親が死ぬという絶望感はない。
きっと『親孝行ができた』と実感しているからだ。
余命宣告よりずっと長生きをしてくれた親父に感謝。。。

0時を回って15分ほどした頃、沙耶ちゃんの携帯の番号を押した。
「今日は送っていけなくてごめん。昨日はありがとう」
と言うつもりだった。
でも彼女は出なかった。数回のコール音の後、
「ただいま電話に出ることができません」
とアナウンスが流れ、通話が切れた。
ああ、まだ仕事中だったかな。



47:まこと◆T4X5erZs1g:2008/08/23(土)22:46:56ID:5DwZQ5v70
<親父の死-2>
夜明けの陽の光で目が覚めた。
出発までは時間があったが、空港内に行って、メシと洗面を済ませた。
大丈夫。まだ親父は死んでいない。確信があった。
叔母からの連絡もなかったし、夢枕にも立たなかったしww
そういえば、例の悪夢みたいな幻覚も見なかったな。
このときばかりは白骨に感謝したよ。

飛行機に乗り込んで海を渡った。
そこからバスで1時間。
郷里の総合病院で無事に生きてる親父と面会したよ。
父さんは、自力呼吸もできないのに、酸素マスクを外して
「俺はお前に孝行してやった」
というようなことを言った。
そして死んだ。

わけがわからず湯灌の間に叔母に聞くと、そんなことにこだわってたのか、と笑いがこみあげるほど親父らしい考えを聞かされた。

「お父さんは、まことくんがお父さんより先に死んでしまうんじゃないかと、ずっと心配してたのよ。あなたが家を飛び出して音信不通になったときも、ずっと連絡が途切れていたときも」

「だから、お父さんが先に死んであげることがまことくんへの孝行になったの。そうしたら、まことくんは賽の河原で石を積まなくても済むでしょう」

賽の河原っていうのは、一般化してはいるが仏教思想の一つだな。
親より先に死んだ子どもは、三途の川を渡れずに(転生の手続きができずに)、親が迎えに来るまで延々と石を積まなくてはならないっていう、あれ。
親父が先に死んだから、俺はもういつ死んでもいいわけだ。

「なんで俺が死ぬなんて思ってたんだよ、あの人は?」
笑いながら叔母に聞くと、叔母は、至って真面目な口調で言った。
「姉さん(俺の母親)が、そこまであんたたちの一家を追い込んだからよ」
そして謝られた。
「あんなのが身内で、ごめんね」
俺がその謝罪を受け入れるわけはない。
愚考に走った母さんが悪いのは確かだし、おそらく、知らず知らずのうちにその原因を作った俺と親父が悪いのも納得できる。でも叔母は関係がないからね。



48:まこと◆T4X5erZs1g:2008/08/23(土)22:47:47ID:5DwZQ5v70
<親父の死-3>
親父が歓迎されない病死(アルコール中毒を経ての肝臓癌だったんだ)だったということと、喪主の俺が遠方から来ているということで、葬儀は内内で済ませることになった。
その夜、親戚だけの簡単な通夜をしていると、玄関が開いた。
読経の最中だったので目だけ上げると、母さんと姉さんがバツが悪そうに立っていた。

末席の叔母が2人を中に誘っている。(ああ、声をかけておいてくれたのか) 少し苦々しく思いながらも、久しぶりの顔が元気そうなのに安心した。

式が終わり、親類連中は帰った。
叔母は俺と仏さんの番をすると言い張っていたが、1人のほうが気楽なので帰した。
母と姉は町に宿を取っているという。
ビールを開け、親父の棺の横で、どうでもいいことに頭を巡らせた。

叔母の話によると、母さんは親父と結婚する前に付き合っていた相手がいたらしい。
結婚してからも感情的には切れていなかったんだろう。
気持ちの冷めている親父の世話をし、親父の子どもである俺を育てているうちに、現実から逃げ出したくなったのかな。
今では、その男と充実した生活を送っているはずだ。。。

ふと、沙耶ちゃんの言葉を思い出した。
『強力な守護霊に守られている人間は、努力しなくても、人生が好転するの』
羨ましい限りだね、まったく。

イライラしてきた。沙耶ちゃんの声が聞きたい。
携帯の番号を押すと、電源が入っていないとアナウンスされた。そっか。バイト中だったな。。。



49:まこと◆T4X5erZs1g:2008/08/23(土)22:48:50ID:5DwZQ5v70
<親父の死-4>
神経が昂ぶっていたが、それでもウツラウツラと眠れそうになってきた頃、玄関の戸が開いた。
挨拶のない訪問者を不審に思いながら出ると、母さんと姉さんと。。。泥だらけの子どもが立っていた。。。
「もうみんな帰った?ちょっと話があるんだけど」

母さんは、通夜の恥じ入った態度とは正反対のふてぶてしい表情で、親父の安置された部屋に上がりこんでいく。
姉さんは俺と顔も合わせずに母さんの後ろについている。
坊主は、俺の隣りで止まって、そこだけ泥がはげた薄い唇を動かした。
「次は頭」
全身が緊張したよ。
そっか。。。そういうお膳立てなわけか。。。

冷静さを欠いちゃまずい。
深呼吸を繰り返しながら自分に言い聞かせた。
母さんは、親父の死に顔に興味も見せずに切り出した。
「この家とお父ちゃんの預金のこと、あんた、聞いてる?」
知るか。首を振る。

「妹(叔母)の話だと、お父ちゃん、全部あんたに遺すって遺言書いちゃってるらしいんだわ。でもね、あたしはともかく、同じ子どもなのに、お姉ちゃんに何ももらえないっていうのは、不公平すぎるからね」
と母。
。。。てか、ここまで強欲だと母親扱いするのも抵抗があるわorz

「俺は遺言のことなんか知らないし、どうしようもないんだから、そんな話、持ってくんな」
吐き捨てると、姉ちゃんが初めて口を開いた。
「相続を放棄してくれればいいのよ。そうしたら、母ちゃんに半分、私たちには4分の1ずつ配分されて、みんな公平になるじゃない」

母親は
「お姉ちゃんにだけは遺産を渡して」
と繰り返す。姉は執拗に母親の権利を出張する。
なんかほんと。。。面倒。。。
「じゃあさ」
俺は、自分の言葉に自覚のないまま、言った。
「俺と姉さんがいなくなったらいいんじゃねーの?」



50:まこと◆T4X5erZs1g:2008/08/23(土)22:49:32ID:5DwZQ5v70
<親父の死-5>
人間の首って、こんなに激しく脈打ってるもんなんだな。
姉さんの顔が紫に染まっていくのを見ながら、俺はさらに両手の力を込めた。
母さんは腰が抜けたみたいで、大声を上げることもせずに、親父の棺桶を狂ったように叩いている。

なんだか予想どおりすぎて、拍子抜けだよ。
どうせ夢なんだろ、これ。
もう少し俺に不利な状況にしてもいいんじゃねーの?
なあ、坊主。

姉さんが泡を吹き始めた。そろそろ死ぬかな。
馬乗りになった俺が浮き上がるほどの抵抗をしてた体も、もうほとんど動かないし。
瞳孔が開いた。あー。。。なんつーか。。。気分は悪くないんだけど心残りがあるって感じだ。。。
沙耶ちゃんに連絡がついてたらなあ。。。俺、こんなことしなかったのに。。。

そう思った瞬間、こわばってた手から力が抜けた。姉さんの喉に酸素が流れる感触が現れた。
まだ生きてる!よかった!
母さんに向かって叫んだ。
「誰かを呼んできてくれ!早く!!」
でも、母さんは動かない。
畜生!自分の娘の緊急事態だろーが!

自力で姉から離れようとしたんだが駄目だ。脳が俺の意思を無視する。
また徐々に力が入ってきた。腕が攣るほど抵抗してるんだけど『負けてる』。
いっそ、手が動かなくなれば。。。見回すと、祭壇のでかい燭台が目に入った。ロウソクを抜けば使える!
俺は自分の肩に思いっきり噛みついた。痛みで我に返って、一瞬、体が自由になった。
祭壇に飛びつき、火のついているロウソクをねじ取って、鋭い針をむき出しにする。
そして、親父の棺桶の上に置いた自分の左手に、思いっきり突きたてた。



51:まこと◆T4X5erZs1g:2008/08/23(土)22:50:39ID:5DwZQ5v70
<親父の死-6>
母親の喚き声で集まった近所の親族が、救急車を呼んでくれた。
意識の朦朧としている姉を尻目に、運ばれたのは俺のほうだったww
燭台が大きかったので、針は俺の掌を貫通して骨を砕いてた。
親指と人差し指は普通に動いたが、後の3本は再起不能かもしれない。
ま、どうでもいいや。。。

治療を終えて病室で横たわっているときに、夢を見たよ。
俺は、体と右腕の再生した女の肉体を背負って、あのトンネルの脇に立っていた。
女は下に続く急勾配を指差している。
指示に従いながら、ゆっくりと下りてやった。
何かを探しているみたいだ。

女の指がさまよい始めた。場所が特定できないのか。
「ううん。見たくないの」
意外に若い声で、女は答えた。

すると、10mぐらい前方の薮が動いて、中から薄汚れた沙耶ちゃんが現れた。
「何やってんの、そんなとこで?」
と笑いながら聞くと、沙耶ちゃんも笑いながら、
「先に来て探してたんですよお」
と返す。
そして、俺の背中に向かって、足元を指差しながら、言った。
「ここでずっと待ってたんだよ」

沙耶ちゃんの足元には幼児が眠っていた。
女を背中から下ろしてやると、右手で幼児の頭を撫で始める。
「子どもと一緒に殺されちゃったんだよね。可哀相だったね」
沙耶ちゃんも傍らにしゃがみこんで、同じように幼児を撫でる。

いつのまにか坊主が来ていて、母親の首に頭を取りつけた。あれ?姉さんは生きてるはずだが?
母親は穏やかな表情で、子どもに頬ずりをした。
俺は坊主に言った。
「右腕だけじゃ子どもが抱けないから、俺の左腕をやれないかな?」
坊主は黙って母親を指差した。
母親は両腕で子どもを抱いていた。
そこで夢から覚めた。

医者が来て、俺の手は神経が寸断されてしまったので元どおりには動かないだろうと説明した。
大きな病院でなら神経の縫合をしてもらうことができるかもしれない、とも慰められたが、俺は断った。
俺が持ってるより、あの母親にやったほうが、何倍も役に立つ腕だったからね。



52:まこと◆T4X5erZs1g:2008/08/23(土)22:51:43ID:5DwZQ5v70
<親父の死-7>
包帯だらけの手だったからか、翌日の葬儀には野暮なツッコミは入らなかったww
親戚の何人かが
「あの馬鹿どもは昨日のうちに追い出してやった」
と報告してくれた。
田舎の団結力は頼もしいなw

火葬場に移り、骨上げ(骨が焼けること)を待っているときに、焼き場の職員から呼び出された。
「とても申し上げにくいんですが。。。お父さんの頭のお骨が見当たらないんです。どうしましょうか?」
そっか。親父が姉さんの代わりに首を提供してくれたのか。。。
親族には黙っておいてくれと頼んだ。
どうせ、酒びたりだった親父の骨はまともな原型を留めていなかったし。

すべての儀式を終えた後、俺は空港の待合室で久しぶりに携帯を取り出した。
驚いたよ。40件近い着信が入ってる。
そのうちの30件以上を占めていた梶に電話をすると、ヤツは深刻そうに切り出した。
「沙耶ちゃんってまことさんとそっちに行ってる?バイト、ずっと無断欠勤してるんだけど」

すぐに梶を切って、沙耶ちゃんにかけ直す。。。。電源が入ってない。
最後に会ったのは、踏切事故の翌日の朝だ。もう6日も経つ。その間、電話は一度も通じなかった。
『先に来て探してたんですよ』
夢の中では、沙耶ちゃんはトンネルにいた。
事故?嫌な想像が頭をかすめた。



引用元:【霊感持ちの】シリーズ物総合スレ5【友人・知人】
https://anchorage.5ch.net/test/read.cgi/occult/1219147569/46-52











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ー整理ー <沙耶ちゃんシリーズ>

2017.11.24 (Fri) Category : 創作作品

4:まこと◆T4X5erZs1g:2008/08/19(火)22:32:32ID:fkpUHwKQ0
<整理-1>
翌日、出版社に顔を出し、H先輩に経緯を説明した。
先輩は
「寺じゃなくて病院を紹介したほうがよかったか」
と呆れた。

俺はノイローゼなんかじゃないんだがww
「霊なんてものを信じるヤツは、みんなおかしい」
と断言するクソH。
実証してやるとばかりに、俺の体験を合理性で解読し始めた。

H「まず、いいか?カリノを見たなんてのはその典型だ。お前は俺から事前に情報を得ていたんだから、具体的にカリノの焼死現場を妄想することは難しくなかったろ?その証拠に、与えなかった情報については何も見てこなかったじゃないか」
俺「見えはしなかったけど、カリノが入れあげてた女性の存在はなんとなく感じましたよ」
H「そのオンナは生きてるか死んでるかもわからないんだぜ。もし生きてたら?お前の霊感とやらがいかに似非か証明されることになるぞw」

相変わらず気に触る言い方で、カリノの件は一蹴されてしまった。



5:まこと◆T4X5erZs1g:2008/08/19(火)22:33:36ID:fkpUHwKQ0
<整理-2>
俺「それじゃあ白骨のヤツは?俺は、あのトンネルでバラバラ遺体が発見されてたことも知らないうちに、巡査や由香さんのパーツを集め始めたんですが」
H「フラストレーションを発散させるのに、その手の妄想に浸るヤツは珍しくない。お前は一見暴力とは無縁そうだが、内在してる嗜好まではわからんさ」
うーん。。。反論できないな。。。

H「特に馬鹿女のほうは昔の恨みでも引きずってたんだろ。コンビニの店員仲間と話題にしたことによって、リアルに悪感情を思い出したんじゃないのか?」
俺「そこまで激烈な恨みなんか持っていませんよ。ただ、生理的に受け付けなくなっているだけです」
母親と姉を軽蔑している俺は、男に対して誠実にふるまえない由香さんに対しても、同じような感情を抱いてしまうんだ。
H「ま、あの馬鹿女は殺したって死なないから、せいぜいズリネタにでもしてやれ」
歯をむき出して笑うクソHを、俺はまた怒鳴りつけそうになった。



6:まこと◆T4X5erZs1g:2008/08/19(火)22:34:47ID:fkpUHwKQ0
<整理-3>
H「案外、巡査っていうのにも心当たりがあったりしないか?」
H先輩の突っ込みに、俺は苦笑いしながら頭を掻いた。
俺「実は。。。と言っても、ガキのころのたわいのない話なんですが」

中学生のとき、俺はどちらかといえば悪ガキだった。
学校の備品盗んだり、連れを用水に突き落としたり。
田舎のノリの範疇だったけど、大人からは煙たがられてた。

ある日、学校からの帰り道に警官の巡回に出くわした。
特に悪さはしていなかったと思うが、その巡査は俺のこと知ってたんだろうね。
「あんまりふざけたことしたら撃ち殺すぞ」
って言って、本当に拳銃を構えてきたんだ。
まあ、いま思うと、これもある種のノリだったな。
思いっきり逃げたww いい薬になったよ。

H「お前が腕を引き抜いたのは、その巡査だったのか?」

俺「もっとガタイのいい人だった気がしますが、俺自身が中学から成長してますから。まあ、あんな感じだったかも」

結局、これも説明がついちまったようだ。



7:まこと◆T4X5erZs1g:2008/08/19(火)22:36:06ID:fkpUHwKQ0
<整理-4>
「じゃあ最後に昨日の件だが」
H先輩は自分のPCのメールボックスを開きながら言った。

「お、来てる来てる。ちょうど俺んとこの顧客だったらしくってな。不審死なんで、担当者が事情を詰めてたとこだったんだ」

着信したメールには『原田園恵の死亡原因について』とタイトルが入っていた。

先輩がクライアントからの出向だっていうのは前述したが、そのクライアントは生命保険会社なんだ。
大手の生保は自社で調査部署を持ってて、不自然な請求があると徹底して調べることになってるらしい。
原田園恵は数年前に先輩の会社の終身保険に加入していた。
特異な死に方ではあったが、メールには『いたって自然な理由による自殺』と書かれていた。

俺「自然な理由ってなんすか?腹に子どももいたっていうのに」
H「マタニティブルーって知ってるか?俺の嫁もひどかったが、妊娠中はホルモンのバランスが崩れてウツになることがあるんだぜ」
俺「先輩の奥さんがウツになったのは、妊娠のせいじゃなくて。。。」
言い終わらないうちにスリッパが飛んできた。
H「原田園恵にはその兆候が強かった。自殺してもおかしくないほどな。だから『自然な自殺』と報告が来たんだろうよ」



8:まこと◆T4X5erZs1g:2008/08/19(火)22:36:47ID:fkpUHwKQ0
<整理-5>
。。。見事にこじつけられた。数年前の俺だったら、H先輩の言葉を信じただろうな。
でも違うんだよ。うまく説明できないけど、俺は妄想に浸ってるわけじゃないんだ。
だって、今までの霊現象のほとんどは沙耶ちゃんも一緒に体験してるんだから。

沙耶ちゃんは信じる。H先輩はあの世界を知らないだけだと思えちまう。
俺は反論をやめて
「あんまり気にしないようにしますわ」
と先輩をあしらった。



9:まこと◆T4X5erZs1g:2008/08/19(火)22:37:50ID:fkpUHwKQ0
<整理-6>
仕事が終わってバイトまで時間があったので、不眠覚悟で沙耶ちゃんのアパートを訪ねた。
実は、昨日、あの駅から帰ってきて居座った先は彼女のアパートだったんだ。
意識のハッキリしなかった俺に、一晩中沙耶ちゃんが話しかけてくれたおかげで、こうやって日常に戻ってこれたってわけ。

あの子はもうすぐバイトに出るはずだ。顔だけ見て自宅に帰ろう。
そう思ってインターホンを鳴らす。
。。。出ない。留守か。それとももうコンビニに行っちまったか。
まあ、いいや。どうせ後で会えるんだ。急ぐこともない。

水戸黄門がなぜ1話完結にしてあるか知ってるか?
視聴者に年寄りが多くて次週まで健在でいる保証がないから、って理由らしい。
俺はいま連続投稿という形で話をぶつ切りにしている。
時間の制約があるから仕方がないんだが、でも、実はすごく心苦しい。
明日は保証されないからね。

『後で会える』なんて、なぜこのとき思ったんだろう。
店まで10分の距離を歩いて沙耶ちゃんの姿を確認することを、なぜ惜しんでしまったんだろうか。



引用元:【霊感持ちの】シリーズ物総合スレ5【友人・知人】
https://anchorage.5ch.net/test/read.cgi/occult/1219147569/4-9













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そして輝く

2017.11.24 (Fri) Category : 創作作品

691:⑦⑦⑦:2017/11/20(Mon)11:07:24
中学入ってすぐの頃、クラスのリーダー格に声をかけられた。
「お前はもっと輝く必要があるよな。なあ輝けよお前」
なんだかよく分からないが特に反対する理由もないので
「そうだね」
と答えた。
リーダー格の男は
「よし!」
とばかりの笑みを浮かべクラスの輪の中に消えていった。

その日からそいつの友達が
「輝け!」
「シャイニングだ!」
「シャイン!」
だの声をかけてくるようになった。

やがてその奇妙な習慣はクラス中に広がり俺はクラスの皆に輝け輝け言われるようになった。
それまで引っ込み思案で友人も少なかった俺は照れくさくも嬉しかった。

ついに学級会で
「○○君は輝いたほうがいいと思います」
というネタ半分議案が出され、そして全員賛成で可決されるにまでなった。
担任は
「まあ、お前がいいんならいいんじゃないの」
と、はにかんだように笑っていた。

この先生は孤立気味だった俺のことをずっと気にかけてくれていたんだ。
そしてクラスの皆がそれに答えた。
なんてやさしいクラスだろう。
なんていいクラスだろう。

俺の持ち物にはシャーペンの一本にまで皆が「輝け」と書いてくれた。
書道で書いた書初めには、クラスで一番可愛い女子が家からわざわざ筆ペンを持ってきて、俺の名前の上にハートマークとともに「シャイニング!」と書いてくれた。

その習慣は三年間で学年中に広がり、三年の頃には見知らぬ下級生までもが
「あ、輝いてる人だ」
などと指差してくるようになった。

そして青春の日々はあっという間に終わり、俺は卒業式の今日、家に帰って卒業アルバムを見ている。
懐かしく思い出す青春の日々、輝いていた思い出。
かけがえのない仲間たちによる寄せ書きコーナー。
そこには三年間付き合った、いつもの文字が、一人ひとりの筆跡が並んでいる。

「Shine! Shine!
Shine! Shine!
Shine! Shine!
Shine! Shine!
Shine! Shine!
Shine! Shine!
Shine! Shine!」


(※⑦⑦⑦さんからの投稿です。ありがとうございました)




.







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ー除霊ー <沙耶ちゃんシリーズ>

2017.11.22 (Wed) Category : 創作作品

870:まこと◆T4X5erZs1g:2008/08/19(火)00:36:17ID:fkpUHwKQ0
<除霊-1>
翌週は何事もなく過ぎた。
俺としてはH先輩あたりの首をもぎ取ってやろうかと思ってたんだがww
悪夢の欠片も見なかった。

仕事の合間に白骨遺体のことを話すと、先輩は
「気持ちわりーな。寺行って来い、寺!」
と、その筋で有名な大阪の寺まで調べてきた。
江戸時代から慰霊で名を馳せている由緒のあるところだそうだ。
日曜日には休みをくれるというので、遊興も兼ねて行ってみることにする。

沙耶ちゃんに
「一緒に行かない?」
と電話をすると、
「。。。お寺ですか。。。あんまり勧めませんけど。。。」
と歯切れの悪い答えが返ってきた。理由を聞く。

「除霊って好きじゃないんです。一方的に霊を追い出してしまうことなので。できれば、話し合って浄化してもらいたいんですけど。。。」

なるほど。沙耶ちゃんらしい考え方だよ。
正直、俺は儀式でこの厄介な現象がなくなってくれるとは思わない。
ただ『祓ったから霊に勝てる』と自信をつけたいだけなんだ。

そう説明すると、沙耶ちゃんは、やっぱり乗り気ではないようだったが、
「まことさん1人で行かせるのも心配なので」
と承知してくれた。



871:まこと◆T4X5erZs1g:2008/08/19(火)00:37:02ID:fkpUHwKQ0
<除霊-2>
鉄道を使うつもりだったので、ローカルな駅に車を置いて、新幹線の乗車駅行きの急行に乗った。
ふだん乗りつけないから切符の買い方がわからなくなってたよorz

沙耶ちゃんも珍しい車窓の景色に目を輝かせていた。
「子どもの頃以来かも」
だって。今だって子どもみたいなもんだw

市を2つまたぎ、そろそろ都市圏に入ろうというところで、列車は小さな踏切を渡った。
遮断機の向こうで待つ通行人と車の列。
見知った顔があった。
「あれ、見覚えない?」
と沙耶ちゃんに振ると、彼女は首をかしげた。
あ、そっか。沙耶ちゃんは1度しか会ったことがなかったな。

3年前の春から夏にかけて、毎晩コンビニに来ていたキャバクラ嬢ふうの客だ。
今の格好は普通の主婦っぽかったが、激しく脱色した髪が名残をとどめている。
そっか。見なくなったと思ったら、こっちに移って来たんだな。

踏み切りが後ろに流れて見えなくなったタイミングで、前方に小さな駅が見えてきた。
この列車は停まらないはずだ。
駅に停車していた鈍行電車が動き始め、俺たちの横を対向して過ぎて行く。
いかにも地元という感じの利用者で賑わっていた。

平和な風景としか言いようがない。
大阪まで何しに行くんだか忘れそうになったよ。

でも、俺たちの列車は予定のない駅に緊急停車してしまった。



872:まこと◆T4X5erZs1g:2008/08/19(火)00:37:50ID:fkpUHwKQ0
<除霊-3>
駅のけたたましいブザー音が密閉された車内にまで飛び込んだ。
ドアが開かないので、乗客の数人が不安げに立ち上がって様子を窺っている。
駅員がホームを右往左往しているのが見えた。
怒鳴っている声までは聞こえない。

5分ほどしてから、この列車の車掌と思われる制服組が車両を回ってきた。
「ただいま踏切内で人身事故が発生しました。ダイヤ調整のため、しばらく臨時停車いたします」
近くにいた50代ぐらいのおっさんが、車掌に噛みつく。
「なんで通り過ぎた踏切の事故で、この電車まで動かなくなるんだ?!」
その横の、妻らしい厚化粧のばあさんも、したり顔で付け足す。
「事故なら前もあったけど、関係ない電車まで止めることはなかったわよ!早く出してよ!」

車掌は動じた様子もなく
「しばらくお待ちください」
と言い残して、他の車両に移っていった。

俺のせいなんだろうか?根拠のない罪悪感が頭をもたげる。
俺のせいで列車が『止められた』んだろうか?
俺のせいで『列車を止めるための事故』が起きたんだろうか?



873:まこと◆T4X5erZs1g:2008/08/19(火)00:38:29ID:fkpUHwKQ0
<除霊-4>
再出発が難しいというので、俺たちはバスに乗り換えることになった。
俺は。。。行かなかったよ。
バスまで止まると気の毒だからね。

駅のロータリー沿いに表通りに出ると、踏切の方向に向かった。
沙耶ちゃんが小走りでついてきて、俺の腕を取る。
「どこに行くんですか?」
どこって。。。どこに行こうとしてんだよ、俺?

「確かめないとね」
とだけ言った。
誰が轢かれたのか。死んだのか、助かったのか。

踏み切りのそばでは警察がバリケードを張っていた。
現場はかなり遠いな。
轢いたと思われる鈍行電車の側面だけしか見えない。
野次馬の中から下着姿の爺さんをつかまえて聞いてみた。
「どういう人が事故に遭ったんですか?」

爺さんはひどく同情した面持ちで答えた。
「妊婦さんが電車に飛び込んだらしいよ。まだ若いのにねえ」

沙耶ちゃんが小さく悲鳴を上げたので爺さんから視線を移すと、2人の鑑識がビニールシートを警察車両に乗せているところだった。
「茶色の髪が見えた。。。」
沙耶ちゃんの呟く声が震えていた。



874:まこと◆T4X5erZs1g:2008/08/19(火)00:39:29ID:fkpUHwKQ0
<除霊-5>
駅のベンチに腰かけながら、なぜか俺が沙耶ちゃんを落ち着かせる羽目になった。
「ああいう死に方した人、初めて見たから、ちょっと動揺しちゃって。。。ごめんなさい」
って言うけど、もっと壮絶なのに何回も会ってるじゃないか。。。w

「同じ死人でも、やっぱり霊と死体とは違うの?」
と質問すると
「私は不成仏な霊にはならないけど、死体にはなるから。。。。自分がああいう姿になるのが怖い」
と答えてきた。
そうだね。そのとおりだ。肉体に傷がついて再生不可能になるってのは、こんなにも怖いことなんだ。

でも、その最悪な終末をキャバ嬢に取らせたのは、俺じゃないのか?
「俺がここを通らなければ、あいつ、死ななかったのかな。。。」
思わず口についた言葉。
「俺、すごく迷惑なヤツだ。。。」
「まことさんがどう関係するの?」
沙耶ちゃんは本気で不思議そうに言う。

「だからさ、除霊なんかに行こうとするから、こういう形で足止めされたってことだよ」
確信的に説明すると、沙耶ちゃんは珍しく理解力を示さなかった。
「全然つながりがわかりません」

慰めてんのかな?。。。慰めてるんだよな?。。。ここでわかってもらわないと、俺、泣きつくこともできないんだけど。。。orz



875:まこと◆T4X5erZs1g:2008/08/19(火)00:39:53ID:fkpUHwKQ0
<除霊-6>
「あのね、よく考えて」
沙耶ちゃんが一言一言に力を込める。
「もしまことさんをお寺に行かせたくないだけなら、車を動かないようにすればいいじゃないですか。霊って電気系統を壊すのは得意なんですよ」

へえ。そうなんだ。。。オカルトで照明がいきなり切れたり、電源の抜けているラジオがついたりっていう話を思い出した。
「なのに、わざわざまことさんの知ってる人を家から連れ出して自殺させるなんて、そんなエネルギーの要ることすると思います?」
俺は首を横に振るしかない。

「だから、あの人が踏み切りに飛び込んだのはあの人の意思です。まことさんには関係ありません。気にしちゃダメです」



876:まこと◆T4X5erZs1g:2008/08/19(火)00:41:30ID:fkpUHwKQ0
<除霊-7>
。。。。。。。。。
そっか。
俺はたまたま事故に巻き込まれただけなのか。
『お箸要らないです』
と屈託のない笑顔で断ってたあの人が、妊娠中なんて幸せの絶頂期に自殺したのは、あの人自身の運命であって、俺には何の関係もないのか。

「無理」
俺はまた首を振った。
「そんなふうには思えない」
沙耶ちゃんは、とっても困った顔をした。
「弱気になると憑りつかれちゃいますよお」
いっそ。
「そのほうが楽かもしれない」
沙耶ちゃんはうな垂れた。
「私はイヤです。。。」

憑りつかれるっていうのはどういうことなのかわからないが、きっと、俺が俺でなくなるってことなんだろうな、と思う。
俺は沙耶ちゃんの柔らかい猫っ毛を撫で回した。こういう愛情もわからなくなっちまうのかな。

もしこの後、何も起きずに事故処理がなされ、無事に自宅まで帰りつけたら、俺は沙耶ちゃんの『偶発説』を信じられたかもしれない。
でも、残念ながら、俺のほうが正しかったみたいだ。
踏み切りのほうから泥色の小学生が歩いてくるのが、はっきりと見える。



877:まこと◆T4X5erZs1g:2008/08/19(火)00:42:03ID:fkpUHwKQ0
<除霊-8>
坊主は何かを抱いていた。首か、足か、残りの腕か。
こんなガラクタ集めて、自分を再生して、成仏できると思ってる霊がいるのが笑えるね。
坊主は俺の膝の上に『それ』を置いた。
血まみれの生首のほうがまだマシだった。
胎児だったんだ。
臍の緒が長く長く伸びていて、線路上をさまよっている母親とつながっていた。

俺さ。由香さんをあんな目に遭わせておいて言うのもなんだけど、子どもの死体はダメなんだよ。

沙耶ちゃんはすでに俺の視界にはいない。
見えるのは、血の海になった事故現場と、坊主と、不完全な形の胎児だけ。
「次は右腕と上半身と下半身以外だね」
俺がやつらの世界に近づいたぶんだけ、坊主の声がクリアに聞こえた。

「本物を提供するよ」
俺は、ためらいなく人間をバラせる環境が整ったことに、悦びを隠せなかった。


引用元:【霊感持ちの】シリーズ物総合スレ4【友人・知人】
https://hobby11.5ch.net/test/read.cgi/occult/1216318669/870-877













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